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第2回「カンパニーの成長と法人化~ゲスト:吉井省也(現・舞台芸術財団演劇人会議プロデューサー/在籍期間:1984年~2000年)聞き手:山内祥子(パパ・タラフマラ制作/在籍期間:2008年~)

12.01/05

さまざまな事業展開と舞台公演の密接な関係




空間演出系の事業の記録写真

山内:事業展開としては、ワークショップやP.A.I.の他に空間演出デザイン系の事業もされていたそうですね。

吉井:やりましたね。企業イベントや空間デザインね。オブジェ作るだけじゃなくて、スタッフの衣装まで全部任されたね。

山内:そうなんですか。これも、それこそただの劇団じゃなくて、美術スタッフもいるアートユニットだからこそできたことですよね。

吉井:そうですね。美術部が確固たるものとしてあったからね。あと、CMもだいぶ出たね。

山内:それも聞きました。マネジメント業務もやってらしたって。

吉井:パフォーマーの出演もだけど、「作品そのまま使う」っていうのもやったね。

山内:そのまま?

吉井:小川さんだけ出演するとか、そういうのじゃなくて、タラフマラの舞台作品そのものをCMで使うっていうこと。ディレクターもこっちで決めさせてもらって。だから、タラフマラの映像を全面的にやっていた映像作家の佐々木さんにお願いできた。

山内:映像、残ってるかな?

吉井:それから、三枝(成彰)さんのコンサートのデザインなんかもやったね。これはセットデザインと、パフォーマー出演も合わせて。それから、美術展のプロデュースとか。

山内:なるほど。結構、広告代理店みたいな仕事を受けていたんですね。あと、「パパカフェ」っていうのもやってましたよね?これもそういった事業の一環ですか?

吉井:いや、これはね、その頃ダムタイプが京都で週末だけカフェをやってたのね。カフェと言っても、商業目的じゃなくていろんな人が集まって交流する場のような。「インフォーマル・ギャザリング」とかいってさ、当時流行ってたんけど。

山内:サロン的な?

吉井:そうそう。そういったものを、やってたんだよね。たしか京都大学から委託されて。で、そこに一度行った時に、「あ、いいなあ。こんなのやれたらいいなあ」って思ったのがきっかけだったと思います。大変なんですけどね、実際にやってみると。「第3土曜日だけ」とか日にちを決めてスタジオを「カフェ」として開放しました。アーティスト、ダンサー、俳優、プロデューサーなど、いろんな人たちが集まってまさにサロン的な感じでしたね。

山内:明和電機さんや山下洋輔さんも来たそうですね。

吉井:そうそう、イベントもやったんだ。

山内:いやー、ホントにもういろいろなことをやってたんですね。

吉井:舞台公演のことに関してはだいたい記憶に残っていたんだけど、それ以外のことはあまり覚えてないもんだね。

山内:でも、こうやっていろんなことをやってきたことが、「パパ・タラフマラ」を知ってもらうことに繋がって、大きな公演を成功させることができたんだろうなあと思います。

吉井:でも、観客動員にはあまり繋がらなかったと思うけどね(笑)。やっぱり、タラフマラって、誰が観ても楽しめるものじゃない気がするからね。だから、拡大していくよりもピンポイントで一人ずつ増やしていくしかないんですよね。「ダムタイプは文科系、タラフマラは体育会系ですよね」ってある編集者に言われたことがあるんだけど、傍から見ると凄くこう、とんがったことをストイックにやってるイメージがあって、とっつきにくい集団だったと思うんですよ。で、それを少しオープンにする作用が「パパカフェ」にあったね。一つの回路になったとは思う。「なんかちょっと飲み会みたいなのあるみたいだよ」って来てみれば、そこにはパフォーマーもいるし、美術家もいるし、音楽家もいるし、いろんな人がいる。そうするとね、全体的なタラフマラのイメージから外れて、例えばそこで音楽家同士が親しくなる。あるいは美術家同士が親しくなって突破口が生まれる。タラフマラの全体像っていうのは、漠然とした「とんがった集団」でしかないんだけど、それは当然舞台芸術なわけだからあらゆる要素が全部寄り集まって出来てるわけですよ。こういう所に来るとその要素ひとつひとつが何なのか、ということがちょっと分かるわけ。「あ、こういう人が音楽やってたんだ」「こういう人が美術作ってたんだ」って、顔と表現が一致していくような。その結果、お客さんが大幅に増えることはないかもしれないけど、タラフマラの集団を取り巻く一重の輪はできたかもしれない。それが、作品の中身に影響していったことはありますね。

