Next舞台制作塾

参加者レポート・感想[武田知也ゼミ]制作者たちが考える実践型アーツマネジメント ―舞台芸術の可能性を拡げる基礎スキル

Next舞台制作塾では、昨年(2014年)11月~今年(2015年)1月に、武田知也ゼミ「制作者たちが考える実践型アーツマネジメント ―舞台芸術の可能性を拡げる基礎スキル」を行いました。講座の終了後、受講した朝倉奈々緒さん(ステージパートナーズ/劇団チョコレートケーキ)に感想をお聞きしました。

私は9ヶ月前にIT企業から脱サラし、劇団制作1年目。
遅めのスタートなので現場以外で何かインプットができればと思ってこの講座を受けた。

 

今回のゼミでは大きく2つの事を学んだ。
1つは「制作という職業に関する知識」、もう1つは「制作者にとっての言葉、文書の重要性」だ。

 

制作という職業に関する知識

武田知也ゼミ
「優秀な制作者が途中でやめてしまうことが多い」武田先生のそんな言葉から始まった講義だった。
制作という仕事は、労働環境が良いものではないと予測していたが、だからこそどのようにキャリアを重ねていくか知識を持って判断する事が必要なのだろう。
どんな立場の制作でも共通する制作の「根幹」。そして属性により異なるそれぞれの制作の特徴。自分の「いま」と「これから」に照らしあわせて、成長の為の正しい居場所を選択できるようにするための知識を学んだ。

 

【制作の根幹とは「芸術×社会」を結びつけるものである】――これは本ゼミを通して、武田先生が何度も繰り返したフレーズだ。
講座の半分はゲストスピーカーの講演形式で、ご自身の経験・仕事に対する価値観を話すのだが、一口に制作者と言っても(劇団、公共、フェスティバル、PR、ライター、海外公演メイン)と多岐にわたっていた。
属性が異なれば、「×社会」の意味するところは、劇団=お客さん、公共=役所、フェスティバル=参加団体、ライター=主催というように変わり、業務内容も変わる事を、実際の資料とともにとても具体的に説明して頂いた事は貴重な体験だった。
私はもともと公共劇場の制作には興味がなかったが、キャリアとしては必須かもしれないと思ったくらい各ゲストの話は感銘を受ける内容だった。

 

自分の目指す方向性と身に付けるべき経験とスキル。IT業界でキャリアアップを狙って転職するように、この業界でも行われるべきなのだろう。
ただそこにリクナビNEXTのような転職・求人サービスはないので、自分で情報を整理判断しなければならないのだ。

 

制作者にとっての「言葉、文書の重要性」

武田知也ゼミ
講義でその重要性を学び、講座の残り半分では企画書、プレスリリースの作成など実践ワークを行った。講座の参加者は、学生から社会人、未経験から経験者、演劇、ダンス、サーカス、映像とバックグラウンドが多様であったため、実際に作成した企画書をクラスでプレゼンする回では、正直なところ、切り口が多様過ぎて全員のプレゼンを理解するのが難しかった。しかしそれだけ「制作者のつくる企画書」にも幅があるということを体感できたのも貴重な経験だった。

 

制作の作るドキュメントはいろいろな人に読まれる。だから企画書には結果・結論だけでなく、そこまでの流れがあることで、色々な立場の人が読んでも、ぞれぞれにとって必要な情報をとらえることができる。
【歴史的、地理的「文脈」を意識すること】――これも本ゼミを通して武田先生が何度も繰り返した事だった。

 

以上2つが、今回の講座のテーマで学んだことだが、今回初めてNextの制作塾を受講して良かった事が他にも何点かある。

その1,知識が増える
制作を初めてまだ1年。自分の通常の活動範囲だけでは聞こえてこない知識を効率的に学ぶ事ができる。
その2,知り合いが増える
私は演劇・ミュージカルの制作なのだが、ダンス、サーカス、古典芸能など全く違うジャンルの制作者と知り合える場は本当に貴重だと思う。
その3,アイデアが湧く
様々な事例、動向などが紹介されるので、自分の状況、自分の劇団に照らし合わせて考えるといろんなアイデアが湧いてくる。
オンラインニュースで読むよりも、その背景を理解している人のつぶやきだと、時代の流れを感じる。体系的に学ぶことが難しく、経験しないとわからないような世界だと思っていたが、この講座では効率的なインプットができる。
その4,モチベーションがあがる
1週間に一度、あるべき姿を考える時間があるというのは、モチベーションアップになった。目の前の作業は何のためにあるのか、なりたい姿から逆算するとやるべき事のアイデアが湧く。これを1人で生み出すのは難しい。

2015年07月14日 スタディノート