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第2回「カンパニーの成長と法人化~ゲスト:吉井省也(現・舞台芸術財団演劇人会議プロデューサー/在籍期間:1984年~2000年)聞き手:山内祥子(パパ・タラフマラ制作/在籍期間:2008年~)

12.01/05

制作に専念するようになった理由

山内:当初は吉井さんもパフォーマーとして舞台に立たれていたんですよね?

吉井: そうですね。85年から4~5年はパフォーマーを兼ねてるから、自分の中で制作専任だと自覚的にやったのは『STONE AGE』(1991年)からですかね。

山内:じゃあ、それまでは吉井さんが中心というよりは、他の方と一緒にやっていた?

吉井:もちろん。五十嵐祥子さんが専任で制作をやっていました。

山内:90年に株式会社サイ(パパ・タラフマラの制作会社)を立ち上げて吉井さんが社長に就任してますけど、制作に専念しようとお考えになったのはそれが引き金ですか?

吉井:もともと制作がやりたかったのでパフォーマーへの執着はなかった。それに、いろんな新人が入って来て、作品の質もどんどん舞踊寄りになっていったこともあったから、僕みたいな素人が出る幕はだんだんなくなっていったんだよね。

山内:もともと、それ程ダンス的要素が多い作品をやっていたわけじゃないところにダンサーが入ってくるようになったのはどういう経緯だったんですか?

吉井:それは、コンテンポラリーダンスをやっていた人たちが、タラフマラというものに対して、だんだんシンパシーみたいなものを持ち始めた時期でもあるし、小池さん自身も、「そろそろそういう身体を入れていかないと」って考えていたからね。それまでのタラフマラ的身体というのは「モノ」と「ヒト」との関係をどう描くかっていう身体なんですよね。だから、踊りそのもの、肉体だけで見せるっていう感覚はなくて、オブジェと肉体がどう絡んでいるかっていう見せ方なんですよね。つまり、風景を見せていたんです。それが、「身体単独でもきちっと見せられるものを作りたい」ってことに変わってきた。

山内:『STONE AGE』ぐらいから、パフォーマーが一気に増えてますね。

吉井:オブジェも凄いんだけどね、この作品。絶対再演できないよ。だけど、身体だけで見せるシーンも凄くあるんだよね。あと、言葉もどんどんそぎ落とされた。『STONE AGE』の頃はもうほとんどなかったんじゃないかな、言葉が。

法人化とP.A.I.の設立



毎年恒例の夏合宿/卒業公演

山内:カンパニーを法人化したのは、海外進出への準備という意味合いが大きかったんでしょうか?

吉井:どうかな。当時、タラフマラの作品要素である音楽だとか、映像だとか、舞台上に出ているオブジェだとか、そういうものが副産物的に商品化する動きがすごくあったんで、法人になった方が便利だねっていう感じだったんじゃないかなあ。

山内:「株式会社」っていう形を取ったのは、何か理由があるんですか?「NPO」とか「有限会社」という選択肢もあったと思うんですけど。

吉井:NPOなんてないもん、その当時。それとたしか資本金がちょっとあったんだよ。

山内:その後、いろんな展開をしていきますよね。例えば、P.A.I. *2の設立とかワークショップ事業とか。当時はまだワークショップ事業なんて世の中に浸透していなかったし、アーティスト育成機関もほとんどなかったから、P.A.I.を立ち上げた時は凄い数の応募者が来たって聞いてます。

吉井:新劇の養成所はもともとあったけど、コンテンポラリーダンスの研究所はなかったのかな。みんなそんなことやってる余力がなかったんでしょうね。人に教えてる暇なんかないっていう感じだったと思う。

山内:だけど、あえて作った?

吉井:あえて作りましたね。

山内:どういう意図があって?

吉井:小川摩利子さんがボイスワークショップをやってたり、白井さん*3とかも教えてたりしてたから、そういうものを統合して、ジャンル横断的な人材育成をやる場を作ったらいいんじゃないかっていう考えからですね。

山内:それでこの頃ぐらいから新人のパフォーマーがどんどん入ってくるようになった?

吉井:いや、P.A.I.は、タラフマラの新人を育成する場とは位置づけてないです。それは、お見合いだから。2年間、最初は1年単位だったかな、やって、その後でタラフマラが欲しいと思う人材かどうか、逆にパフォーマーにとってもタラフマラでやっていきたいと思う気持ちがあるのかどうかってことが大事だから。募集の段階から、「将来のタラフマラのパフォーマーを目指し」なんて言い方は全くしてないです。ただ、いざやってみると場所も大変だし、受講料をできるだけ安くしたいから、採算取るのに苦労したんだよなあ。

山内:いまだにこの時の受講料を守っているっていう…。

吉井:あ、そうなんだ!

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