制作ニュース

舞台芸術制作者オープンネットワーク 座談会(後半分)

13.02/09

オープン・ネットワークはどう活用できるのか?

野村:いま、NPOの形をならって規約を作って準備しているということは、実はこれとっても大事なことをやっていると思っているんですね。それは何かというと、やっぱりその、ネットワークを一回繋ぐということは、何かのきっかけがあれば出来るんだけれども、それを続けていって、新しい人たちを迎え入れて、あるいは一度抜けたりまた戻ってきたりっていう、蓄積していく関係、その厚みっていうのがすごく大事だと思うので、そのためには何かしら維持していく組織の骨格を持っていないと、何か大きな動きがあったりとか、もっと環境が変わったときに、やっぱり揺らいで壊れてしまうと思うんですね。だからこそ、僕たちがすごくフラットにやりたいからこそ、それを継続していくための骨格というものを、最初から意識して考えているし、そのことは実はとっても大事なことで、難しいことをやっている訳ではなくて、骨格はどうしても必要なので、なるべくやわらかくてフラットなネットワークっていうのを作るために、骨格をハッキリさせようとしているということだと思います。

川口:それだからこそいろんな人が参加出来るし、多様性がその中で維持されるってことですよね。まあその、いろんな方が懸念している部分でもある点として、例えば、じゃあほんとに、文化政策の提言を出して、それが採用されていくような組織になっていくのか、という問いはあると思うんですけど、ひとつは今の野村さんの話の中であったように、そこだけを取り出して目的とすることではなくて、ある種それ自体を、きちんと枠として作っていく中で、寧ろその枠組みの中で発生してきた声を採用していくみたいなところを大事にしたいですね。

野村:ひとりの制作者として言いますけど、まず、自分が文化政策に対して、今、提言出来るかって考えたときに、自分自身はそこまで自信がない。それは、知らないことが多いから。自分と同じような立場にいる人が、どういう見解を持っているのか?あるいは提言しなきゃいけない相手が、どういうニーズや要望、目標を持っているか?なぜそういう政策を行うのかということについて、知っていることが少ないから、言ってしまえば、対象がどこにあるのかも分からないし、自分がどういう球を投げられる人間なのかも分からない。現に、僕自身はそういう状況に今あると感じているんです。

そうであるからこそ、いろいろな立場の人が集まって、自分自身が提言出来る声を持たなきゃいけないっていう風に思っている。もしそういう人たちが集まって、互いに知らないことを補ってシェアしていけば、まとまりとして提言することも出来るだろうと。一方で、そういう多様な人たちの声が、何か提言としてのまとまりを持つということであれば、それなりの説得力は持つだろうという風に現時点で言える。

橋本:提言っていうのは、別に持論を展開するっていうこととはやっぱり違うという風に思ってもらう必要があるかなと思う。すくなくとも、提言っていうのは、つい文化庁とかそういうところを想定しがちだけど、業界に対して提言するっていうことも、僕らの考えとしてあるわけで、会員と一緒に議論していく中で、十分効果がある提言になりうると思う。それこそこういうネットワークで議論を積み重ねない限り、業界に対しての提言っていうのは難しいんだろうと。

で、あと、さっき商業の話のときに出てきたけど…皆、所属している会社の利益のためにそれぞれ仕事しますよね。でも、この会は基本的に正会員は個人で参加するって形態にしているじゃないですか。そこがミソかなと思っていて、仮にプロダクション会社に所属していたとしても、自分自身はその会社の仕事をする以上に、演劇やダンスの仕事をしている人間だというアイデンティティを持っている人がいて、そういう人も自分が所属している会社がどうかっていうこととは関係なく、次の一手を考えていく必要があるだろうと思うんですね。だから、あっち側こっち側ということにならない方がいいだろうと。なんでそれを言ったかということと、会自体が、あくまで個人として参加して欲しいというようなところと、なんか繋がってるなと思っている。

