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劇団制作社樺澤良の!!!!! 「制作王子、ニューヨークへ行く~米国☆留学記~」 “制作王子”こと劇団制作社・樺澤良による、ニューヨーク“制作”留学日記。 Vol.11 Screening in NYC

12.03/13


DNAの掲示板。
現地で情報が公開されている様はやはり興奮。

開場中の光景

上映会当日の様子。

皆さん、こんにちわ!!!!! NY留学もほんとあと僅か!! 残り少ない日のラストスパートに、これでもかとばかり色々なところを巡っている樺澤です!! 先日は勢い余ってJFK空港すぐ近くのカジノにまで行ってしまいましたがしっかり大勝利をおさめて凱旋してきましたっ(本当の話)!!!!!

今日の一言:老若男女大好きアメリカで大流行のカップケーキ。日本では絶対に使わないだろう清々しいばかりの青色を使ったカップケーキの原材料は一体なんなんだろうかっ!!!!!(これに関するご意見はこちらからっ:info@seisakusya.jp または twitter ID:@kt_ekimae)

さて、ICPPのインデペンデント・プロジェクトが終わり、残すところの私のタスクはバナナ学園純情乙女組の上映会のみでした。昨年のフェスティバル/トーキョーに参加した事で意識しはじめた海外での活動、ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、なかなかの大所帯のためにそう簡単には公演を成立させるところまでいかないので、それならばと至った結論の上映会。会場は私の住んでいるところからほどなく近い場所にあるDance New Amsterdam(以下「DNA」という)でした。ICPPの生徒でもあるDNAのプロデューサーがこの劇場の芸術監督にバナナ学園のYouTube動画を観せてくださっていて、それがきっかけで開催できる事になりました。上映会をする事を決めたのが実際、年が明けてからの事だったので本当にタイミングが良かったとしか言いようがありません。やはり人と人とのつながりに感謝せざるをえないという事でしょう。DNA万歳!!!!!

そして上映会の日付には、かなり迷ったのですが3月11日に行う事に。東京に住んでいるという事でいわば中間被災者である私はこの上映会で対海外に何を語るべきだろうか、そして対海外に何を語ってよいのか、という事については上映会の前日まで悩み続けましたが、日本人であるという事でしか伝えられないものは確かに存在する事だけは分かっていたのでどうにかそれが伝えられたらというのが私なりの目標でした。そしてこの上映会は社会派の組織が行う、3月11日について言及するためのものでもなく、またバナナ学園の活動がそのためにあるわけでもないという事をまず理解してもらう事が重要であるという結論にも至りました。

上映会当日はその事を告げると約2名ほど席を立ち、会場を後にする観客の方が見えましたが、それでも私は被災地に住んでいる人の立場でそれらを語る事はできないために最良の決断だったと今は思えます。私が言いたかった事、それは世界中で起こっている事は当然事実もあるが、勘違いも含まれているという事。代表的な例にこうしたエピソードがあります。

メトロポリタン美術館に行った時にたまたま近くにいた女性と仲良くなり、帰り際に話をしていたところ、「日本は原発の事故によってすべての土地が汚染されているんでしょう。私は怖くてとても日本には行く事ができないわ。」と言うのです。この発言を聞いた瞬間に、世界が見る日本は一体どんなイメージに包まれているのだろうかと恐ろしくなりました。確かに日本はアメリカと比べたら遥かに土地も狭く、人口も圧倒的に少ないのは事実ですが、それでも放射性物質が日本全体を覆っているというイメージには愕然としました。しかしながら世界の中には日本をこうした目で見ている人がいるという事も事実です。

バナナ学園の作品は約50名の俳優が同時多発的に様々な現象を繰り広げる事によって1度の観劇ですべてを網羅する事ができず、観る人によって様々な体験が生まれます。人によっては特別なエピソードが生まれもすれば、ある人によっては冷静に、その様を俯瞰的に観るという行為が生まれる事もある。それらから派生する印象は観客によって千差万別であり、当然のごとくそこに誤解も生じ、作品自体の読解に対して勘違いも発生する。バナナ学園の創作は実際、深く考えていないのではないかという意見もよく目にしますが、そんな事があるわけがない。深く考えていないのではなく、自由な勘違いができるように構成されているというのが真実だと私には思えます。

