制作ニュース

矢作勝義の「劇場オープンまでの長い道のり from 豊橋」Vol.10

13.02/02

愛知県豊橋に新設される『穂の国とよはし芸術劇場PLAT』オープンまでの長い道のりを、事業制作チーフの矢作勝義さんが綴っています。今回は、劇場内部の建設を先に行ったため仕上げは最後になっていた交流スクエアについてや、席番表示等のサインの細やかなこだわりなどをご紹介。皆様、節分の季節も過ぎていかがお過ごしでしょうか。豊橋のスーパーでも恵方巻きを大量に販売していましたが、私は買いませんでした。というか、恵方巻を食べる風習は私の生活してきた環境ではありませんでしたから、あまりに商売の匂いがして好きではありません。1月には大雪が降ったかと思えば、2月に入ったら春めいた温かい日があったり、少しずつ温かくはなってきているとはいえ、寒暖の差を激しく感じる気候が続くかと思います。


さて、いよいよというか、とうとう新劇場内に開設準備事務所が移転しました。これまで、このコラムでも書いてきたように、とても寒くて過酷な事務所でしたが、やはり新築の物件だけあって、普通に快適です。室内では余計な防寒具なしに仕事ができる環境になりました。写真は、新事務所の事業制作グループのデスクです。まだ、私の書類関係がデスク上を占拠しています。線路沿いではありますが、防音仕様であることと、それほどのスピードで走り抜けるような場所ではないので、音も気にならない程度です。


それと同時に2月1日より、新規劇場スタッフが加わりました。制作系スタッフが3人と、技術系スタッフが6人。制作系スタッフは、この他2月中旬から一人と、3月から一人の合計5人が新規スタッフとして加わります。既存の財団スタッフは4月下旬に財団本部の移転と共に合流し、いよいよ新しい劇場での体制となる予定です。制作系の3人は、東京から男性一人、浜松から女性一人、地元の豊橋から女性一人という3人です。技術スタッフは、豊橋出身者が多く、その他も岡崎など周辺地域出身者になります。
同時に、2月末までは各種備品が続々と搬入・設置されるスケジュールですが、まだ細かい手直し工事や外構工事が行われています。ただし、ほぼ完了している状況になり、備品類が設置された状況を確認しつつ、館内をうろうろしては、開館後のイメージを膨らませることが出来るようになりました。


駅から直結の入口、ペデストリアンデッキ口(くち)から入ったところの写真です。フローリングのスロープになっており、このまま主ホールのホワイエに直結しています。外壁と同じレンガの壁が印象的です。


そして、そのスロープの途中にあるベンチです。ベンチの正面はガラスになっており、外の景色がよく見えるようになっているので、ちょっと腰掛けてぼ〜っとするには最適なベンチかと思います。


そしてこれが主ホールのホワイエ正面壁面です。金色です。写真には写っていませんが、正面左手にある壁面は銀色なので、金の壁と銀の壁に迎えられる劇場となります。ぎらぎらと派手な感じではなく、どちらかというとちょっと華やかな感じと落ち着いた感じが上手くブレンドされ、観劇前の気分を高揚させるように感じます。


そして、これが1階中央にある交流スクエアです、天井の照明機器の調整をしているので、床面にはコンパネが敷かれています。正面がアートスペースの壁面になります。外光が差し込むように天井に明かり取りの窓ガラスがあり、その光がレンガの壁にあたった画はなかなか美しものです。


外光が差し込んでくるアートガレリアと呼ばれる通路です。右側が創造活動室Bの壁面で、この壁面が銀色になっていて、天井が2階まであるので、その壁面が主ホールホワイエに面しているという構造になっています。


そして、交流スクエアを見下ろすような位置にある回廊には、テーブルとまだ設置されていませんが椅子が置かれ、カフェで購入したお茶を飲んだり、本を読んだりできるようなスペースにもなります。劇場内部の建設を先に行い、この交流スクエア周辺の仕上げは最後になっていたため、ある程度のイメージはつかめたものの、なんとなく曖昧でした。しかし、こうして形になることで、より強固になり、ここをどの様な人たちが、どの様な顔をして、どの様な会話をして、歩くのか、立ち止まるのかなどと思いをめぐらせることが出来ます。そうして、そこには更にどのような物が必要なのか、物ではなくどの様な仕掛けやサービスが必要なのか、サインは、などと先へ先へと想像を深め準備をすすめていきます。


また、最後まで粘ってきたサイン関係も順次設置されています。サインだけではなく、表示関係は機能としてキチンとしていることは当然ですが、その中にも多少の遊び心が入ったなかなか素敵なデザインになっているかと思います。一つは、アートスペース(小劇場)の稼動椅子の席番表示です。単に、席番を表示するだけでなく、プラットのイメージキャラクターが描かれた可愛らしいものになっています。


これは多目的トイレのサインですが、単純に良くある汎用的なサインではなく、プラットのイメージキャラクターの形状を取り入れたものにしてあり、こうした部分でも、ちょっとしたこだわりというか、テイストを加えたものになっています。こうした、本当に細かいこだわりは、もしかすると気がつかない人もいるでしょうし、そんな所にこだわっても意味が無いと思う方もいるかもしれません。でも、劇場で上演される演劇やダンスなど、そうした本当に微妙なこだわりの積み重ねで創作されるものに、拮抗するだけの力を劇場が持つためには、同様に些細なこだわりを積み重ねていくことが必要なのではないかと思うのです。
大成建設の現場所長がインタビューで仰っていました。劇場建築の現場は、サイズはそれ程大きくないのだけど、こだわりがあり、仕上げなど細かい指示が多く大変なのだけど、その分やりがいはあると。
4月30日の開館記念式典を目指し、最後までとことんこだわって準備をすすめていきたいと思います。

追伸:事務所移転に伴い、住所が下記の通りになりました。
440-0887 豊橋市西小田原町123番地
穂の国とよはし芸術劇場 開設準備事務所
電話番号やメールアドレスの変更はありません。


■矢作 勝義(やはぎ・まさよし)■
1965年生まれ。東京都出身。公益財団法人豊橋文化振興財団『穂の国とよはし芸術劇場PLAT』事業制作チーフ。東京都立大学(現・首都大学東京)演劇部「劇団時計」から演劇に本格的に関わる。卒業後は、レコーディング・エンジニアを目指しレコーディングスタジオで働き始めるが、演劇部時代の仲間と劇団を旗揚げするため退職。劇団では主宰、演出、音響、制作、俳優を担当。ある忘年会で、当時世田谷パブリックシアター制作課長だった高萩宏氏(現東京芸術劇場副館長)に声を掛けられ、開館2年目にあたる1998年4月から広報担当として勤務。その後、貸館・提携公演などのカンパニー受入れや劇場・施設スケジュール管理を担当するとともに、いくつかの主催事業の制作を担当した。主な担当事業は、『シアタートラム・ネクストジェネレーション』、『リア王の悲劇』、『日本語を読む』、『往転-オウテン』など。また、技術部技術運営課に在籍したり、教育開発課の課長補佐を務めるなど、世田谷時代は劇場の何でも屋的な存在としても知られた。2012年3月末をもって世田谷を退職し、2013年5月オープン予定の“穂の国とよはし芸術劇場PLAT”の開館準備事務所にて事業制作チーフとして勤務中。


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