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「スイッチ総研」が渾身の“演劇の力”を発揮。密着レポート「六本木アートナイトスイッチ」は×∇〇だ!?
4月末に行われた「六本木アートナイト2015」において、公募プログラム「六本木アートナイトスイッチ」が渾身の“演劇の力”を発揮して見せた。1月の公募プレゼンでの、アーティスティックディレクター日比野克彦氏の「24時間、続けてはやれないかな?」という投げかけに、出演者96人を動員して答えてみせた、「スイッチ総研」の宴(うたげ)をレポートする。(編集部:芳山徹)
六本木アートナイトは、国立新美術館/六本木ヒルズ/東京ミッドタウンを中心エリアとして、多くの来場者がエリア間を回遊する都市型アートイベント。コアタイムを「日没から日の出まで」とする、一夜限りのお祭りでもある。
「スイッチ総研」は、劇団ままごとが小豆島や象の鼻テラスで滞在制作を行ってきた「スイッチ演劇」(以下『スイッチ』)をきっかけとして、俳優の光瀬指絵さん(ニッポンの河川:画像右)と大石将弘さん(ままごと/ナイロン100℃:画像左)が今年1月に立ち上げた新団体。同催事の公募企画「オープンコール・プロジェクト」にエントリーし、審査員を檀上に巻き込む爆笑の公開プレゼンの結果、採択された。
『スイッチ』とは、紙に書かれた指示を通りすがりの人が実行する(=スイッチを押す)と、短い仕掛けが発動するというもの。例えば、台座の上に置かれた“あかべこ”の首をゆすると、目の前のベンチに座って電話をしている人(役者)が、「そうそう」「うんうん」と頷く、といったもので、単体では微笑ましくもシュールな寸劇だ。
(↓上演エリアMAP・クリックで拡大)
「六本木アートナイトスイッチ」は、4月25日(土)13時から翌日18時までの(早朝5時間の無人対応時間を除いた)計24時間のロングランを、キャスト総勢96人で達成してみせた。演目数は63件、スイッチの総設置回数(※)は140件!スイッチは何度も何度も押されるため、すべての上演合計回数はなんと約6,000回にも達した(スイッチ総研概算)という。
※同一演目でも、時間帯や場所が変わる度にカウント
□本部ラピロス六本木:スイッチ数:1~5、演目数:11(シフト体制で随時、26日の早朝4~9時は無人対応)
□国立新美術館:スイッチ数:7、演目数:9(25日17:00~/23:00~ のそれぞれ45分)
□六本木商店街:スイッチ数:11~12、演目数:15(25日18:30~/21:30~ のそれぞれ45分)
□予約制ツアー:スイッチ数:13、演目数:13(25日20:00~21:00/24:00~25:30)
□六本木ヒルズ:スイッチ数:5~7、演目数:15(25日20:00~/26日1:30~・3:00~・14:30~ のそれぞれ45~60分)
出演者の内訳は、総研の光瀬さん、大石さんおよび「総研からの出演要請による、主に演劇関係者」65人と、「一般公募の参加者」30人だ。「一般公募」では、アートナイトのリピーターやフラッシュモブ好きなど、演劇関係者ではない人たちも参加した。その事前説明会(3回開催)で語られたスイッチ総研のコンセプトを、まずはかいつまんで紹介したい。
象の鼻テラス(@横浜市「象はすべてを忘れない」)や小豆島(@香川県「アート小豆島・豊島2014」)での滞在制作において、普段の公演のお客さんとは異なる人たちに向けて、“役者である自分たち”には何が出来るだろう?」と考えて、「演劇の押しつけがましさを無くす」仕組みとして編み出した。
⇒ スイッチを押してもらうのは、お客さんに「演らしてもらってよいですか?」という了承を得ること。そこからコミュニケーションがはじまる!
<『スイッチ』とは>
お客さんと演者との間に、その場限りの“舞台と客席”を立ち上げること。
⇒ お客さんの只一人にも、気まずさ・恥ずかしさ・不便・不快感を感じさせないことが大前提。一番シャイな人に合わせるのはもちろん、自分とは全く異なる快・不快の感覚の持ち主のことを全力で想像し、配慮する。