制作ニュース

小室明子の「北国の劇場から」Vol.3

13.04/01

北海道札幌市にある劇場「コンカリーニョ」の演劇プログラムディレクター、小室明子さんの連載コラム。第三回は、コンカリーニョと共に札幌を盛り上げている主な小劇場「シアターZOO」「演劇専用小劇場BLOCH」をご紹介!札幌の劇場が担う役割とは?ようやく、本当にようやく春めいて来た札幌です。先週あたりはお花見のニュースをうらやましく眺めておりました。札幌ではまだひと月先、お花見はゴールデンウィークの行事です。日本は広い。

今回は札幌の劇場の変遷についてご紹介したいと思います。

札幌には100くらいの劇団があるといわれています。札幌の演劇環境の向上を目指し発足した「札幌演劇情報ネットワーク」(事務局員多忙につき昨年、残念ながら活動休止)に登録されている団体は、学生劇団も含めて約70団体、登録してない団体、新しく出来た団体なども考えるとやはり100弱はありそうです。しかし、定期的に公演を行っている劇団となると、その数はずっと減り、多くて40団体くらいではないかと思います。最近は劇団が弱体化していて、ユニットが出来ては消え、腰の据わらない演劇活動をする人が増えたように感じています。

主な公演場所として使われている小劇場が3つあります。「シアターZOO」、「演劇専用小劇場BLOCH」、そして我が「生活支援型文化施設コンカリーニョ」、いずれも民設民営の劇場です。この点は札幌の演劇の大きな特色でしょう。

■シアターZOO http://www.h-paf.ne.jp/ogist/

2001年オープン。客席数90席。札幌の中心部から地下鉄で2駅、中島公園の西側に位置する小劇場。北海道演劇財団所有、フランチャイズの札幌座公演のほか、若手からベテランまで幅広く利用。道外のカンパニーは劇場費が大幅に割引になる利用プランあり。

■演劇専用小劇場BLOCH http://bloch-web.net/

2001年オープン。客席数120席。札幌駅からも徒歩圏内、中心部から一駅東にある小劇場。利用は若手劇団が中心。劇場プロデュース公演も多数、道外カンパニーの招聘公演も行っている。

いずれも単なる貸し小屋ではなく、札幌の演劇の活性化、人材の育成のための事業なども積極的に行っています。最近は棲み分けというか、劇場ごとに上演するカンパニー、作品の方向性などの特色が出てきているように思います。

その他にも、小さなフリースペースや公共施設など、様々な種類の場所が公演会場として使われています。11月の1ヶ月間は市内の民間・公共合わせて9つの劇場が参加する「札幌劇場祭Theater Go Round」も開催されています。これについてはいずれ改めて。

ここであげた3つの劇場は、2006年オープンのコンカリーニョも含め、いずれも2000年代にオープンした劇場です。それ以前の札幌の演劇はどこで行われていたかというと、250席の劇場を有するルネッサンス・マリア・テアトロ(旧札幌本多小劇場/1986年オープン)と、2002年に取り壊しとなった旧コンカリーニョ(1995年オープン/約150席)が中心でした。
マリア・テアトロは、当時の札幌演劇の中心にあった劇場です。劇団イナダ組、TEAM-NACSなど人気劇団もこの劇場から生まれました。劇場が入っていたビルが売却されたことにより2000年末に閉鎖となりました。売却が決まった夏頃から、夜中の劇場でベテランから若手までが集まって何度か話し合いがもたれました。若かった私はただその場にいるしかできず、話された内容ももうよく覚えていませんが、あの場にあった焦燥感は今でも覚えています。私が初めて演劇を観たのがこの劇場で、学生の頃には本当に沢山の作品を観ました。東京からもたくさんの劇団が来ましたし、2006年から3年間、コンカリーニョ主催で開催した演劇祭「遊戯祭」ももともとはマリア・テアトロで開催されていたものでした。同じ頃、旧コンカリーニョもJR琴似駅前の再開発による取り壊しが決定(2002年取り壊し)。札幌軟石という石でできた倉庫は独特の風合いを持つフリースペースでした。こちらはアングラ寄りな芝居が多く上演されていたように記憶しています。

当時の小劇場のメッカともいえる劇場を失い、札幌の演劇の衰退を心配する声があちこちで聞かれましたが、翌年5月、同劇場のマネージャーであった和田研一氏が新たに「BLOCH」をオープン、その少し前の2月には、マリア・テアトロ閉鎖をきっかけにできた「札幌の劇場を考える会」などの協力により、シアターZOOがオープンしました。
こうしていろいろと思い返したり改めて資料を読んだりすると、2000年以前も、さらにもっと以前から、札幌の劇場は単なる公演会場ではなく、演劇を創る人たちの「拠点」としてあったのだと改めて実感しました。自由度のある民間劇場が、札幌の演劇を育んで来たのです。
ですが、すぐに代替の劇場が出来たとはいえ、拠点とする劇場のサイズが小さくなったことは少なからず札幌の劇団の作品創作や集客数に影響を与えたと思っています。2006年に新コンカリーニョがオープンした時、作品的にも集客的にも180席の劇場を使いこなせる劇団は数少なくなっていました。来月は、生活支援型文化施設コンカリーニョオープンまでの道のりについてご紹介したいと思っています。


■小室 明子(こむろ・あきこ)■
1974年生まれ。札幌市出身。コンカリーニョ演劇プログラムディレクター。大学在学中に演劇と出会う。大学卒業後、タウン誌の編集者などを経て2001年に上京。東京ではフリーライター・エディターとして生計を立てつつ演劇の世界もうろうろ。2006年、fringe主催の「PmP2006」に参加したのをきっかけに、2007年4月に札幌へ戻り、以来、NPO法人コンカリーニョに勤務。札幌演劇の活性化、演劇人の実力の向上を願い、他地域の劇団などとの交流企画や演劇祭、在札劇団の道外公演のプロデュースなどを行っている。


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