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劇団制作社樺澤良の!!!!! 「制作王子、ニューヨークへ行く~米国☆留学記~」 “制作王子”こと劇団制作社・樺澤良による、ニューヨーク“制作”留学日記。 Vol.9 海外公演の足掛かり

12.02/13

バナナ学園上映会会場の

Dance New Amsterdam

皆さん、こんにちわ!!!!!先週1週間行ってきたロサンゼルスでメイドカフェに行ったのですが、残念ながら日本人しか働いていなくて強烈なショックを受けた樺澤です!!

今日の一言:アメリカのメイドカフェでは「おかえりなさいませ、ご主人様」とは口が割けても言ってくれませんっ!!!!!(これに関するご意見はこちらからっ:info@seisakusya.jp または twitter ID:@kt_ekimae)

さて、今日は”海外公演を検討する”という題材で書きたいと思うのですがどこまで書けるでしょうか。ここでは非常に基本的な形を紹介しますので、これから海外公演を行いたいという方の足掛かりになればと思っています。

こちらで知り合う人達はアーティストであれ、制作者であれ、常に自分達のプレゼンを行う事ができる素材を持ち歩いている事が多いと感じます。それらはまた、YouTubeなどにもUPされていて、世界中どこにいてもネット環境があれば閲覧する事が可能です。日本の場合、公演作品はDVD化され販売用となる事も多いためフルスケールの映像をYouTube上にUPする事に抵抗を覚える制作者がいるかもしれませんが、フルスケール版をYouTubeにUPする必要はなく、プレゼン用の編集を施した物を用意すればOKです。フルスケールの映像と共に交渉ができる状態まで進んでいる環境があれば良いのですが、そうもいかない場合もあるでしょう。私もプレゼン用の映像には最近特に必要性を感じるようになりつつあり、自分の備忘録にもなるためどのようなプレゼン映像を作るべきかについて私なりの簡単な案をここにまとめたいと思います。

大前提として要所抜き出しで内容を織り込みますが、プレゼン用の映像は視聴覚感覚のみに頼り編集する事はNG。その作品は舞台美術や小道具はどのようなものなのかの全体像が分かるシーン、そして出演者のおおまかな人数が分かるシーン、特殊な演出がどの程度あるのか、音響、照明はどのような性能を求められるのか、そして作品の核が印象づけられるシーンなど。これらの情報がYouTubeにも容易にUPできる尺の15分程度に収まった上で魅力が伝えられるかどうかがひとつのポイントであると思います。

そして要所抜き出しの映像に基づくテクニカルライダーという公演を行うための技術要綱を用意します。これには作品の上演のために必要な最低限の会場のサイズはどの程度か、会場の高さはどの程度必要なのか、ステージ毎のインターバルはどの程度の時間が必要なのか、一日に何ステージまで可能なのか、音響機材は何が必要なのか、照明機材は何が必要なのかなどそれこそ取扱説明書という言葉がもっとも適した表現かと思います。時には楽屋のケータリングにはドライフルーツと終演後に飲むためのワインが必要と書いてあるテクニカルライダーも存在するくらいです(文化的習慣の差異を感じざるをえない突飛な例ですが…)。このテクニカルライダーは周囲の海外ツアーをしている制作者の方々は大体持っていると思いますので機会があれば参考資料として見せてもらう事ができるのではないかと思います。

そして最も重要な事として公演を行うためにどの程度の予算が必要となるのか分かる内訳が必要となります。国際渡航費用、渡航先での市内交通費、道具運搬費(空輸or船舶)、上演料、日当、ビザ費用、宿泊、などがざっと挙げられるかと思います。これらすべては基本的には制作者のやりとりによって行われますので、制作者がどんな作品なのかを説明できるかだけではなく、技術的な条件に関しても熟知している必要があります。大きな規模の組織であれば技術部経由で連絡をする事も可能ですが、個人カンパニーの場合は技術スタッフは外注である事がほとんどなため、情報を集めた後の海外との実際のやりとりは制作者自身が行う事になるでしょう。

若手で、任意団体であるカンパニーは、今の日本の劇場と協力しあい公演を行う際には提携条件で行う事が多いため、なかなか自らのテクニカルライダーを保有していない場合が多く、また、その必要もない事が圧倒的に多いと思われます。これには新作を作り続けているために再演だからこそのテクニカルライダーを作れないという現状もあると当然に思います。しかし海外マーケットを視野に入れた際には普段の国内での制作業務からその範疇を広げ、より具体的な数字、技術要綱、作品自体の魅力を伝える的確な素材を持つ事が必要とされます。制作の存在とは何か、制作業務のスキルはどこにゴールがあるのか、制作者としての喜びはどこにあるのかという事を考え、時に迷走してしまう方もいると思いますが、こうした業務を担うために制作者はある種のマニアであれ、と私は思います。また、演劇は広く敷居を下げ、誰でも文化芸術の豊かさを享受できるためにあり、社会的危機状況下においては芸術を通じて精神的な救済活動を担える有用性を持っているものだと意識するべきだとも思いますが、同時にそれを経済的に成立させていく必要性もあると私は考えています。芸術性と商業性は両立できるものでなければ、私達には未来が無いに等しい。この時代で自立する事自体を否定されていると同じ事になります。

こちらに来た本来の目的であるウェスリヤン大学のICPPへの参加とは別に仕事の可能性を検討してきました。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私はバナナ学園純情乙女組という団体の制作を担当しています。そして、こちらに滞在している間の様々な機会にカンパニーのプレゼンを挟み込んできました。結果、上映会という形ではありますが具体的な足跡をつける事ができそうです。(現地での上映会情報サイト:コチラから)これは今後、海外での実際の上演という可能性も当然ながら視野に入れたものですし、そうでなければやる必要もありません。制作をするという事においてマニアであるという自覚症状がある私はニューヨークでの滞在期間でまた制作の深みにはまっていっていると感じています。

つづく

参考URL Dance New Amsterdam 上映会情報: http://www.dnadance.org/site/performances/dna-presents-2011-2012/banana-gakuen-theater-company/



■樺澤 良(かばさわ・りょう)■

劇団制作社 代表。 1979年、東京都板橋区出身。(株)メジャーリーグにてプロデューサー・笹部博司氏に師事。2005年、制作者のみで構成される「劇団制作社」を 旗揚げし、小劇場演劇界の制作受託を中心に活動を展開。過去の主な制作受託に「庭劇団ペニノ」「劇団鹿殺し」「フェスティバル/トー キョー」「鳥肌実全国時局講演会」「劇団、江本純子」「パルコ劇場」「東京芸術劇場(『芸劇eyes』、『TACT/FESTIVAL』、『チェーホフ?!』)」などがある。その他にも、東京都初所有の舞台芸術のための稽古場施設「水天宮ピット」の運営制度の設計や、「481engine」「CoRichチケット!」といった票券管理システムの開発協力にも携わる。現在、バナナ学園純情乙女組の制作統括として従事。2011年、「Asian Cultural Council」 の助成を受けてニューヨークへ留学。最近出来た趣味は釣り。

劇団制作社:http://seisakusya.jp

Asian Cultural Council:http://asianculturalcouncil.org/japan/


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