制作ニュース

小室明子の「北国の劇場から」Vol.2

13.03/01

北海道札幌市にある劇場「コンカリーニョ」の演劇プログラムディレクター、小室明子さんの連載コラム。第二回は、これまでにコンカリーニョが行って来た地域交流企画について。素材勝負でやってきた札幌の若者たちが挑戦する先とは?…先月ご紹介させていただいた「札幌演劇シーズン2013-冬」、3劇場5作品で約5,000人のお客様にご来場いただき、2月22日に無事終了いたしました。そして、すぐに夏に向けて動き出しています。年2回の1ヶ月公演というのはなかなか大変ですね…。
http://s-e-season.com
facebookページで各公演の舞台写真公開中です。

演劇シーズンが終わる少し前の2月18日より、3月に上演するコンカリーニョプロデュース「消エユキ。」の稽古が始まっています。札幌のyhsという劇団の劇作家・演出家の南参の脚本、京都のニットキャップシアター・ごまのはえさんの演出による作品です。18日入りの京都のお二人が乗った飛行機が悪天候で関空に引き返してしまい、札幌入りが2日遅れるという事態になりましたが、今日(2/24)から劇場での稽古に移りました。もうホントに今年の冬は雪が多くてくじけそうです。

今回は、これまでにコンカリーニョが行って来た地域交流企画についてです。
地域の演劇には閉塞感が、とはよく言われることです。他県と海で隔たれ、道内の他の都市とも距離がある札幌なんかは特にそれが強いのではないかと感じます。
視野を広げる。
ただそれだけのことでも閉塞感を打破できるのではないか、と考えたのが他地域と交流企画を始めたきっかけです。というのも、2006年に開催されたfringe主催の「Producers meet Producers2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー 」に関わり、私自身も目の前が拓けるような感覚を味わい、それが今も仕事の糧となっているようなところがあるからです。当時、私は東京住まいだったので参加者ではなく事務局員としてだったのですが、新しいコンカリーニョがオープンした年で、札幌の演劇人たちとも再び交流を持ち始めた頃だったので、札幌の人寄りな立ち位置で参加していました。ここで出会った人たちとは今も友人でありよきライバルです。
というような感覚を札幌の演劇人たちにも持ってもらえたら、と企画したのが2007年の福岡との交流事業でした。同じような文化圏、人口規模の都市の演劇人たちの交流からそれぞれの未来を考えてみようとしたものです。

■コンカリーニョが行って来た地域交流企画

2007年度
札幌福岡演劇交流プロジェクトMeets!2007(共催:NPO法人FPAP)
 詳細:http://www.concarino.or.jp/nabenonaka/about.php
 参照:http://fringe.jp/special/pmp/pmp2007.html

2008年度
泊篤志(飛ぶ劇場)戯曲講座+成果発表リーディング公演

2009年度
札幌福岡演劇交流発信プロジェクトMeets!2009
 http://www.concarino.or.jp/nabenonaka/

2010年度
コンカリーニョプロデュース「歯並びのきれいな女の子」
 http://www.concarino.or.jp/2010/05/hanarabi-2/

WSにシンポジウム、福岡&札幌公演、脚本共作、そして戯曲講座からの北九州の演出家・俳優と札幌の俳優が一緒に創作するプロデュース公演と、この4年くらいの間、福岡の演劇人たちとのいい交流が続きました。
「歯並び〜」で一区切りがつき、この辺りから、さらなるステップアップを目指し、関西方面へ触手を伸ばしてみています。文化圏規模で言うと随分違いますが、都市の規模や観光という面でのポテンシャルなど、札幌が手本にすべきは東京より京都じゃないかと思っています。
2009年の「演劇博覧会カラフル3」(愛知・長久手)に地域推薦団体として関わらせていただいて、コンカリーニョ賞なるものも急遽設けさせていただきました。
そこで出会った京都の2団体を札幌へ招聘し、札幌の2団体との競演、という企画が2010年の「VS.KYOTO」です。京都の人たちの技術、考え方と知識の深さに圧倒されました。そして紆余曲折あり、今回助成金は取れませんでしたが、何度目かの正直で、
ニットキャップシアターのごまのはえさんとの企画を実現することが出来ました。

ごまのはえさん演出・札幌の若手役者が中心のコンカリーニョプロデュース「消エユキ。」。
ごまさんの手によって、札幌の話だけど札幌では観ないタイプの作品が出来上がりつつあります。 昨日の稽古では「素材の味だけでは勝負しない」と。その言葉通り、京料理のごとく繊細な作りの芝居、素材勝負でやってきた札幌の若者たちは毎日頭しびれながらの稽古だと思いますが、若いうちにすごく有益なことを学んでいると思います(最後まで着いて来れるのかとヒヤヒヤもしていますが)。乗り越えたらいい俳優になるだろうという気もするのですが、この先の現場次第では、朱に交われば…ではないですが、学んだことが無になってしまうなぁ、という危惧もあります。
おそらくここが札幌の次の課題だろう、と考えているところです。

コンカリーニョプロデュース「消エユキ。」公演情報はこちら
http://www.concarino.or.jp/2020/12/kieyuki/


■小室 明子(こむろ・あきこ)■
1974年生まれ。札幌市出身。コンカリーニョ演劇プログラムディレクター。大学在学中に演劇と出会う。大学卒業後、タウン誌の編集者などを経て2001年に上京。東京ではフリーライター・エディターとして生計を立てつつ演劇の世界もうろうろ。2006年、fringe主催の「PmP2006」に参加したのをきっかけに、2007年4月に札幌へ戻り、以来、NPO法人コンカリーニョに勤務。札幌演劇の活性化、演劇人の実力の向上を願い、他地域の劇団などとの交流企画や演劇祭、在札劇団の道外公演のプロデュースなどを行っている。


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