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「最強の一人芝居フェス“INDEPENDENT”2nd Season Selection/JAPAN TOUR」プロデューサー・相内唯史(インディペンデントシアター)後篇

11.11/01

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⇒ インタビュー前篇はこちら

    不幸にも大地震と巨大台風という、2つの天災に行く手を阻まれ、困難を極めた『INDEPENDENT』全国ツアーだったが、地域やカンパニーの枠を超えて生まれた固い絆で奇跡と感動のファイナルを引き寄せた。長いツアーの果てに、いつしか文字通り“最強”となったチームを率いたプロデューサー・相内唯史が考える、これからのこと。

    最大のアクシデントに遭遇した、沖縄の地で感じたこと


    沖縄公演にて

    ――さて、それでは非常にドラマチックだったツアー最終地沖縄のお話を。

    これはですね、僕としては、変な話、凄くドラマチックだったから美談のように語られてしまうのは確かに嬉しいんですけど、はっきり言ってしまえば、制作的なミスだと思うんですよね。本当はそのリスクを回避する策をとっていれば起こらなかったことだとは思うので。だからってまあ、カーゴに載せて空輸してしまえば、とか他の代替手段を考えはしたけど、ツアー全体を考えるとどうしても予算に見合わなかったんですよね。だから、日程的にも予算的にも物理的に今の僕らに出来る選択肢としては、もうあれしかなかった。ただまあ、力のあるプロデューサーだったらきっと最初から違う手を打って防いでいたんじゃないかと思うので、これは僕の反省にしようと思っています。でも、今自分に出来ることに全力を尽くしたつもりなので、後悔は一切してませんけど。

    ――事の顛末を綴られたブログを拝見して、思わず泣いてしまいました(笑)。なんか相内さんの奮闘そのものがまさに“最強の一人芝居”じゃないかって思うんです。プロデューサーという仕事の要素が、この1週間に思いっきり凝縮されていると感じます。奇跡的に幸運だったこともいっぱいなんですけど、それも何だか相内さんのパーソナリティーが引き寄せたように感じました。フェリー会社の方が奇跡的に親切だったりとか(笑)。

    いや、本当にあの方は今回のキーパーソンでした(笑)。どんなことでも努力だけではどうにもならないってことってあるじゃないですか?そんな奇跡の一つがフェリーの方に助けてもらったことだと思うんですよね。言葉にしちゃうと凄く陳腐ですけど、芝居やってる理由って、どんな人と出会って、どんなつながりになって、それが実を結んでいくかってことしかないと思うんですよね。それは、創り手だけじゃなくてお客さんやそれ以外の人も含めて。もしもフェリー会社の方が規則に厳しい頭の堅い方だったら、「規則は規則だ」ってそのまま突っぱねられてそれで終わりだったかもしれないし、乗船時に渡された部屋割り通りに4人部屋で他の乗客と相部屋だったら、あんなに自由に仕事が出来なかったので、あそこまで行ってなかったかもしれないし。

    ――相内さんの到着が開演までに間に合ったのが凄く大きかったと思うんですよ。上演決行を決めるまでの動きも、もちろん凄かったんですが、ただ最終的にあの場(本番直前の劇場)に相内さんがいたってことで公演全体のステージがグッと上がったのは間違いない。「一人芝居」っていう、上演スタイルとしては最もシンプルな形態のものが、全国を回って、最後にはあんなにも大きなうねりみたいなものを生み出せた要因は、そこなんじゃないかと。

    僕が船の上からできることは、結局「こうしたい」とか「こうするべき」だとかを伝えることしかなくて。最終的に準備をしてくれているのは技術スタッフだったり、制作スタッフだったりするので、ひと通りの決断をしたあとで僕に出来る最後の仕事って何かな?って考えました。札幌チームがちゃんと到着してくれさえすれば幕は開くだろうし、作品のクオリティも多分心配はないだろう、と思っていたので、僕のやれる仕事はほとんど終わったけど、あと1つだけできることと言ったら、何とかして劇場に辿り着くことだな、と。今はきっと、みんなが全力で立ち向かってるだろうから、表には出てないかも知れないけど、やっぱり絶対にみんな少なからず不安な気持ちを抱えた状態で舞台に立つことになるだろうし、だから、せめてテンションを上げてあげられるような状況を作りたい、僕にはもうそれしかできないだろうなって思いました。

    ──今回のツアーで回った他の地域と較べると、沖縄の演劇文化ってはっきりと見えてこない部分があるのですが、実際に公演をしてみてどのように感じましたか?

