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劇団制作社樺澤良の!!!!! 「制作王子、ニューヨークへ行く~米国☆留学記~」 “制作王子”こと劇団制作社・樺澤良による、ニューヨーク“制作”留学日記。 Vol.8 キュレーターとその証明

12.02/13

2011年、夏。通常の授業が終わった後にも自主的にグループディスカッション

皆さん、こんにちわ!!!!! ニンジャ・ニューヨークというテーマレストランで働いているニンジャコスプレの店員達は何かにつけて大きな声で驚かしてくるのですが、ニンジャの認識はこれでよいのかと日々頭を悩ませているジャパニーズ・樺澤です!!

今日の一言:日曜日の4:00am~8:00amの間、酒類の販売を禁止しているのは酔っぱらって日曜日の教会に来て欲しくないからですってっ!!!!!(これに関するご意見はこちらからっ:info@seisakusya.jp または twitter ID:@kt_ekimae)

さて、私の今回のメインの目的であるウェスリヤン大学が昨年から始めたプログラムのInstitute for Curatorial Practice in Performance(以下、「ICPP」という。)もいよいよ大詰めを迎えてきました。改めて紹介しますが、このICPPは審査を受けた人達が様々な国から集まり、全米各地の最前線で活躍している講師達の授業を受けてキュレーターの役割について実践的な研修を行うというものです。生徒は現在17名。アメリカの方々が中心ですが、カナダ、フランス、イギリス、そして私、日本と様々な国から研修を受けに来ています。

キュレーター=美術館のための学芸員という認識が日本では強いですし、日本では学芸員と名乗るためには資格が必要となるので演劇を行う劇場に学芸員が制作的に所属しているケースはまだまだ少ないと思います。そんな中で、かくいう私もCuratorial Practiceという言葉を受けて学芸員実習というイメージを当初は持っていました。つまりは演劇制作者なので、美術館における学芸員と演劇の制作者は別物と認識していた私としては、この実習はどのようにこれからの私の制作作業に役に立ってくるのだろうかと長い間、答えを見出せず不透明なままでいた時期がありましたが、それは今回の留学滞在期間によって変化を見せ始めています。

もとより制作者とは何か、という大命題は日本語でなかなか説明しづらいところですが、さらに言えばそれを証明するのは一体、何なのでしょうか。とかく日本で制作者という職業には学芸員とは異なり資格を要しません。まずそれがそもそもの問題なのかもしれませんが、それはこちらアメリカでも同じ。そして、このキュレーターという言葉はもちろんこちらでも美術館などのキュレーターの事を主に指しますが、美術館におけるキュレーターの役割は演劇における制作者とやはり根本的にはほぼ変わりはないようです。授業を受けている間にそんな意識がすっと入ってきました。改めて考え直してみると、確かに日本でのケースを想像してみても合点がいくところです。企画進行、渉外、予算執行及び管理だけでなく、クリエイティブな部分も当然担う。その理論を持ってしてパフォーミング・アーツ全般のキュレーターとしての実践的研修を行うのがこのICPPなのです。もちろん制作者の中にはクリエイティブな部分を担わずに作業を進行していくというケースも当然、世界共通であると思います。この話に関しては後述しますが、私にはむしろ制作者の役割を考えると共にプロデューサーの役割という事を同時に考えていく必要性があるようにも思えます。よく、制作者の仕事は多岐に渡るという言葉で片付けられてしまいますが、その具体的な課程を学ぶ集中研修がこのICPPの中には含まれているのでこのICPPの研修内容をいずれ細分化して紹介する機会があればこの論点を解く鍵となるかと考えています。

実はこのウェスリヤン大学の研修、ICPPでは課程を修了するとcertificate(証明書)が発行されます。前述の通り、ここで言うところのキュレーターは「制作者」を指す事となります。私はこの時に「制作であるという事を証明するものがない日本人にとって、その証明を持てる機会が今回なのだ」という事に気がつき、即座に立ったまま失禁しました!!あわわわわ……(産まれたての子羊が足をガクガクブルブルしている様を思い浮かべてください、みなさんっ)

