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第3回「海外進出」 ゲスト:吉井省也  (現・舞台芸術財団演劇人会議プロデューサー/在籍期間:1984年~2000年) 聞き手:山内祥子(パパ・タラフマラ制作/在籍期間:2008年~)

12.02/05

欧州はアーティスティック、北米はビジネスライク


『春昼』(1998年)

山内:で、99年の『春昼』北米ツアーが吉井さんの手掛けた最後のツアーってことになるんですかね?

吉井:そうですね。

山内:『春昼』は、小池さんがつくば市の芸術監督を務めていた時に作った作品ですね。

吉井:98年につくばで初演。その後香港・台湾を回って、翌年にアメリカ5カ所で。

山内:ロサンゼルス、コネチカット、ミドルバリー、ハノーバー、シアトル…。

吉井:そう、ロスでやってから、向こう(東)側までいって、最後にシアトルに戻ってくるんだよね。

山内:なるほど。これも、例の国際営業の成果ですか?

吉井:北米はね、ちょっと事情が違うんですよね。国際営業の成果もあるんですけど、北米の場合はね、毎年1月の頭にAPAP*4っていう集まりがニューヨークであるんですよ。

山内:プレゼンしに行くやつですか?

吉井:そうそう、プレゼンしに行くやつ。見本市ですね。つまり、カンパニーとか、エージェントなんかがブースを出展していて、それを買い付けたいプレゼンターが来て。

山内:日本で言うTPAM?

吉井:そう、TPAM。あれは、APAPを参考にしたんだと思います。日本ではなかなか根付かないんですけど、アメリカの場合は、そういうエージェントビジネスがすごく盛んで、その期間にプレゼンター達が全米から集まってくる。ニューヨーク・ヒルトンを借りきってスイートを会議用に押さえて、連日いろんなセミナーとかセッションをやってる。とにかくアメリカの舞台芸術の上演システムを知るのには一番いいところなので、定期的に行ってたんですよ。自分の興味あるセミナーに出かけていったりとか、ワーキンググループに参加したりしてたから、それでタラフマラの名前はだいぶ浸透していきましたね。タラフマラはエージェントには頼まなかったんだけど、アンクリエイティブさんが毎年出展していて、日本のカンパニーをとりまとめてくれてたのでそこに資料を預けて、一緒に売り込んだりした。アメリカはヨーロッパとはまったく違うアプローチをしなくちゃいけないんだよね。というのも、アメリカの芸術監督、劇場の企画者っていうのは、アーティストじゃないんですよ。制作者、あるいは研究者っていうタイプが多くて。ヨーロッパだと、アーティストが芸術監督になるケースも多いからアーティスティックな面が非常に重要になってくるんだけれども、アメリカの場合は、作品の根幹に関わることをビシッとビジネスライクに言ってくる感じがあって。はっきり言ってくるからね、「ちょっと大きすぎる」とか、「もっとツアーの人数減らせないか」とかさ。ヨーロッパだと「これ呼ぶんだったら、これだけの覚悟を決めて呼ぼう」っていう感じがちょっとあるんだけどね。だから、アメリカはそういう意味では行きづらい国だった。すごく時間がかかったね。

山内:なるほど。それでもツアーを実現して、このあともずっと『春昼』は続くんですよね。

吉井:ぼくが退団したあと、アメリカではかなり公演やってますよね。BAM*5をはじめとしてアメリカのトップの劇場は全部やったし。『春昼』はね、すごく難解な作品なんだよね。難解というか、外国人にとって難しい。実は今でも最初にツアーする作品が『春昼』で良かったのかなあっていう感じがちょっとあるんだけどね。でも、アジアでは圧倒的なほどの受け方をした。この違いが面白かった。

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