制作ニュース

第2回ゲスト:加藤弓奈(急な坂スタジオ・ディレクター/「中野成樹+フランケンズ」「岡崎藝術座」)

12.03/01

劇場の人が「いいよ」って言ってあげることで、アーティストはすごく安心する

――就職してからのお仕事はどんな感じでしたか?

いわゆる「小屋付きさん」のお仕事と、プロデュース公演の制作ですね。照明のメンテナンスとかもやってましたね。STスポットは「初めて劇場で公演します」っていう若いカンパニーさんも使うので、そういう時はそれこそ、一緒に吊り込んで、シュートして、「明かりってね、こうやって作ってね、こうやってメモリーするんだよ」っていうことを教えるところまでしてましたね。

――STスポットの特徴についてあらためて教えていただけますか?

STスポットは公設民営の小劇場です。建物自体は民間の大きなビルなんですけれども、一定の平米数を超えるとある程度の空間を行政に無償で貸与する「公開空地」という条例に則って、地下のスペースを横浜市に無償で提供しているんです。25年前に横浜市がその空間の運営を市内で文化活動をしているボランティア団体に任せてみることにしたので、アートスペースとして利用されることになったんです。壁が白いので、横浜市側もビル側も水彩画とか写真とかを展示するギャラリーになるものだと思っていたみたいですけどね。たまたま最初に館長になった岡崎さんと、坂本さんという方が演劇経験者だったので劇場になったっんです。で、ちょうど私が就職した年に運営母体がボランティア団体からNPO法人になりました。

――現在でも行政との繋がりが強いのでしょうか?

はい。横浜市から「運営補助金」という形で運営委託費をもらっていて、それにプラスして、レンタル収入で運営しています。実際には、管理職員を一人雇うのが精一杯ぐらいの予算規模なんです。

――入社して2年で館長に就任されていますが、どのような経緯で?

まず、入社してすぐに「簿記の学校へ行って」って言われました。それまで定年退職後にボランティアでやってくださっている経理担当の方がいたのですが、「そろそろ引退したい」とおっしゃって。新規に経験者を雇う予算もなく、私が3ヵ月間簿記の学校に通い、半年後から私がスタッフのみなさんにお給料を払っていました。その年の年末に、現在「BankART1929」になっているスペースの運営団体が公募されたんです。STスポットは確かに面白い空間なんですけど、「もう少し大きい空間があるといいね」ってスタッフ間で話して応募することになったんです。結果的に、現在BankART1929の代表の池田修さんの団体とSTスポットの2つが選ばれて、横浜市から2つで1つのNPO(特定非営利活動法人BankART1929)を立ち上げて運営して欲しいと要請されたんです。そこで、岡崎さんがBankARTに移られて、私ともう一人田中さんという男性がSTスポットに残りました。その後1年間は田中さんを館長として運営していたんですが、田中さんが辞めることになったので、上から順番に役職が下りてきて「じゃあ、加藤さん館長で」というような感じで就任することになりました。24歳の時ですね。「なんだそりゃ?」って思いましたけど(笑)。

――お一人で運営することになったんですか?新たにスタッフを雇ったんでしょうか?

田中さんとの2人体制の時からプリコグの中村茜さんも職員でした。ただ、彼女も外部でのお仕事が多かったので、さらにアルバイトを2人雇いましたね。4人でギリギリ回せるかな、と。

――STスポットで初めて舞台制作に関わるようになったわけですが、当時はこの仕事についてどんな風に感じていましたか?

今考えると、私は何が「制作」なのかっていうことを何も分からないまま仕事を始めちゃったんだと思うんです。始めた時から何でもやらなきゃいけない仕事なんだろうなっていう覚悟はあったし、あと、アーティストの要望が出て来る先っていうのが、制作であり劇場になるので、一緒にいろいろ考えられる存在なんだって実感しました。そして、劇場の人が「いいよ」って言ってあげることで、アーティストはすごく安心するんだっていうのが分かってきて、きっとそういう人を常に彼らは必要としているんだろうなと思いました。STスポットってすごく狭いんですけど、人が遊びに来るんですよね。「ちょっと近くまで来たから寄ってみた、今どんな感じ?」って。それこそ岡田利規さんとか、中野成樹さんとかもそうやってよくフラっと来てくれました。だから、そこにいつもいてあげる人っていうのが、もしかしたら制作という仕事なのかなって思うようになりましたね。もちろん事務的な作業をスケジュール通りにこなす人でなきゃいけないし、それが大事な仕事なんですけど、同時に、いつも「待ってあげている人」、「いてあげられる人」なのかな、というふうに考えるようになりましたね。

――劇場スタッフというと、カンパニーやアーティストに付いている制作者とは別の、もうひとつ先にいる仕事というイメージがあったんですが、今のお話を聞いていると、加藤さんは劇場スタッフでありながら、カンパニーやアーティストととても近い所で向き合っている感じがします。

当時、STスポットを使うカンパニーさんて、固定の制作さんがいないところが多かったんですよね。だから、彼らにとって自分たちに足りてないことや分からないことを相談する相手は必然的にSTスポットという場所になったんだと思うんです。当日受付をお願いできる人はいるけれども、そこに至るまでの細かい仕事は主宰者が自らやっているとか、あるいは役者が手分けしてやっている、みたいなカンパニーがものすごく多かった。STスポットは、そういう人たちが相談に来る場所だったので、どんなカンパニーにもフレキシブルに対応しないと成り立たない環境だったんだと思います。

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