はい、やめます、話を戻します。これは非常に有用な事で、その証明書が正式な大学の研修を経て発行されるというところが信頼性のポイントのひとつです。このプログラムはまだ第一期であり、これからも続いていくものなので是非に今後、見習っていくべきと思います。もしくは実際に参加するのが最も早い。これがもしも日本国内において同様の形で展開されていくとなると、制作者という職業を証明するためにはこれらの課程を学ばなくてはならない事になります。その内容の中には先ほど書いたクリエイティブな部分を担わない制作者が行う作業も内包されるのは当然であるし、そこからさらに制作=キュレーターであるという事を証明するために必要となってくると思われるクリエイティブな部分も学ばなければならないという事になる。つまりは証明するものが無い時点では極端な言い方をしてしまえばキュレーターとは呼ばずにプロダクション・コーディネーターもしくはカンパニー・マネージャーのような表現であったりするかもしれません。そしてこの話はあくまで資格が前提のものだという事を予め断っての発言ですが、資格を要さない場合の制作者はキュレーターと呼ばないものとするのかもしれない。もちろん、日本語での表記の場合は制作という言葉を使い分ける必要性はないように思えます。同じキュレーターであっても学芸員と制作という言葉を使い分ける事により、美術分野なのか演劇分野なのかを分ける事ができると思えるからです。今ここでの話の焦点は演劇分野における英語表記に絞られているわけで、その上での問題となります。資格を前提とすれば保持者がキュレーター、一方がプロダクション・コーディネーターもしくはカンパニー・マネージャーとなる。細分化するならば劇場勤務や規模の大きな製作会社(以下、「劇場系」という。)の制作者の場合はプロダクション・コーディネーター、劇団単体や規模の小さな製作会社(以下、「劇団系」という。)の制作者はカンパニー・マネージャーというのがしっくりくる気がします。劇場系制作者で資格保持者ならばキュレーターもしくはアシスタント・キュレーター(ここでは「制作補佐」の意味の造語としての呼称を仮定します)。

また、この研修の講師陣は最前線で活躍している人達である必要があるため(でなければ座学の範疇にとどまる)、今後のコネクション形成にも結びついていく。キュレーターである事の証明が出来るという事、それは例えば若手の制作者である場合は、自分の身を開かれたフィールドに置き始めるという事であり、経歴も浅くて知識の差がはかりにくいためにスキルも見えにくい自称制作者という非常に曖昧な層との棲み分けを行う事ができる。

プロデューサーの役割というところについてまだ読解を示していない状態ではありますが、簡略化すると下記のような形になるのかと思われます。今後も議論が必要なものですが、あくまで仮定として。

考え方として

・資格を有する場合はいずれにせよキュレーターの名称が付与される

・プロダクションに含まれる生産の意味合いをカンパニーよりも優先し、劇団を持たない場合の劇場系を意味するものとする

・劇団系を一方のカンパニー名称と仮定する

・コーディネーターとマネージャーを比較した際にやや広い意味を持ち、複数人数で勤務している場合が多い事が想定される劇場系制作者をコーディネーターを意味するものとする

・個の結びつきが比較一般論的に強い印象を持ち、ハンドリングを一手に担う場合が多いと予想される意味を取り、マネージャーを劇団系制作者とする

日本の場合でも有識者と環境整備に熱意を持った先駆者が証明書を発行する企画を立案しさえすれば私達日本の演劇界でも制作とは何かを定義する具体的な前進策を今後、取れるのではないのでしょうか。

以上、永遠と議論が出来そうな話題でした。(これに関するご意見はこちらからっ:info@seisakusya.jp または twitter ID:@kt_ekimae)
……反対意見、ありそうすぎて怖し。びくびく。

つづく

参考URL About ICPP:http://www.wesleyan.edu/cfa/icpp/index.html



■樺澤 良(かばさわ・りょう)■

劇団制作社 代表。 1979年、東京都板橋区出身。(株)メジャーリーグにてプロデューサー・笹部博司氏に師事。2005年、制作者のみで構成される「劇団制作社」を 旗揚げし、小劇場演劇界の制作受託を中心に活動を展開。過去の主な制作受託に「庭劇団ペニノ」「劇団鹿殺し」「フェスティバル/トー キョー」「鳥肌実全国時局講演会」「劇団、江本純子」「パルコ劇場」「東京芸術劇場(『芸劇eyes』、『TACT/FESTIVAL』、『チェーホフ?!』)」などがある。その他にも、東京都初所有の舞台芸術のための稽古場施設「水天宮ピット」の運営制度の設計や、「481engine」「CoRichチケット!」といった票券管理システムの開発協力にも携わる。現在、バナナ学園純情乙女組の制作統括として従事。2011年、「Asian Cultural Council」 の助成を受けてニューヨークへ留学。最近出来た趣味は釣り。

劇団制作社:http://seisakusya.jp

Asian Cultural Council:http://asianculturalcouncil.org/japan/


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