丸岡:それはその、例えば、あらかじめ自己ジャンルを規定してこれは違うだろうということではない、という話と繋がってきますね。

野村:そうそう、だから京都のキックオフ・ミーティングの時に、学生とか20代の制作者から、要は「人材育成」という言葉で、自分たちのこの先のために、「この会に参加すると、どういうことが可能になるんですか」っていう質問があった。そういうことを考えようとしたときに、まずケースAは、自分の知り合いの、ベテランの人に、聞いたり教わったりするしかない。ケースBは、同世代で話しをして、それで終わりになっちゃう、というパターンだと思うんですけど、こういういろんな立場の人たちがいる場で、そういうことを語り合う…例えば、その世代の人たちだけで、会員提案企画をたててやってもらえればと思うんですけど…語り合ったときに、その場に居合わせた様々な立場の制作者は、君はこれ、君はこれ、君はこれみたいな感じで、いろんな形で限定されない答え、ひとつひとつの回答を出してもらえるチャンスがあるだろう、と思うんですよね。アーティストと同じで、実は制作者も、すごく、その人が目指している方向性とか、持っている能力とか、置かれている環境とか、経験とかで、答えが違う。制作者って一言で言うけど、全然違うものとして仕事していると思うんで、ともかく参加して自分のことを表現してもらうことで、何かしら出会いがあるんじゃないかなと思いました。

丸岡:若手の制作者のネットワークってよく言われるんですけど、そんなことないです。参加資格のところに載せてると思うけど、年齢とか、関係ないです。

川口:そうですね、国籍も規定していないですしね。

丸岡:まあ、その辺をひとつ、テーマに挙げた方がいいかなと。若手の人たちを温かく見守ろうということじゃなくて、作品と観客の間を繋いでいる人が、個人で参加していくことに価値を見出す人は、年齢経験問わずに参加してもらえるといいなと思います。

橋本:地域も問わず。

丸岡:どうしてもキャリアの浅い人をどうするか、とか課題にしがちだけど、キャリアのある人の方が、むしろ誰かに背中を押してもらうのを待ってたりする、とか。

川口:そうですね。なんか一言で言いきると、主体性を持つ、ということだけだと思うんですけど、学ぶっていうことも含めて。

丸岡:いやもうなんかちょっと、自分は違うんじゃないかということを思わないでね、みたいな(笑)。

野村:自分と違う人いっぱいいるはず。

丸岡:そうそう。

野村:僕も違うし。

川口:僕もそう。

丸岡:私も、なんか世代が違うと思うって言ったら、みんなそう思っているよって(笑)。

野村:年齢とかほんと関係ないですよね。僕は自分の欲望として、もっとどんどん地方に行って、すごく年齢差があっても、ずっと長く場所を作っている人たちにも、どんどん声をかけていきたいと思っている。そういうことは躊躇する理由にはならないっていう感じはありますけどね。

丸岡:多分、こういう会だから参加する理由っていうのが見つけにくいっていうのがあるんじゃないかな…いや、参加する理由っていうのはつまり、例えば自分が勤めているのが公共ホールだから地域のネットワークに入るっていうさ、そういう自動的な流れで参加することに慣れていると思うんだけど、主体的に選んで入るっていう行為は、苦手なところがまだまだあるんじゃないですかね。そこを変えていくのもこのオープン・ネットワークですよね。

橋本:誘われたら、行ってもいいかな…と、誘われるのを待つ、みたいなことに慣れてる人がいるんじゃないかなと。

塚口::でもある意味、意思表示すれば誰でも入れるし、会費払えば誰でも入れるっていう、ハードルはすごく低いにもかかわらず、私の個人的な感覚で言うと、意思表示するって結構大変な作業だな、ということに気づきましたね。そのことがハードルが低いっていうことを知るっていうことだけでも全然違うかな。積極性を持つっていうか。

野村:あと、小規模なオフ会みたいなものをどんどんやっていきたいと思うので、そっち目当てで入ってもらってもいいんじゃないかと。

川口:そうですね、それこそ地域の寄合とか。

野村:あとあの、くだらないやつはいっぱい考えています(笑)。

川口:でもほんと、そういう小さな情報交換みたいなものから、いろいろ広がっていくなと思うんで。

野村:なんのかんの、もう仕事を共にする人って決まっちゃってるじゃないですか。決まっちゃってるのって面白くないですよねー。

丸岡:そうなんだよね。発起人の13人で顔を突き合わせているのもそろそろ飽きたしね(笑)。

野村:そんなのもう半年前に飽きてるじゃん(笑)。

一同:(笑)

