制作ニュース
- 小室明子の「北国の劇場から」Vol.12
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14.02/01
札幌演劇のこれから
2014年に入ってからというもの、連日最高気温が氷点下という日々が続く雪深い札幌です。寒いです。毎年のこととはいえ、耳が切れるような風の冷たさも、際限なく降る雪も、慣れるものではありません。
そんな真冬の札幌では現在、札幌演劇シーズン2014-冬、真っ最中です。コンカリーニョではintro「言祝ぎ」の後半戦が2月2日よりスタートします。東京、京都からもゲストをお招きして、アフタートークを連日開催します。札幌座は今回、札幌市教育会館小ホールといういつもより大きな劇場での公演。千秋楽にはゲストとして、上田文雄札幌市長が出演します。
5シーズン目を迎えた札幌演劇シーズン、事務局さんの尽力により宣伝の機会も広がりました。今回は、あのTSUTAYAとコラボレート。札幌市内と近郊の8店舗で「本と映画の演劇祭」と題し、演劇を観ようぜ!ということで劇作家が脚本を書いた映画や演劇関連書籍を集めたコーナーを作っていただいております。そして、5店舗ではチケットも取扱中です。
コンカリーニョと連絡通路で直結のTSUTAYA琴似店の模様。札幌駅、大通駅あたりの大型店舗ではもっと大きく開催中です。並べられた本の解説ポップには「今演劇が面白い!」の文字が。お隣はボカロ本のフェアでした。
同様に、今回から始まった「ゲキカン!」のコーナーでは、作品を観た各界の方から感想をいただいております。そのお一人、東山充裕さんは、昨年11月、札幌の劇作家3名が脚本を担当した札幌発ショートドラマ「三人のクボタサユ」のディレクターさんです。最初に話を聞いたときには、ローカルとはいえテレビドラマに中堅から若手の劇作家が起用されるなんて!と驚きました。聞けば、東山さんは名古屋時代にも演劇人たちを起用してドラマ制作をされていたそうです。トップページにも堂々と「札幌劇作家×札幌美少女×札幌NHK」の文字。脚本を担当したのは、yhs・南参、intro・イトウワカナ、若手劇団、劇団アトリエの小佐部明広の3名で、札幌出身のアイドルを主役にした3話合わせて30分という短い時間でしたが、それぞれの特徴の出たドラマになっていました。今後も札幌の演劇人たちとの仕事を考えてくれているようなので心強いです。
雑誌などでも札幌の演劇を紹介してくれる機会が増えました。そんな中、人気タウン情報誌「O.tone(おとん)」の12月発売号にて、「さっぽろ演劇事情」という特集が組まれました。40〜60代の男性に向けた遊び心をくすぐる情報満載の月刊誌で、演劇に夢中なオヤジたちの対談、注目の劇団・俳優の紹介、劇場マップなど、第2特集という位置づけではありましたが15ページにもわたって札幌の演劇情報が紹介されました。雑誌での特集は私の知る限り、15、6年前、それこそTEAM NACS人気に火がつき始めた頃にあった以来ではないかと思われます。反響がどんなものだったか気になるところです。
誌面より。今、観ておくべき劇団として、yhsが紹介されました。こちらのページで購入&チラ見ができます。
よい作品が増えたから支えてくれる人が増えたのか、あるいは時代の流れというものなのか。これまで札幌の演劇に触れたことのない人でも、日常の中で「演劇」という文字を目にする機会は増えて来ているのではないかと思います。ジワジワと「演劇盛り上がってるっぽい」という空気も広がっているように感じます。すぐに観客数が倍になる、みたいなことにはならないでしょうが、今よりもう少し、演劇がメジャーな娯楽の位置に行ける日も遠くない、そんな風に感じています。一方で、今が正念場だろうとも思います。観客層が広がっていくということは受け入れるこちらにもそれ相応の社会性、ホスピタリティが必要になるのだということは、札幌演劇シーズンを通して実感していることです。大変なことも多いですが、このままジワジワと広がっていくと、札幌演劇が他地域に例をみないガラパゴス的進化を遂げることができるのではないか、とわりと希望的観測を持っております。
来年度にはアートセンターも備えた札幌市交流複合施設がいよいよ着工になります。その他、300席を有する新しい民間劇場の話も聞こえて来ています。3〜4年後に訪れるであろう変化の波に対応できる基盤作りが、目下の課題です。
これまでつたないコラムをお読みいただき、ありがとうございました。札幌の現状を少しでもお伝えできていたら幸いです。
■小室 明子(こむろ・あきこ)■
1974年生まれ。札幌市出身。コンカリーニョ演劇プログラムディレクター。大学在学中に演劇と出会う。大学卒業後、タウン誌の編集者などを経て2001年に上京。東京ではフリーライター・エディターとして生計を立てつつ演劇の世界もうろうろ。2006年、fringe主催の「PmP2006」に参加したのをきっかけに、2007年4月に札幌へ戻り、以来、NPO法人コンカリーニョに勤務。札幌演劇の活性化、演劇人の実力の向上を願い、他地域の劇団などとの交流企画や演劇祭、在札劇団の道外公演のプロデュースなどを行っている。
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