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『せんだいメディアテーク 考えるテーブル「あるくと100人会議」 〜まちの再生、アートの再生~』第三部「明日を生きるために」-10、20、100年後の仙台-

13.03/18

第三部は、10年前、20年前の政治・経済・社会・スポーツのニュースを紹介しながら、さまざまな人が、まちの中にある「劇場」の役割や、広場としての「劇場」、公共の場としての「劇場」などこれまでの劇場の在り方を課題に、新しい劇場の在り方やこれからの「街」「アート」「劇場」について意見を述べていきました。
また作品を作り発表するだけではない、舞台芸術を社会に還元していく「仕組み」作りについても意見が出されました。トピックごとにまとめ、順不同でご紹介します。

1、競争社会から共生社会へ

■水戸雅彦さん(仙南芸術文化センター(えずこホール)所長)
競争社会から共生社会へ。そうなったらいいなと私は思っている。競争社会で人と人が潰し合う、それで毎年自殺者が3万人も出ている。社会として歪んでいると思う。それは人と人が潰しあう競争の原理で社会が動いてるからだと思っている。今回の震災では、未曾有の災害に遭って人々が無意識に助け合っている。

多くの人がそうしなきゃいけないと一瞬のうちに気付いた。気付いた人が、次の時代は競争社会じゃなくて共生社会だねってイメージをどこかで持っていながらいられたらいいんじゃないかと思っている。それがいろいろなところで起こり始めている。このことは街づくりに直結していると思う。このイメージが社会に広がっていったら社会は変わると思う。

公共ホール、公共施設という考え方…行政がやってるとどうしても公正、公平とか平等がキーワードになるがそれはありえない。なぜなら皆が違う考えと価値観を持っているから。では公共ホールはどうあるべきか?

それは「ミッション」になる。何の為にその施設があって、誰の為に何をするかという意思を持っていてそれを表明することで、市民が応援するかどうかが評価だと思っている。

何らかの考え方というのはあると思っている。それを皆が「イイネ」と応援してくれればそれは公共ホールとして価値がある。公平や公正ということを考えるとやれないことが多くなっていく。平等じゃないからやめましょう、一部の意見だからやめましょうということになり公共性は失われていく。

アートに関して言うと舞台表現というものから人がどんどん離れていっている。人のクリエイティビティ(創造性)が引き出され、活性化して、素晴らしい表現に皆が共感してそれを応援することが大切なこと。劇場に本当に来たくて来てる人はおおざっぱにいうと(人口の)5%ほどと捉えている。人が文化として受け止めて活性化していくのに5%の人を相手にしているのはおかしいと思う。残りの95%の人に対してはARC>Tが行っているようなアウトリーチ事業というのがとても大切だと思っている。

えずこホールでは11年前からアウトリーチ活動を行っている。今年はアウトリーチ活動を110本から120本ほどやっている。小学校や施設で行っているが、そこで気づくことは人は誰かとコミュニケーションしたいと思っているということ。コミュニケーションすることで想像力が引き出され人は活き活きする。活き活きするものを誰かに認めてもらうと、さらに人は活き活きする。このサイクルがとても大切だと思っている。

先日も俳優と施設に行って活動してきたが施設の人が、あのおじいちゃんを3年見てきたがこんな活き活きとした姿ははじめて見たと言っていた。これから社会にとって最も大切なのはこれではないかと思っている。

日本は未曾有の高齢化社会に突入する。医療費と介護保険はこれから大きく増やしていくことはできない。その中で必要なことは、元気なお年寄りを増やしていくこと。

お年寄りだけでなく、皆が元気でいること。幸せでいること。そうすると病気が少なくなり、税金の使い方が変わると思う。行政がアートに使うお金の使い道はそういうものになるべきだと思っている。


■八巻寿文さん(せんだい演劇工房10-BOX 二代目工房長)

「劇場」は(仙台には)まだない。今、言っているのは公共文化ホールのこと。「劇場」があったらいいなっていう、そういう違いだと思う。

震災があって、震災以前の課題が浮かび上がったと第2部で言ったがその課題はいつも朦朧と横たわっていた。それが震災によって少しクリアに見えた。そんな印象だった。あまり元には戻れないということにとらわれ過ぎない方がいい。それは当たり前のことなのだから。

神楽は他のものよりも地元のアイデンティティという点で他とは違う感触があった。アートはマイノリティに向かう本質的な作用があると考えている。マイノリティに寄り添うものだと思っている。アートはマイノリティに向かうのであればそれは大変必要なものだからアーティストには最低限の生活の保障があるべき。最低限が保証されていれば勉強ができる。稽古ができる。役に立った時にギャランティが発生すれば良い。でもギャランティが保障されていないとそういうことはできない。

演劇は、学者や政治家でなくても思ったことを舞台の上で叫べるし叫んでいい。その時点でのレベルで社会を告発できる。してもいい世界。また朦朧とする日本に戻ろうとしていくことを防ぐためには社会にある問題をリアルに知ることが大事。原発のことも、知らないことが多すぎる。むしろ海外のメディアの方が詳しく報道している。海外から見ると日本は情報を隠ぺいしていると思われている。知らなさすぎることの殻を破る為の表現が演劇にはできると思っている。つまり課題を露呈すること。

明るい未来について、人を動かすものは「好奇心」と「励まし」。子供の頃から好奇心を育み、それを励ます環境を作る必要がある。


■小川智紀さん(横浜・STスポット)
理想の社会は「働かなくても食べていける社会」。自分の暮らしを安定させようとするといつのまにか競争社会に巻き込まれていることが往々にしてある。「街」とは何かを考えるとそれは「全体性」と言えるのではないか。日々、働く中で人は自分の体を切り売りして部品にして生活している。劇場のシステムもそういう分業が極限まで進んでしまい票券担当も票券のことしかわからない、でも票券で食べていける、票券のプロとして専門性を追求してきたがそれでいいのだろうか?と思う。

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