    結論から言うと、多分そんなに変わらないと思います。沖縄で一番特徴的なのは、伝統芸能というか、沖縄舞踊みたいなものがすごく強い。だから基本的に芸事、つまりアートだとかエンターテインメントだとかに対する理解度がかなり高い。ただ、その伝統芸能的なものがあまりにも強すぎて、現代演劇に対する理解や興味はちょっと薄いんですよ。だから、それを観に来てくれるお客さんも数に限りがあるし、観客層的にはやっぱり結構厳しいと感じました。演劇人口は多分、県全体で、地方の中~大都市ぐらいのレベルなんじゃないでしょうか。でも人数が少ないことによるメリットもあって、現代演劇をやっている殆どの人の顔が見えている状態で活動できているので、それは多分、これから発展していく過程ではすごく有効なことだと思います。お互いに連動、連帯して共に成長していこう、そして、沖縄で現代演劇を根付かせていこう、という流れがあるので、僕らもそれにすごく助けられました。沖縄現代演劇協会っていうところがあるんですが、最初にそこの理事長さんと話しをさせてもらって、作品製作を依頼する創り手や劇団を紹介していただきました。なので、つながりを作りやすい土壌みたいなのは今すごくあると思います。

    ――創り手のレベルは?

    沖縄の人たちって表現力豊かで達者な方がとても多いので、俳優や演出家には多分そんなに困らないのかなって感じました。ただ、これは現地の方に直接言われたことなんですけど、作家は不足してるそうです。だから、面白い本を量産できないって。まあ、量産する必要もないんじゃないかな、それはそれでレパートリー化したり丁寧に作り込んでいったらいいんじゃないかな、とも思うんですけど、新しく面白い本を作っていくことができないので、そこが悩みどころだと言っていました。実は沖縄のお客さんって、再演に興味を持ってくれないんだそうです。大阪だと再演するほど質が安定していて評判が良かったものなんだろうっていうふうな受け取り方をされますけど、沖縄では、「あ、前観たからいいや」みたいな感じになっちゃうんですって。空気的に。だからやっぱりどんどん新作を作って行かないとお客さんが離れちゃうんだけど、それが難しい。ある程度書ける作家さんが固定されちゃっていて、その作家さんがどの劇団にも書いていたりするから、劇団ごとのカラーの差別化を図っていくのが難しいというのが悩みらしいです。だから、そのお話を聞きながら僕が思ったのは、例えば大阪って本を書く人はいっぱいいるんで、その中でこれ面白いなって思えるものを「こんな戯曲ありますよ」って沖縄の創り手の人に紹介したりするのはどうかなって思っていて、そういうことから、劇団同士の交流とか、滞在制作みたいなことができれば面白いかなって。

    ──レジデンスってことですね。

    そうですね。レジデンスはしやすい環境にあると思うんですね。気候的なこととか、気持ち的なことも含めて。課題となるのはスタッフの技術力。これは正直なところツアー全体でも感じたことですが、もちろん現地の一線級のスタッフさんはそんなことはないんですけど、平均的なスタッフワークのレベルとなると、特に小劇場レベルでは関東や関西とはすごく開きがありますね。スタッフワークのレベルをもう一段上げられないと、地域の小劇場ではなかなか良い芝居を作れないよなっていうのがあります。沖縄に関しては、プラス制作体制ですね。とにかく、お互いに足りないところを補完し合えれば、もっと新しい関係でモノづくりが一緒にできたりするんじゃないかなって思ってます。

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