制作ニュース

舞台芸術制作者オープンネットワーク 座談会(前半分)

13.02/02

誰にも正解の見えない中で、合意形成を行っていくための方法として

川口:今、実はオープン・ネットワークの立ち上げを進めている中でも、難しいなと思うのが、横の繋がりをより広く取っていくためにオープンであることと、それから、次の世代、つまり僕たちの時代じゃなくなっても、同じようにこの会が成立して、その時その時のイシューに対して、多くの人たちが関心を寄せて話し合える、あるいはネットワークとして繋がって、いろんな活動が生まれる、みたいな、時間軸的な継続性のようなものを考えていかないといけない。
と同時に、それを行っていくためには、今現在の問題に対して、ある種の解決策であったりとか、そこにリーチ出来る、みたいなものも示さなきゃいけない。この辺が常に、組織を作ったり規約を作ったりする中で非常に引き裂かれるというか、難しいところだなと感じるんですが、これは、従来の「アソシエーション」や「コンソーシアム」で良かった時代と、なんか今違う状況もあるんですかね?

丸岡:あるよね。現状、国境などの制度としてのボーダーはもう超えているのに、とか。あと、時代の緊急性っていうのがやっぱりずっと高まっていると思う。例えばバブルの時とかはプロデューサーだったら生き馬の目を抜く世界と言われていたけど、つまり、共闘するっていうよりは、どっちが早いかとか、勝ち負けで、しかし、それでやれていたくらいお金もあったんでしょうね。でも、今はそうじゃないしね。それから、やっぱり、助成金が制度上で増えて、アーツプラン以降はぐっと増えて、なのに、審査や評価の整備が遅れてるとかいろいろあって。公共劇場が舞台芸術の、少なくとも数的には中心的な提供の場にどんどんなり、舞台芸術に関わっている人たちの仕事っていうのは、金銭的にも公共の仕事として行なうものが増えて行くとなどが、以前と違うんじゃないですか。

川口:うーん。で、その中で、この「舞台芸術制作者オープンネットワーク」は、キックオフ・ミーティングも経て、ある程度、組織の概要だとか、形になってきているんですけど、同時に、あらためて問い直さなければいけない部分や、それぞれのそもそもの動機だったりとか、目指す理想形っていうものがやはり違う部分で、紛糾する部分もあり。そういう風にしながら緻密に、立ち上げていこう、と議論を重ねてるんですけどね。

橋本:僕はその紛糾するのはあまり否定的に捉えていないですね。

丸岡:私は紛糾させている自覚はあるんですよ(笑)。

橋本:でもほんとに、我々が自覚するのは、いかに合意形成するのかということの難しさで、やっぱりそれは今の時代、本当に必要なことだと思っていて、どうやって合意を作っていくかということの実験自体も、このミーティングに課せられているような気がする。

丸岡:それはなんかこう、2つの意見があって、どっちを最終的に多数決取るのか…まあそういうこともあるかもしれないけども…それよりも、考え抜いて正解を見つけるということを諦めないような会にしないと。何かを作るということを、どう実践するかっていうのが肝心でしょうね。

川口:それ僕は面白いところだなと思ってて、まあある意味、相手の論をつぶすような形での議論の仕方っていうのが割と一般的だなっていう風に思うんですね。どっちが優位に立つか、あるいはその知性を証明するか、みたいな形の戦いがあって、場合によっては相手の話を揶揄(やゆ)したりみたいなことが、割といろんな話し合いの場で行われていることだなと思うんですけど、このオープン・ネットワークの話し合いの場は、先の見えない中で、どっちがいいというのが誰も決められない中で、それでもどっちかにするのがいいのではないか、ということで合意形成をしていくという、すごく面倒くさいことをやっている(笑)。でも面倒くさいことが、それ自体が、さっきも言っていたネットワークの出会いとして、僕の中で非常に面白いことになっているなあと感じるんですけど。

野村:ちょっと言葉尻をとらえるみたいになっちゃうんですけど、今、丸岡さんが「正解を見つけることを諦めない」って言ったことについて、僕は寧ろ「正解がないことに対してどうやって合意を形成して、連携して行動できるか」ということが肝だと思っているんです。それがいいか悪いかは実際分からないけど、自分たちで合意をつくっていって、アクションに繋げていくというか。
その合意形成の過程で、本当に100%結果が良い方向に出るかどうか分からないにしても「これでやろう」と自分で決めてやる、というその動きに繋がることがすごく大事なのかな、と思いますね。

川口:それは会の姿勢を示すというか、見せる、ということになると。

野村:だと思っていて、なので、発起人として僕たちが名前を出して、この会の概要を詰めていっているところだけど、いま僕たちが動き出すために出しているとりあえずの決断を、後から参加する方々が、「これが一番いい形で、こうでなければならない」っていう結論のようなものだと受け取って、それに従うのか否かで判断したり、僕たちが合っているか間違っているかみたいなところで判断をしたりして、傍観者的お客様的に決定を受け取ったり受け取らなかったりするようなことにはしたくないです。「互いに、合意をつくって一緒に行動しようとしている人たちの個々人の集まりなんだ」ということを、明確に実践していきたいし、そこをすごく注意深くやりたいなと。

川口:これから先、輪が更に広がっていくと、その合意形成を行うことや、誰かが決めてそれに倣うかどうかの判断ではない参加の仕方を伝えることは、更に難しくなっていきますよね。

丸岡:うーん、そういう意味では、あんまり、オープン・ネットワークが全てを出来る訳じゃないから、出来るところっていうのはどこかっていうことなんだと思うんですけど、野村さんが言ったようにその、正解がない、正解が見つからないことの回答を、それぞれの仕方は違うかもしれないけど、合意される、っていうことをしようとしているのかな。合意は、妥協でもないし、絶対的なひとつの回答のもとに集まるんじゃなくて、一緒に協働するというあらわれの、この積み重ねだけが…「~だけ」って言葉好きなんだけど(笑)、それがオープン・ネットワークであるっていう積み重ねの証になるかもしれないですね。新しい価値を見つけていくことのできるやり方のひとつとしての可能性を私は個人的に感じているんですけど。

橋本:まあ、ネットワークに参加してもらう人たち、会員になってもらう人たちの能動性っていうのを、どれだけ引き出すことが出来るのかっていうのが、今準備をしている発起人の一番重要な仕事かなと思って、組織作りを考えているっていうのはあるかなと。

むしろ制作の仕事をしている人たちが、状況に対して能動的である、という風に促すことが出来れば、それはかなり舞台を取り巻く状況を変えることに相当近づくと言う気がする。今までは、公共事業としてのフェスティバルの仕事っていうのは、一面では、お金を集めてくる仕事だけれど、それをなんていうかこう、降りてくるものにいかに早く飛びつくかっていうようなことでもあったけれど、いや、降りてくるのではなくて、“どうやってそれを作るのか”ということを考えないとダメな時期にきているんじゃないかな。なんで、そもそも助成金なり降りてくるお金が世の中に存在するのか、っていうことについても、言えなきゃいけない。

丸岡:それはやっぱり制作者の仕事だと思うんだけど、日本は…必ずしも日本だけじゃないけど…やっぱりそういう言葉を制作者が持たずにいたという現実はあると思うんですよね。

(後半に続く)
後半はこちらから!≫
後半は主に、10月に京都で行われたキックオフ・ミーティングの反応や、オープン・ネットワークに参加するのに敷居が高いと感じている人に向けてどういう参加の仕方を提案したいのかについて、語っています。

構成/川口聡 吉澤和泉
写真/大澤歩


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