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「最強の一人芝居フェス“INDEPENDENT”2nd Season Selection/JAPAN TOUR」プロデューサー・相内唯史(インディペンデントシアター)後篇

11.11/01

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新シーズンに向けた目標、そして課題

――11月から3rdシーズンがスタートする

「INDEPENDENT」ですが、11年目に向けた新たな目標は?
おかげさまで今回全国を回らせてもらって、作品の評判もいいですし、一人芝居というものにあまり意識のなかった地域の人にも、「こんなに面白いなら一人芝居をやってみよう」って思ってもらえたという感触を得ました。福岡とか三重が特に顕著でした。札幌は、実はブロックさん(演劇専用小劇場BLOCH)主催の一人芝居フェスがすでにあって、システムも雰囲気も「INDEPENDENT」とはぜんぜん違うんですけども、それはそれで独自に発展されてきているので、一人芝居を創るっていう土壌はあるんです。方向性は違うけど、「INDEPENDENT」特有の面白さを札幌のお客さんにも創り手の人にも感じてもらえたと思うので、札幌ではこの両方が競い合えれば、他の地域とはまた違う展開にできるんじゃないかなあと思ってます。全国ツアーというのは、体力的な理由もあってインディペンデントシアターが単独でやっていくのはそもそも難しいことで、だから、このフェス、この仕組み、このフォーマット自体をおもしろがってもらえるなら、いろいろな地域で使ってくれたらいいなって思います。舞台のサイズとか、上演時間とか、数本がブロックになってるシステムとか、別に特別なことじゃないんだけど、結構ベストなフォーマットじゃないかと思ってるので。しかもこれまでにうちの主催の作品だけでも110本もあって、さらに今回各地域で創られたものだったり、予選に出たけど本編には出れなかったものまで加えると無限に作品があるんです。フォーマットが変わらないってことはつまり、過去に生み出された作品、未来に生み出される作品、そのすべてがライバルなんですよね。このまま続けることで、全部の作品が常に勝負しなければならない状況が生まれるっていうのが凄くいいなって思っていて、だからこのフォーマットはこれからも貫いていきたい。

――同一のフォーマットだから、地域や時間を越えて切磋琢磨していける?

もちろん、地域によって制作体制の違いとか温度差とかもあるので、一概に同じフォーマットを貫き通すのがいいとは思っていません。それぞれの地域で望まれる形で上手いこと隙間に「INDEPENDENT」が入っていけたらなって思っています。今回のツアーはそのための種巻きだと思ってたんですよね。だから、これを面白いと思ってくれた地域では後は独自に、もちろんそれをサポートしたり、一緒に盛り上げていくことはやっていきたいですけど、あんまり何もかも、プロスポーツみたいにトップダウンにするのではなくて、上手に、割りと流動性のある形で「INDEPENDENT」と連携していければいいな、と思います。それを3rdシーズンではさらに根付かせていって、それを次のセレクションツアーに向けて繋げていくのが僕の一つの役割だなと思っています。

――あえて課題を挙げるなら?

制作サイドとしては、正直なところ今は動員を出演者に依存する形になっているので、どうにかこれを解消したいと思います。「INDEPENDENT」のフォーマットで作り出される作品が面白いっていうこと自体はある程度、少なくとも関西と関東のお客さんには十分に理解してもらえたと感じているので、誰が出演しているかで観るか観ないかを決めるんじゃなくて、「取りあえずこのお祭りだけは毎年参加しておかなきゃ」って思ってもらえるような流れを作ることが課題です。そうなると制作的にもやれることが増えるし、出演者の交渉にしてもいろいろな幅を持たせて進めることができますから。

──そのためには何が必要だと考えますか?

やっぱり今回の成果をきっちり整理し直して、どういうことができて、どういうことができなかったのかを僕らだけが把握するんじゃなくて、それを表向きに出せるかどうかということが一番大きいんじゃないかと思います。

──次のツアーは、やはり5年後ですか?