構成・文/郡山幹生

写真:大澤歩

注釈
*1 アントナン・アルトー(1896-1948)。フランスの俳優・詩人・小説家・演劇家。劇団名の「タラフマラ」とは、アルトーの著書「タラフマラ」に登場するメキシコの秘境が語源。
*2 「パパ・タラフマラ舞台芸術研究所」の略称。1995年設立。小池博史を所長とする舞台表現者養成期間。
*3 白井さち子。パパ・タラフマラ所属のパフォーマー。1989年入団。フリーのダンサーとしても活動。
*4 高萩宏。現・東京芸術劇場副館長。東京大学在学中の1976年、野田秀樹らとともに劇団夢の遊眠社を旗揚げ。著書に「僕と演劇と夢の遊眠社」(日本経済新聞出版社刊)。
*5 1984年に京都市立芸術大学の学生を中心に結成されたアーティスト集団。絵画・音楽・演劇・建築・映像・インスタレーション等、あらゆるジャンルをボーダレスに横断する製作スタイルで海外でも高い評価を得ている。


■吉井省也(よしい・せいや)■
舞台芸術プロデューサー。1964年生まれ。一橋大学社会学部卒業。1984年パパ・タラフマラ(タラフマラ劇場・当時)に参加。以後、制作、パフォーマーとして活動。2000年に退団。財団法人舞台芸術財団演劇人会議のプロデューサーとして、利賀フェスティバル、利賀演劇人コンクールなどを担当。現在、公益財団法人舞台芸術財団演劇人会議常務理事

■山内祥子(やまうち・しょうこ)■
1985年生まれ。多摩美術大学彫刻学科諸材料専攻卒業。在学中はパパ・タラフマラの美術ボランティアとして「シンデレラ」「東京⇔ブエノスアイレス書簡」等の美術・小道具作成を担当。フェスティバル実行委員会の事務局長。

【パパ・タラフマラ ファイナルフェスティバル】
『三人姉妹』
■出演:白井さち子/あらた真生/橋本礼
■日程:2011/12/20(火)~22(木)
■会場:北沢タウンホール
■チケット料金:3,500円 他
■上演時間:約60分

『島~ISLAND』
■作・演出・振付:小池博史
■出演:小川摩利子/松島誠
■日程:2012/1/13(金)~15(日)
■会場:森下スタジオCスタジオ
■チケット料金:3,500円 他
■上演時間:約60分

『SHIP IN A VIEW』
■作・演出・振付:小池博史
■出演:小川摩利子/松島誠/白井さち子/関口満紀枝/あらた真生/池野拓哉/菊地理恵/橋本礼/南波冴/荒木亜矢子/縫原弘子/開桂子/ヤン・ツィ・クック ※菊地理恵/荒木亜矢子はダブルキャスト
■日程:2012/1/27(金)~29(日)
■会場:シアター1010
■チケット料金:8,700円 他
■上演時間:約90分

『パパ・タラフマラの白雪姫』
■作・演出・振付:小池博史
■出演:あらた真生/白井さち子/菊地理恵/橋本礼/南波冴/荒木亜矢子/石原夏実/小谷野哲郎/アセップ・ヘンドラジャッド
■日程:2012/3/29(木)~31(土)
■会場:北沢タウンホール
■チケット料金:4,500円 他
■上演時間:約75分
■お問い合わせ先:パパ・タラフマラ ファイナルフェスティバル実行委員会事務局 03-3385-2066
■公式サイト:http://pappa-tara.com/fes/

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