制作ニュース

小室明子の「北国の劇場から」Vol.6

13.07/10

北海道札幌市にある劇場「コンカリーニョ」の演劇プログラムディレクター、小室明子さんの連載コラム。第6回は「札幌公演をお考えの劇団制作者の皆様へ」…6月下旬、コンカリーニョでは2週に渡り、道外カンパニーの演劇公演が行われました。一つは、ハイバイ(東京)「て」、もう一つはオイスターズ(名古屋)の「日本語私辞典」です。いずれも、以前に紹介した道外カンパニー限定の劇場費無料プランに応募いただいたコンカリーニョ提携公演です。札幌公演をお考えの劇団制作者の皆様へ


6月下旬、コンカリーニョでは2週に渡り、道外カンパニーの演劇公演が行われました。一つは、ハイバイ(東京)「て」、もう一つはオイスターズ(名古屋)の「日本語私辞典」です。いずれも、以前に紹介した道外カンパニー限定の劇場費無料プランに応募いただいたコンカリーニョ提携公演です。

コンカリーニョでは上記の提携公演プランがあります。劇場費を無料にするだけで、遠く北海道まで公演に来てくれる劇団があるんだろうか、と最初は不安でしたが、昨年度公演分は10件の応募があり感激しました。
札幌ではほかに、シアターZOOでコンカリーニョが始める以前から、【Re:Z】という道外カンパニーは劇場費が無料になる提携公演を行っています。
☆シアターZOO 【Re:Z】について
http://www.h-paf.ne.jp/ogist/teikei/index.html

劇場費が無料になり、かつ、最近ではLCCのおかげで移動経費がぐっと少なくなったこともあり、このところ、東京に限らず道外の劇団の来札公演も増えてきているように思います。

何を目指して札幌で公演を行うのかはカンパニーによって違うと思いますが、最も気になるのが集客だと思います。以前もこのコラムで書いたように、札幌の劇団の平均集客数が300〜400人で、やはり手売りが多いというのが現実です。残念なことに、テレビ、ラジオ、雑誌等のメディアで小劇場の演劇公演情報が取り上げられることはほとんどなく、タウン誌の小さな公演情報ページか、新聞の夕刊で紹介されるくらいです。劇場でも顧客への告知、公演の折込、マスコミ各社への情報送付等は行いますが、それだけではなかなか客席はいっぱいにはなりません。

6月22日、23日に行われたハイバイ公演は、2ステージで約350人という、札幌の劇団の平均集客数と同程度のお客さんを集めて帰っていきました。作品の評判は言うまでもなく、岩井さんの岸田戯曲賞受賞、映画出演など話題性もありましたが、それでも発売からすぐにソールドアウト、というわけにはいきませんでした。チラシが届いたのは公演日の3ヶ月前、4月のチケット発売後も、しばらくは週に1桁ずつの伸びで、制作の皆様にずいぶんと気苦労をおかけしたことと思います。どこの地域も同じだと聞きますが、最近は直前にならないとチケットが動かず、難儀しています。
ハイバイは、公演の2ヶ月前に岩井秀人さんが来札し、ワークショップと情宣活動を行いました。前述したように、取り上げてくれる媒体は多くはありませんが、事前にいただいていた「て」のDVDを取材前に新聞社、タウン誌の方に観ていただきました。北海道新聞の記者さんが大変作品を気に入ってくれて、東京まで公演を観に行き、インタビューとともに劇評を掲載してくれました。公演の10日ほど前に掲載になりましたが、記事がいつになく大きく、大変な反響で、この日は夕方から立て続けに10件を越える問い合わせがありました。結局、人を動かすのは作品の力なんですね。ここから一気に券売が加速するものの、ソールドアウトとは行かずに初日を迎えましたが、早めの広報で情報が回っていたせいか、当日券のお客様が多くいらっしゃいました。芝居の評判も出た2日目は20名を越す当日券のお客様がいらっしゃいまして、通路も全て塞ぐほどの超満員でした。あくまでも私の感触でしかありませんが、札幌の劇団の演劇は観なくても東京で話題の劇団だと劇場へやってくる、という層もいるようです。


コンカリーニョで行われたワークショップの模様。

ハイバイ「て」公演情報掲載記事
北海道新聞夕刊、タウン情報誌「O.tone」

翌週のオイスターズも4カ所ツアー。「日本語私辞典」という、演出家コンクールで最優秀賞を授賞した作品でした。
オイスターズは、昨年、「劇王」の繋がりで札幌市教育文化会館が主催している教文演劇フェスティバルの中の短編演劇祭に出場。そこで話題となったことと、「劇王」で共に戦った札幌の劇団イレブン☆ナインが全面的に協力してくれたこともあり、ハイバイのようにはいきませんでしたが、なんとか形になるくらいの集客はできました。打ち上げ等でも、それぞれの地域のことや演劇のことなど語り合い、お互いに大きな刺激を受けたのではないかと思います。


オイスターズ・平塚直隆さんとイレブン☆ナイン・納谷真大さんによるアフタートーク。
イレブン☆ナインの皆様には、宣伝から仕込み・バラシ、受付手伝いなど、多方面に協力いただきました。

このように、WSを行う、ショーケースイベントに参加する、など、公演の前に地元に協力者を得る機会を作っておくことがかなり重要なポイントだと思われます。札幌演劇シーズン、各劇場の努力で徐々に観劇人口も増えてきてはいますが、まだまだ口コミ、知りあいの勧め、というところに頼らざるを得ないのが札幌の現状です。
コンカリーニョでは2年続けて、演劇では東京の劇団1本、地域の劇団1本が提携公演になりました。偶然ではありますが、これはなかなかいいバランスだと思っています。東京の劇団には、日本の先端をいく演劇表現を札幌に紹介してくれることを、地域の劇団には地域であることを言い訳に出来ないような作品を札幌の演劇人たちに見せてくれることを願っています。来年度公演分の募集は9月中旬頃に開始する予定です。問い合わせ等も随時、受け付けておりますのでお気軽にどうぞ。

余談ですが。
コンカリーニョレジデントカンパニーのintroが7月19日(金)〜21日(日)、王子小劇場にて東京公演を行います。intro、札幌では珍しく真面目に現代演劇を創作しているカンパニーです。札幌の演劇にご興味のある皆様、ぜひご来場下さい。

☆公演情報
http://en-geki.blogspot.jp/2013/04/introthe-cassettetape-girls-diary.html
☆札幌公演の感想まとめhttp://togetter.com/li/529096


■小室 明子(こむろ・あきこ)■
1974年生まれ。札幌市出身。コンカリーニョ演劇プログラムディレクター。大学在学中に演劇と出会う。大学卒業後、タウン誌の編集者などを経て2001年に上京。東京ではフリーライター・エディターとして生計を立てつつ演劇の世界もうろうろ。2006年、fringe主催の「PmP2006」に参加したのをきっかけに、2007年4月に札幌へ戻り、以来、NPO法人コンカリーニョに勤務。札幌演劇の活性化、演劇人の実力の向上を願い、他地域の劇団などとの交流企画や演劇祭、在札劇団の道外公演のプロデュースなどを行っている。


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