丸岡:ところで、この「舞台芸術制作者オープンネットワーク」が何をやるかってことですけど、イメージがなかなか思い浮かべにくいと思うんですよね。決まっているのが、正会員は委員会に所属する。所属して、委員会に関わる、運営する。委員会の集まりにどのくらい出席するとか、そういうことは別なんですけど、今、検討している3つの委員会っていうのが、「文化政策委員会」と、「国際交流委員会」と、「地域共同委員会」の3つがあって、今、正会員は複数の委員会に参加できるっていう方向ですが、最低でも1つの委員会に参加して、報告会や総会を共に一緒にやっていくというのが、決まっていることです。

野村:2013年はこの3つの委員会という認識ですけど、そういうことでもない?

丸岡:それは、まだ決まってないんじゃない?

川口:まだそうですね。委員会ごとの活動年数とか、どういう目標設定でやるのかは、これからの検討ですね。

野村:例えば2014年に…

橋本:新しい委員会ができることも在りうる。

丸岡:ありうるありうる。

野村:「国際交流委員会」が2つに別れて活動するとか、そういうこともあり得るんですか?

丸岡:おおいにあり得ると思います。

川口:さっき言ったみたいに、僕らはオープン・ネットワークの枠組みを作っているだけで、事業は、これからいろいろ年数ごとで短期的なものもあれば、ある程度、長期的に研究したり繰り返していくようなものもあるだろうし、そういういうのは、組織が立ち上がって、委員会に参加した人や、理事に決まった人たちで決めていくことだっていう風に思いますね。

野村:ひとつのシナリオとしては、報告会のときに、これこれこういう理由で、これとこれについてもっと検討したいということになったと。ついては、2014年は、これとこれの2つの委員会に分かれて活動していく、みたいなことがあって、2014年の委員会がスタートするみたいなシナリオもあり得るんですかね。

丸岡:おおいにあり得ると私は思いますね。

川口:あるいは、サブ・ネットワーク、部会みたいな形で、予算を付けてないサークル的な活動が、ある年に委員会に繰り上がって活動を展開するっていうこともある、というところが、事業=委員会という「舞台芸術制作者オープンネットワーク」のひとつの特徴ですよね。参加を検討している人の中には、興味はあるけれども、具体的にプランがあってこれを実現したい、ていう人って少ないような気がするんですね。例えば、まずは入って、今ある委員会の中で、どちらかっていうとこれに興味があるかなってなって、その委員会に入りました、その中で勉強しながら、考えていきたいです、という人もウエルカム、と思っていいんですよね?

丸岡:イエス。

川口:実際、僕ら自身もそんな立ち位置でもあるし(笑)。

丸岡:ベリーウエルカム。

川口:たまたま発起人のメンバーは、それを効率的に、というよりは具体的に推進していくには、どういう風に委員会を…とりあえずスタート時点では、立ち上げていくべきかとか、その枠組みどうするか、ということを話している、という感じですかね。僕らも暗中模索です。まあ、多分、最初はとにかく飛び込んでみることが必要だと思うんですね。その後で、何かを学ぶためにいるっていう立ち位置から、どっかで自分も何かそこで働きかけていくんだって思えて、自分の状況をその中で変えていくんだって思えるか、ということだと思っていますけど。

野村:そういう感じの人いっぱいいると思うんで、まずはそういう感じの気楽な飲み会をやります。

構成/川口聡 吉澤和泉
写真/大澤歩

 

固定ページ: 1 2


ピックアップ記事

セミナー
東京藝術大学公開授業「社会共創科目」

Next News for Smartphone

ネビュラエンタープライズのメールマガジン
登録はこちらから!

制作ニュース

ニュースをさがす
トップページ
特集を読む
特集ページ
アフタートーク 
レポートTALK 
制作者のスパイス
連載コラム
地域のシテン
公募を探す
公募情報
情報を掲載したい・問合せ
制作ニュースへの問合せ


チラシ宅配サービス「おちらしさん」お申し込み受付中