制作ニュース

小室明子の「北国の劇場から」Vol.11

13.11/28

北海道札幌市にある劇場「コンカリーニョ」の演劇プログラムディレクター、小室明子さんの連載コラム。北海道文化財団と北海道舞台塾


北海道文化財団と北海道舞台塾

11月1日から始まった札幌劇場祭も公演日程は終了し、3日の公開審査会を残すのみ。今年もなかなか見応えのある作品揃いだったようです(私はプロデュース公演をやっていたのもありほとんど観られませんでした…)。3日の公開審査会はUstream中継もありますので、お時間のある方はぜひご覧ください。
こちらのページで近々詳細公開します→http://s-artstage.com/2013/tgr2013/

今回は、公益財団法人北海道文化財団と、文化財団を中心に行われている事業「北海道舞台塾シアターラボ」についてご紹介します。北海道文化財団は、平成6年に「新しい地域文化の創造とすべての道民が文化の恵沢を享受することのできる生活文化圏づくりに資するため」設立されました。広い北海道、札幌とその他の地域では文化芸術に触れる、関わる機会に大きな格差があります。全国を例にとれば、東京とその他の地域(関西圏除く)くらいの差です。そんな中で、各地での創造に関わる事業、鑑賞機会の拡充に関する事業、道外・海外公演または道外・海外カンパニーの招聘をサポートする文化交流促進の事業など、多面的に北海道の文化芸術振興を担っています。
 その事業のひとつに「北海道舞台塾」があります。これは文化財団と北海道で組織する実行委員会を主催に、舞台公演の創作と、地域創造活動の推進として札幌劇場祭大賞公演などを道内の他の地域で公演する事業です。舞台創造活動では、かつては大掛かりな舞台作品創作を行っていましたが、ここ数年は地元の演劇人の育成にも重点を置き、道外で活躍する劇作家・演出家をドラマドクターとして招いた作品創作を行っています。2011年度に上演されたintro「言祝ぎ」(ドラマドクター・畑澤聖悟さん)は、来年1月スタートの札幌演劇シーズン2014-冬で上演されることになりました。昨年度からは2カ年計画で、「シアターラボ」という名称で札幌、深川、函館、士別でそれぞれ進行中です。

札幌の演劇人を対象にした「シアターラボ札幌」では、ドラマドクターにままごと・柴幸男さんと飛ぶ劇場・泊篤志さんを迎え、柴チームがintroの劇作家・演出家、イトウワカナが、泊チームは若手の劇団アトリエの劇作家、演出家・小佐部明広が参加しています(不肖・私もコーディネーターを勤めさせていただいております)。

1年目の昨年度は、それぞれの課題を設けてプレ公演として上演。柴チームは、introの劇作家、演出家のイトウワカナと柴さんが同年代ということもあり、イトウワカナ作の20分ほどの戯曲「鈴木14世」を、introチームとままごとチームで連続上演しました。比較することから自分たちの問題点をもう一度洗い出すのが目的です。比較される、というのは実力の差が白日のもとに晒される訳ですから、かなり精神的にもキツい出来事だったろうと思います。直前に札幌で行われた「朝がある」公演を観てしまったせいもあり、俳優たちにとってもハードな体験だったようです。
こちらのブログにイトウワカナによる振り返りがございます。

今年度の「鈴木14世」はプレ公演とは全く違う話になり、出演者も5人で進んでいます。柴さんも書かねばならない台本があるということで、締切を同じにし、励ましあって書き進めています。「教える・教わる」の関係ではなく、「ともに悩む」というやり方ですが、このチームにはこのやり方が上手く作用しているようです。

写真は大石将弘さん(ままごと)、石橋亜希子さん(青年団)が出演したままごと版「鈴木14世」。アフタートークは1日目が脚本について、2日目に演出について語り合いました。

一方の泊チームの劇団アトリエ・小佐部くんはまだ大学を出たばかりの若者ということもあり、もっと基本から学ぶことになりました。まずは戯曲のレッスン。小佐部の他、公募した札幌の若手劇作家5名とともに2日間で戯曲の基礎を学びました。講座の場で参加者たちが考えた中から多数決で「彼女のスープレックス」というタイトルが決まり、書き進めることに。“書きたいことを探り出す”という課題のもと、プロット作りから執筆まで何度もSNS上でのディスカッションと改稿を重ねました。いつになく根をはった戯曲が出来上がったのではないかと思います。今年はさらに台本を深める作業を続け、ここからは主に演出に重きをおいて入れて進める予定です。12月には泊さんが来札して5日間の集中稽古、最終日には一般公開も行います。

劇団アトリエ「彼女のスープレックス」舞台写真とアフタートークの模様。

2カ年計画でドラマドクターに何度も札幌に足を運んで話を聞いたり現場を観てもらったり、時には演出してもらったり、というような企画は、劇団単体ではもちろん、民間劇場でもなかなかできないことです。内部ではいろいろ気苦労や大変なことも多そうですが、札幌の演劇人たちに寄り添った事業を行っていただけることは大変にありがたく、どのような成果へ繋がっていくか、数年先が楽しみです。今年度のシアターラボ札幌は年度末の3月29日(土)・30日(日)にかでる2・7ホールにて上演します。
 


■小室 明子(こむろ・あきこ)■
1974年生まれ。札幌市出身。コンカリーニョ演劇プログラムディレクター。大学在学中に演劇と出会う。大学卒業後、タウン誌の編集者などを経て2001年に上京。東京ではフリーライター・エディターとして生計を立てつつ演劇の世界もうろうろ。2006年、fringe主催の「PmP2006」に参加したのをきっかけに、2007年4月に札幌へ戻り、以来、NPO法人コンカリーニョに勤務。札幌演劇の活性化、演劇人の実力の向上を願い、他地域の劇団などとの交流企画や演劇祭、在札劇団の道外公演のプロデュースなどを行っている。


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