制作ニュース

第2回ゲスト:加藤弓奈(急な坂スタジオ・ディレクター/「中野成樹+フランケンズ」「岡崎藝術座」)

12.03/01

アーティストがいつ何を言っても大丈夫な存在でありたい

――その後、「急な坂スタジオ」へと移られますが、それはどういったきっかけからですか?

「BankART1929」と同様に、 2006年に「急な坂スタジオ」の運営団体が公募されたんです。当時、大倉山記念館の指定管理をしていたアートネットワーク・ジャパンさんから「横浜に一つ拠点が欲しいと考えていて、それを一緒にやるんだったらSTスポットさんがいいと思っているんだけど、共同で応募しませんか?」ってお話をいただいて。ちょうど契約アーティストとして「チェルフィッチュ」

と「中野成樹+フランケンズ」という2つのカンパニーを抱えていた時期だったんですが、彼らに必要なのはSTスポット規模の発表施設ではなくて、恒常的に作品をクリエーションできる場所だと思っていたので、一緒に応募させていただくことにしました。

――「急な坂スタジオ」とは、もともとどういった施設だったんですか?

もともとは老松会館といって、横浜市営の結婚式場だったんです。式場と披露宴会場と写真スタジオが揃っていて、何から何までここで全部出来てしまうという、多分値段的にもすごくリーズナブルな施設だったんだと思います。ただ、レストランウエディングとか結婚式の形態の流行りも変わっていったので、閉鎖されることになった。その後は区民センターのような区分でしばらく会議室として貸し出したりもしていたんですけど、それも閉めてしまって、5年間ぐらいほったらかしだった。それを、せっかく場所があるのだから文化施設として再活用しましょう、ということで「急な坂スタジオ」になりました。

――その辺は、さすが横浜市という感じがしますね。

そうですね。歴史的建造物や市の施設の再活用にはすごく力を入れていますね。

――「急な坂スタジオ」は、どういったコンセプトの稽古場施設なんでしょうか?

まずは、「人が集まる場所でありたい」というコンセプトがすごく大きくありますので、レジデントアーティストという形で常に優先的に、稽古場を無償で借りられるアーティストを置いています。現在は、「チェルフィッチュ」の岡田利規さん、「Nibroll」の矢内原美邦さん、「ままごと」の柴幸男さんの3人です。そうやって恒常的に必ず誰かが使ってくれている場所であるということと、あとは公演に至るまでにすごく長い時間を過ごす場所なので、なるべく劇場に入ってから過ごす時間と差が出ないように、きっちり創作できる場所でありたいと思っています。具体的には、なるべく長期的に使っていただくことを推奨していることと、使用期間中はスタジオに舞台を立て込んでも荷物を置きっぱなしにしても構わないということ、それから、たたき場も併設しています。あとは発表施設ではない分、いろいろな空間で作品の発表が出来ないか常に考えていて、「アーティストと街」だったり、「アーティストと新しい空間」だったりを繋ぐ仕事を積極的に進めています。

――野毛山動物園で拝見した中野成樹+フランケンズの『Zoo Zoo Scene(ずうずうしい)』はとても印象深いです。

あれは私たちにとってもすごく新しい、というか、助けになった企画でした。レジデントアーティストを招いてお花見をしてた時、中野さんに「今年何やりたいですか?」って聞いたら、「隣に動物園があって、目の前に公園があるから『動物園物語』がやりたい」とおっしゃって、「じゃあ動物園に聞いてみましょうか」というのがきっかけです。アーティストがパッと思いついたことを「どうやって形にしていくか」を考えることが、制作という仕事の醍醐味だし、それをちゃんと形にした上でさらに継続できることが大切なので、この企画は私たちの自信になりました。それがちょっとした思いつきであったとしても、アーティストがいつ何を言っても大丈夫な存在でありたいと思っていますね。

――それはSTスポット時代から一貫していますね。

そうですね。それに、いろいろなアーティストが同時にフラットな立場で施設内を行き交っているので、演出家同士で「悩みまくってるんだけど、どうしよう?」って話していたり、「なかなか稽古が進まないんだよね」って言っている役者たちがいたりして、そういう交流もどんどん生まれていますね。そこは、劇場とは大きく異なる、稽古場施設ならではの特徴だと思います。

――制作者も集まってきますか?

集まってくるようになりましたね。稽古場に入っちゃうと、どうしても電話が取れなかったり、ネットが繋がらなかったりすることがあるんですけど、ロビースペースは無線LANが使えるので、複数の制作さんが同時に仕事をしていて、「今どんな感じ?」って会話されてたりしますね。

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