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秦組の「稽古場の全日程無償開放」というチャレンジ

15.01/27

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秦組の「稽古場の全日程無償開放」というチャレンジ

秦藤野

 
昨年の11月、劇団「秦組」が、稽古初日から小屋入りまでの約1か月間、その全日程を一般の方に公開するという試みを行った。大手芸能プロダクションの所属タレントも出演するプロデュース公演での、「全日程の稽古場開放(無償)」というチャレンジはどのようなものだったか。劇団主宰で作・演出の秦建日子さん、制作担当の藤野和美さん(株式会社オフィス・REN代表)に、公演終了後1か月を経て、改めてお話を伺った。(編集部:芳山徹)

<公演概要>
劇団「秦組」vol.6『くるくると死と嫉妬』@あうるすぽっと
(2014年12月3日~11日、全14公演)
キャスト:新垣里沙(「モーニング娘。」元リーダー)、丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)、吉川友(アップフロントクリエイト所属)他

<企画実施の経緯>
■公演実施の決定後に様々なアクシデントが生じ、集客面で非常に苦戦する中での施策であったという。切迫した状況の中で、秦さんのアイディアとして突貫工事的に走らせた企画であった。

 

入りのテンションが高まり、稽古が速く進んだ

同企画が開示された秦組blog上(10/24付)には、その目的として「(ファン対象のイベントではなく)演劇作品にとって効果のある新たな宣伝手法」の模索であることと共に、「演出家や役者にいい意味の化学反応が起きる」ことへの期待もコメントされていた。

-いきなり直球の質問ですが、やってみていかがでしたか?

秦建日子さん

秦:一言でいうと『さぼれなくなる』(笑)。稽古場の雰囲気もテンションもあがらないから、今日は早く終わろうか、ということが普段の稽古中には何度かあるのですが、そんな甘えたことはもちろん言えず、日々本番のような緊張感がありました。入りのテンションや集中力にはっきりと影響力があって、役者も私もエンジンのかかりがよく、「こんなにも速く稽古っていうのは進んでいくのか」と驚く程でした。これまでの稽古は若干密度が薄かったのではないか、とも考えてしまった程です。

藤野:見学いただいた方の感想が、予想よりプラスな内容が多かったので、そういう意見を(まったく関係性のない方から)前もって聞けるというのが、役者にとっては大きかったように思います。とかく役者は不安になりがちだと思うのですが、本番に向けての自信につながったようです。その点では、成果があったと感じています。

◇ 皆さんの感想まとめ(秦組blog:スタートから数日の時点)
 

約1か月間で計108件の見学対応に追われた

-応募はどれくらいありましたか?

藤野和美さん

藤野:計300件超のご応募がありました。1日5人の抽選を行い、約1か月間で計108件(60人超、複数回当選の方あり)の見学を頂きました。最初はファンの方たちも(稽古見学について)半信半疑だったようなのですが、ツイッター等で感想がアップされるに伴って「そんなにリアルに見られるのか!」と、一挙にエントリーが増えました。運用面では、誓約書に署名頂くこともそうですが、様々なリスクを想定して対応策を講じていました。(感想コメントの発信が前提だったこともあり)エントリー頂いた方のSNSの利用状況を事前に確認するなど、日々の対応に追われていました。

<運用方法の概要>
・希望者はメールのみで受付、希望者多数の場合は抽選。
・見学は指定時間(約2時間)のみの限定。
・稽古場所の他言・写真撮影・出待ち・手紙/プレゼントなどの禁止厳守、(誓約書に要署名)。
・見学者はBlog・Twitter・Facebook等でのコメント発信が必須。

 

-編集部も稽古場に伺いましたが、見学の方々にも緊張感がありました。

藤野:見学する方にも(作り手側から)『見られてる感』があったのでは(笑)。見学後の反応としては、はじめての体験で面白かった、という意見が非常に多かったです。出演者のマネージャーさんからも「稽古場って面白いよね」と言われて、新鮮に楽しめるんだなと、改めて実感しました。それとこれは余談ですが、女優さんが稽古場にすっぴんで来ることが出来ないのが、少しかわいそうだったかも(笑)。

-集客面での成果はいかがでしたか?

秦:どれくらいプラスになったかは、正直分からないです。「雪だるまが転がるように評判が広がっていけば」と期待していたのですが、5人くらいの見学がやっとの稽古場だったので、最初の球が小さすぎた(苦笑)。例えば20人とか入れるスペースを確保してやっていれば、ずいぶん違っただろうとは思います。

-今後についてはいかがでしょうか?

秦:作品の良し悪しとは関係ないところでチケットが動く、そういうことばっかりになると嫌だな、テンションがあがらないなと感じていて。そのことに抗っていくアイディアの一つとして、「稽古場開放」というのは機能する可能性があるのでは、とは感じました。自分が主宰で、かつフルタイムで演出するという公演であるならば、出来れば今後もやりたいと思っています。
 


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