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週替わりで刻むビートは「チラシ」の常識を変えるか「CHITEN BEAT」

14.10/23

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週替わりで刻むビートは「チラシ」の常識を変えるか「CHITEN BEAT」

京都を拠点に活動する劇団「地点」が、2014年6月より取り組んでいる「CHITEN BEAT」。劇団の活動を伝える文章と写真を掲載したチラシ〈BEAT〉を毎週作成し、東京・神奈川をメインに配布、かつチラシ画像をインターネット上にアップしていくというこのプロジェクトは、2015年3月までの40週に渡り展開される。インターネットが普及し、「紙」という宣伝ツールが問われつつある今、なぜこのような企画を立ち上げたのか。地点制作の田嶋結菜さんに話を聞いた。(編集部:大澤歩)

■地点(ちてん)
多様なテクストを用いて、言葉や身体、光・音、時間などさまざまな要素が重層的に関係する演劇独自の表現を生み出すために活動。演出は劇団代表の三浦基が手がける。2005年に東京から京都へ移転。2006年に『るつぼ』でカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞を受賞。2007年より<地点によるチェーホフ四大戯曲連続上演>に取り組んでいる。2013年、本拠地京都にアトリエ「アンダースロー」をオープン。
http://chiten.org


chiten_ms_tajima■田嶋結菜(たじま・ゆうな)
地点制作。1980年神奈川県生まれ。
国際基督教大学(ICU)卒業後、青年団・こまばアゴラ劇場に勤務。アトリエ春風舎のこけら落とし作品として上演された『三人姉妹』(2003年)以降、すべての地点作品及び三浦基演出作品の制作に関わる。2005年、地点の制作者として演劇活動の拠点を京都に移す。2007年までの京都芸術センター勤務を経て、地点の専属制作者に。

 

これまでの広報宣伝とは違うことを

「実は今、予定より遅れてしまっていて大変なんです」。そう言いながらも楽しそうな表情を見せる田嶋結菜さん。週替わりのチラシを40週間配布するという挑戦的なプロジェクト「CHITEN BEAT」は、まさにビートを刻むように次々と新しいチラシを生み出している。

チラシに深い思い入れを持っている劇団──。そんなイメージを抱いたが、これまでの活動の中で、チラシ折り込みを行わない時期もあったという。劇団の成果を単発の作品単位で測らず、劇団が継続して活動すること自体を「作品」として捉え評価していく地点にとって、チラシは必ずしも必要なものではなかった。「でもそれは京都という町の規模だからできたこと。京都は町全体をひとつのメディアとして捉え、公演のお知らせをしていくということが可能な場所なんです」と田嶋さんは言う。

一方で、公演単体の宣伝ツールとして、特に関東圏での公演ではチラシの存在も重視していた。「東京は京都とは町の規模が全然違うし、東京での演劇の宣伝では『チラシ折り込み』を抜きにして考えられないのが現状だと思っています」。

2014年度、地点は横浜で2回、東京で1回の公演を行う(※)。これらの宣伝のためにチラシは作る。が、「これまでとは違うことをしたい」、田嶋さんはそう考えていた。

※横浜公演…KAAT神奈川芸術劇場『光のない。』(2014年10月)・新作『三人姉妹』(2015年3月)/東京公演…あうるすぽっと『コリオレイナス』(2014年8月)
 

劇団の活動情報を“チラシ先行”で知らせる

ではどのようなチラシであれば、「地点」という劇団の魅力を伝えることができるだろうか。田嶋さんは、デザイナーの松本久木さんや、制作のパートナーである小森あやさんと話し合いを重ねた。「チラシ1枚の中に公演情報をすべて掲載しようとすると、載せられる情報の質というのは決まってきちゃうんですよね。公演概要と企画を手短に説明した文章と、劇評を載せて……みたいな」。しかしそれでは「最新情報は、SNSなどのインターネットで発信する」というこれまでの手法を踏襲することになる。

田嶋さんらは発想の軸を変えた。「劇団の活動情報を、“チラシ先行”で知らせていくようなことができたらいいんじゃないか」。

そこから生まれたのが「『かわら版』のような週替わりのチラシを作る」という案だった。「とにかくチラシをバラまくっていうことを逆手にとったら面白いんじゃないかと。刷り上がったそばからチラシを小脇に抱えて走って配るような(笑)。チラシ折り込みをしなければいけないんだったら、配ること自体が楽しくなるようなチラシのあり方を試してみようと思ったんです」。

週一回発行される〈BEAT〉では、手軽に印刷できるインターネットの印刷通販を活用した。短期間で刷り上がる〈BEAT〉には常に「今」の劇団情報が掲載されており、「チラシでは最新情報は入手できない」という概念を覆した。さらにtumblrを利用、チラシの発行とともにチラシ画像をインターネット上にアップすることで、劇場以外で〈BEAT〉が届く状況を整えた。結果として、それはアーカイブとしての役割も兼ねることができた。

こうして地点の新たなプロジェクト「CHITEN BEAT」はスタートした。

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