実は、5年おきだけじゃちょっとダメだろうなと思ってるんです。実際にやれるかどうかまったく分からないんですけど、5年後にまたこうやって大きくツアーを回ることが必ずしも正しいのかっていうことも冷静に考えなくちゃいけないんじゃないかと。まあ単純に拡大路線を歩むことが本当に正しいのかっていうと疑問なんですよね。普通に考えればツアー箇所を増やして、よりいろんな地域に「INDEPENDENT」を持って行くことで、一人芝居が全国的に盛り上がっていければいいと思いますけど、当然小劇場の体力的な限界もあるわけで。それに、5年に一度だけだとやっぱり記憶が風化してしまうとも思うんです。5年に1回の“点”で勝負するよりも、“線”とか“面”にしていかないといけないっていうことを考えた時に、大きいツアーはなんとか5年に1回やろうと思いますけど、その間をつなぐ何かをやらなければいけないと思いました。まだ具体的なプランはないので、さすがに来年は少しお休みしたいですけど、再来年ぐらいから隔年で、間のミニツアーみたいなことをやろうかなと。少ない作品数で、今回の全国ツアーで回れていない、「この地域にも拠点があると、他の地域と繋がりがもうちょっと濃くなるんじゃないかな」みたいなところを回りたいなと思っています。たとえば今回、三重ではすごくお世話になりましたけど、東海地域ということでは、やっぱり名古屋も拠点の一つとしたいし、まだ四国に行けていないので、四国のどこか一箇所に点を打つことができたら、点と点が繋がって線になったところを面にしていったりすることができるのかなって。そういう新しい楔を2年に1回ぐらいずつ打って、5年後の次のツアーに繋げていけたら理想的かなと思います。

──金沢や新潟っていう選択肢もありますよね。

そうですね。東北にしてもまだ仙台にしか行けてないので、日本海側にも行きたいし、広島とか岡山も、現代演劇に力を入れてる人たちがたくさんいますし。今回候補には上がったけど行けなかったところとか、お話自体はしたところとかがあるので、そういうところはタイミングを見つけて繋がっていきたいなと考えてます。

取材・文/郡山幹生


■取材後記■
相内さんへのインタビューは、激動の沖縄公演から僅か1週間後。件のフェリーに置き去りにした機材車輌を受け取るため、他のメンバーより遅れて帰阪したばかりのところを直撃した。「未だ興奮さめやらぬ」は、寧ろ私の方で、相内さんは実に淡々とした調子で、全国を巻き込んだ、地方小劇場の主催事業としてはあまりにもアグレッシブといえる一大プロジェクトを回顧した。劇的な展開となったアクシデントを自らのミスだと反省し、頻りに自分をサポートしてくれたスタッフ、キャストたちを賞賛していたのが印象的。休む間もなく今月幕を開ける『最強の一人芝居フェスティバル“INDEPENDENT”』の新シーズンに期待したい。

■相内唯史(あいうち・ただし)■
北海道札幌市生まれ。大学進学で関西へ。在学中は映像や音楽イベントに多数関わり、2000年 in→dependent theatre 劇場プロデューサーに就任。舞台衣装デザイナーによるファッションショーや、2劇場の連動で街自体を劇場化するなど、挑戦的でコンセプチュアルな劇場プロデュースを多数企画製作。特に看板企画であり10年110作品の歴史を誇る最強の一人芝居フェス「INDEPENDENT」は、2011年夏に7都市を巡る全国ツアーを敢行し、各地で大きな熱狂と感動を巻き起こした。クリエイターとしても映像やデザインで様々な作品に参加。関西在住の某ライターから「止まると死んじゃう生き物」とコピーを付けられほど、常にアグレッシブに活動を続ける。

■インフォメーション■

インディペンデントシアタープロデュース「最強の一人芝居フェスティバル“INDEPENDENT:11”」
【日程】2011年11月24日(木)~27(日)
【会場】in→dependent theatre 2nd
【公式サイト】http://i-theatre.seesaa.net/

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