3月11日以降、日本では意識せずともアーティストの中に「震災」を結びつける思考回路が生まれ、さらには観客側にも「震災」を結びつける思考回路が生まれ始めました。代表的なものにバナナ学園で最近、すべての観客に配布するようになったレインコート。これは放射性物質から身を守るための防具に。そして東京芸術劇場のプロデュースによって行われた芸劇eyes番外編『20年安泰。』では、バナナ学園が上演を終えた後に、単純に次の団体のために舞台上の清掃をパフォーマンスの一部にして観せた行為がガレキの山から復興しようとする被災地の姿に重ね合わせたという感想にもつながりました。意図せず行った事がこうして日本国内でもありとあらゆる勘違いに結びついていく現状で、海外の人々が持つ日本への視線の中に勘違いが起こらないわけがない。だから、それはそれで良いと思える。ただし、それらの中には勘違いが含まれているという事をきちんと理解してもらうべきである。

と、いう事が3月11日にこの上映会を行った際に私が唯一伝えたかった事でした。これらの意思はニューヨーカーにどう伝わったのでしょうか。もちろん基本的にはバナナ学園という団体の作品の良さを伝えるための上映会でしたが…。「We are BANANA!!!!! From NEO★TOKYO made in Dangerous JAPAN!!!!!」というタイトルもそうですが、多くの勘違いを揶揄している事が伝わればと想い、つけたタイトルでした。

9.11と3.11は確かに結びつけやすい。ただし、似ているのは数字だけであり、ちょうど半年というだけのもの。そして実はなんら関係もない。むしろ日本の震災という出来事に似ているものはハリケーンカトリーナである。NY在住の人々は9.11から10年が経ち、昨年は様々な事を思ったでしょう。そして私達はこの3.11で震災から1年が経ち、今後の10年をどう舞台芸術を通じて生きていくのかを考えなければならないでしょう。しかし、それも実はなんら関係の無い事であり、事実はもっとシンプルに存在し続けている。私達は今の事実にシンプルに向き合い、目の前で起こっている現実をただただ見つめ、ひとつずつクリアして生きていく事にこそ次の足場を見つけ出していく為の要素があるのだと私には思えるのです。

時差の関係からNYでは3月11日だけではなく3月10日と3月11日にかけて多くの震災関連のイベントが行われました。その中で私は私なりの企画を果たしたのではないかと思っています。海外にいながらもこのすべての日本人が向き合わざるをえないこの日に皆さんはどう過ごしたのでしょうか。

次回は最終回。


■樺澤 良(かばさわ・りょう)■

劇団制作社 代表。 1979年、東京都板橋区出身。(株)メジャーリーグにてプロデューサー・笹部博司氏に師事。2005年、制作者のみで構成される「劇団制作社」を 旗揚げし、小劇場演劇界の制作受託を中心に活動を展開。過去の主な制作受託に「庭劇団ペニノ」「劇団鹿殺し」「フェスティバル/トー キョー」「鳥肌実全国時局講演会」「劇団、江本純子」「パルコ劇場」「東京芸術劇場(『芸劇eyes』、『TACT/FESTIVAL』、『チェーホフ?!』)」などがある。その他にも、東京都初所有の舞台芸術のための稽古場施設「水天宮ピット」の運営制度の設計や、「481engine」「CoRichチケット!」といった票券管理システムの開発協力にも携わる。現在、バナナ学園純情乙女組の制作統括として従事。2011年、「Asian Cultural Council」 の助成を受けてニューヨークへ留学。最近出来た趣味は釣り。

劇団制作社:http://seisakusya.jp

Asian Cultural Council:http://asianculturalcouncil.org/japan/


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