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『せんだいメディアテーク 考えるテーブル「あるくと100人会議」 〜まちの再生、アートの再生~』第二部「まちの再生、アートの再生」

13.03/18

第二部「まちの再生、アートの再生」
進行: 坂口大洋(仙台高等専門学校建築デザイン学科准教授)
鈴木拓(ARC>T事務局長)
伊藤み弥(ARC>T事務局(当時))

1、震災における、建築物としての「劇場」の被害

まず、ARC>T事務局長の鈴木拓さんより第二部の説明がありました。

■鈴木拓さん(ARC>T事務局長)
そもそも再生と言うからには、何かが失われたわけだが、では、果たして我々は何を失ったのか。また震災直後に失ったつもりだったものが、実は失っていなかったり、逆に気付かずに失っているものがあるのではないか。そういったことを“再生”という言葉をキーワードにして考えてみたい。まず「施設」としての「劇場」は確実に一時期失われたものとなった。現在(2012年4月時点)もまだ開館していない施設もある。

続いて、全国でも数少ない劇場研究のエキスパートであり、東北大学の建築学で長年活躍され、仙台の稽古場&劇場施設である10-BOXの計画や設計などにも深い関わりがあった坂口大洋(仙台高等専門学校建築デザイン学科准教授)さんから、震災の状況下で「劇場」の機能はどう失われ、一方「劇場」とは、これまでどういう場であったのかについて説明がありました。

■坂口大洋さん(仙台高等専門学校建築デザイン学科准教授)
これまでは、さまざまな舞台機構がある舞台が危険で、客席は安全とされてきたが今回の震災では、舞台側はほぼ無傷で、被害はむしろ天井崩落など客席側に散見された。避難誘導の場所・方法など、今後、緊急時は客席から舞台上に逃げ、搬入口から脱出するやり方に変えていくことになるかもしれない。建築関係者だけでなく、劇場関係者も含めて、施設の作り方など、これまでと異なるものを検討しなければならなくなっている。

地震は東日本大震災に限らず全国で発生しており、震災は続いていると言える。秋田県の仙北市で何の地震もないときに照明のボードが落下するということがあったなど、安全性が確認された建物であっても、目に見えないところで以前に発生した地震エネルギーを蓄積している可能性が高い。

これは「劇場」に限らず、また東北地方に限らず、地震の揺れを観測したすべての地域の建物について言える点なだけに心配になります。

■坂口大洋さん(仙台高等専門学校建築デザイン学科准教授)
今回の被災は津波の被害が甚大だったので“失われた”というキーワードが多く使われるが、失われてしまったものか、壊れた状態を修復するか、で取り組みが変わってくる。壊れたものはある程度の考え方なり、時間をかければ修復は可能。失われ、まったくないものをゼロから作っていくことは非常に難しい。

実は、東北地方の公共ホールなど文化施設は、震災前から少しづつ財政の問題から運営が難しくなり、人が減り、予算が減り、メンテナンスが十分に出来ない状況になっていた。そこに震災が起こった。問題は震災前からあると言える。

ただ、東北では今回の震災で人的被害はなかった。地震のあった金曜のお昼にも、劇場の2~3割は上演中だった。その事実は、スタッフの観客誘導や観客の避難行動などマンパワーで乗り越えた点が大きかったと言える。またいち早く避難所として機能できた。そのマンパワーで乗り切った部分と、システムや組織の再構築は分けて考えていくべきだと考える。

また今回、明らかになったことは、大船渡のリアスホールなど、避難所となった公共ホールが、もともと人が集まることに適した施設構造を持っていて居住性が非常に高かった。体育館などに比べ、断熱性や複数の部屋がある点が有効だったことが報告された。さらに夜泣きした子供をあやすのに隣接している図書館に移動できたり、プライベートな空間を担保できることによって、避難所の中の人間関係が上手くいき、共同生活が円滑になったということが、今後、公共ホールを緊急時避難所として活用する場合のポイントになってくると思われる。

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