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週替わりで刻むビートは「チラシ」の常識を変えるか「CHITEN BEAT」

14.10/23

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劇団のブランディングとしての〈BEAT〉

1号 5号 8号 9号

〈BEAT〉左より1号・5号・8号・9号

〈BEAT〉は松本さんによるアートディレクションで展開している。公演告知には舞台写真だけでなく、オフショット写真も多用し、これまであまり表に出してこなかった俳優たちの素顔を存分に見せている。さらに劇団代表の三浦基さんや、制作の田嶋さん、小森さんのコラムなども掲載、公演単体の情報も盛り込みながら、劇団としての活動紹介にもなっている。01号から最終号までコンプリートしたくなる内容だ。

ただ、〈BEAT〉にはいわゆる「公演チラシ」とは大きく異なる点があった。公演日程や会場の記載はあるものの、号によっては開演時間など「チケット購入を検討する上で必要な情報」が掲載されていないこともあるのだ。十分な公演情報が得られない〈BEAT〉では、券売へとつなげていくことは難しいのではないか。

「情報が少ないのは、映画のチラシを参考にしたんです」と田嶋さんは説明する。「映画のチラシって、上映時間も映画館の地図も載っていないことも結構ありますよね。これだけスマホも普及している今、微に入り細に入りチラシに全部を載せなくてもいいのかなという気もして。何を載せるかは松本さんと相談しながら決めました。(劇場の制作担当である)あうるすぽっとの中川(歩美)さんやKAATの伊藤(文一)さんも、〈BEAT〉を劇団のブランディングの一種として受け止めてくださいました」。

とはいえ、「このチラシがお客さんにどういう風に受け止められているのかわからなくて」と不安な表情ものぞかせる。「近しい人からは『毎週見てるよ』と言われたり、あうるすぽっとに『〈BEAT〉をください』といらした方もいると聞いたりはしましたけど。実際の効果は1年たってみないとなんとも言えないところですね」。
 

地点よりも、「演劇がおもしろい」って思ってもらいたい

10-2 16号 17号 19号

〈BEAT〉左より10号(裏)・16号・17号・19号

今後はもっと戦略的に〈BEAT〉を配布していきたい、と田嶋さんは語る。「例えば『今週はこの公演で配る』というのが決まったら、文章の内容やデザインを配布先の公演にあわせたり、〈BEAT〉の内容を練ることができると思うんです」。

〈BEAT〉が配布される公演や客層に応じて内容に変化をつけることは、毎週発行する〈BEAT〉だからこそできる戦略であり、チラシの訴求力を高めることでもある。それは観客の興味の対象を「地点」というひとつのカンパニーだけでなく、配布先の公演やそのカンパニー、さらには劇場へと拡げていくことにも繋がっていく。「地点がおもしろいというよりも、演劇がおもしろいって思ってもらいたい」、そう田嶋さんは言う。

「映画に比べて演劇の方がチケット代は高いし、わざわざその劇場に行かなければ観られない。演劇は映画よりもハードルが高いと感じる人は多いと思うんです。しかも『これだ!』と思える演劇作品にはなかなか出会えないし、出会ったとしても見返すことができない。あと、演劇はハイコンテクストというのもありますよね、慣れないと見えてこないものがある。それで1、2回観に行って『別に演劇は観なくてもいいかな』と思われるとちょっと残念だなという気がして。演劇が市民権を獲得していない以上、〈地点の『コリオレイナス』必見!〉というコピーで興味を引くというよりも、劇場がおもしろいからつい通ってしまう人を増やす方に力を注ぐべきかなと」。

「本当は、」と田嶋さんは続ける。「劇団のファンを増やしていくというよりも、劇場にお客さんがつくべきだと思っています。劇場に固定ファンがついてくれたら、いろんなカンパニーの作品を観る人が増えて、舞台芸術の可能性も広がるような気がします。……将来的には、(地点のアトリエ)アンダースローより大きい劇場で、劇場文化を育てていくという仕事がしたいですね。アンダースローの発展版、みたいな感じで」。

6月から3月までという「CHITEN BEAT」プロジェクト、これからが折り返しだ。

「最後までできるかどうか、見守っていてください(笑)」。


固定観念にとらわれず、そして「やるなら楽しく」という遊び心も忘れず、「公演単体の宣伝」と「劇団全体の宣伝」という二つの意味から「CHITEN BEAT」を展開する地点。そこには劇団という枠を越え、舞台芸術全体の活性化という広い視点があった。新しい演劇支援の方法「カルチベート・チケット」や、舞台作品を観ることの魅力を伝える「カルチベート・プログラム」といった地点独自の企画も、演劇全体の土壌を厚くしたいという気概の表れだ。地点が放つ「点」と「点」、それらを結んだ線は、舞台芸術の未来へと続いていくだろう。

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