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芸術と社会を繋ぐコレクティブ、「NPO法人芸術公社」設立記念シンポジウム

15.02/02

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1月23日(金)、「特定非営利活動法人 芸術公社」の設立記念シンポジウムが、東京・港区のSHIBAURA HOUSEで開催された。設立メンバー13名のうち、代表理事を務める相馬千秋氏ら12名が登壇、芸術公社の理念や、それぞれの専門的立場から芸術と社会への意見を述べた。

特定非営利活動法人 芸術公社

■代表理事:相馬千秋
■理事:大舘奈津子/若林朋子
■監事:須田洋平

■設立メンバー:
アンドリューズ・ウィリアム/岩城京子/宇波恵/大舘奈津子/影山裕樹/鈴木理映子/須田洋平/相馬千秋/平昌子/戸田史子/林立騎/望月章宏/若林朋子
※1月23日の設立記念シンポジウムには、ドイツ在住の宇波恵氏を除く12名が登壇した。

http://artscommons.asia/

「あたらしい公共」という立場から

芸術公社は、2014年11月に正式に発足したNPO法人。日本およびアジア地域の芸術文化振興に寄与することをミッションに掲げ、インディペンデント(個)とパブリック(公)を繋ぐ「あたらしい公共」という立場から、芸術と社会を繋いでいく。

メンバーはフリージャーナリスト、編集者、制作者、翻訳者など、異なる専門性を持つ13名のディレクター。彼らは企画段階からユニットを組み、それぞれの専門的視点からプロジェクトを立ち上げ、作品、出版、批評など様々なかたちでアウトプットしていくという。

相馬氏は「芸術公社は社会と作品の間に立つ『繋ぎ手』のコレクティブ(集合体)として、それぞれの専門性を重視したいと考えている。そして日々の実践の中で蓄積された様々な技術や知識を交換し共有していく“プラットフォーム”としても機能していきたい」と語った。

なお、芸術公社は英語で「ARTS COMMONS TOKYO」と表記する。〈PUBLIC〉ではなく〈COMMON〉とした理由について、ライターで翻訳者のアンドリューズ・ウィリアム氏は「〈COMMON〉には『公』よりも『共』、みんなが共有する資源という意味がある」と説明。「『共同性としての芸術』に関心をもつメンバーの組織名として、〈COMMON〉を選択した」と語った。

今、芸術に求められるのは「社会をクリエイトする機能」

ところで、芸術公社が問う〈社会〉とは何だろうか。翻訳者、演劇研究者の林立騎氏は「そもそも〈社会〉とは何か? 日本に〈社会〉は存在するのか?」と問題提起する。

ここ数年、『社会課題の解決機能』や『社会的包摂』など、社会の中における芸術のポジションは常に模索され、更新されてきた。しかしその結果、〈社会〉自体を問う行為がおろそかになっていないか──、林氏は投げかける。「『社会の問い直し』と『芸術に関する専門性の問い直し』、その両輪で芸術と社会の関係性を考えた上で、新しい公共や公共性の議論を立ち上げることが重要。そこでようやく、社会における芸術の新しい理念や位置、機能が生まれてくるのではないかと考えている」。

弁護士で芸術公社監事の須田洋平氏は、芸術の「社会課題の解決」という役割について「〈社会〉が確立している地域──例えばイギリスやフランスなどであれば、その機能も期待できる。しかし未だに〈社会〉が確立されていない日本においては、芸術に期待されるのは『課題解決機能』以前に、まずは社会をクリエイトする機能ではないか」と語った。

舞台芸術内の「溝」を取り除くために

アート、カルチャー書の出版プロデュース・編集を行う影山裕樹氏は「ジャンルの固定化」について言及。「隣接する異なるジャンルの芸術制作の現場を繋いでいくにはどうしたらいいのか、芸術公社のミッションとして考えたい。そして様々なメディアを通して、芸術に関する言説をどのように流通させるか、それがどのように伝わるかまで考え提案する方法を探りたい」と、自身のスキルからアートのボーダレス化について考察する。

「たぶん、このメンバーの中では最も“メジャー”と言われる世界に触れる機会が多かった」。そう話すのは編集者、ライターの鈴木理映子氏。自身の経験をふまえ「今、自分が取り組んでいる先鋭的な表現に対するものとして、商業的な演劇や主流の演劇史の価値を否定するつもりはない。むしろその溝をどう考え自分は取り組んでいくか、ずっと課題だった」という。

さらに鈴木氏は、『ジャンルの固定化』は舞台業界の中にこそ存在するのではないか、と指摘する。「今後、大きな文化イベントがたくさん企画され、その中で文化芸術の意義を捉え直すために(舞台芸術の)外側にいる人たちを説得しようとすることは否定しないが、自分たちの近くにある溝や世代間の差などを正面から見ていかないと、芸術の有用性自体を言うことはできないのではないか。そのためにも、なるべく多角的な作業を探求し、発信していきたい」と思いを語った。

シンポジウムの最後、相馬氏は「芸術公社は東京にとどまることなく、理念やビジョンをより多くの人と共有したい。それは単に『いいね』だけでなく『いや、そうじゃない』という意見も含め、芸術と社会について議論をしていきたい」と、他の価値観を持つ人々との対話も重視していく姿勢を示した。そして「我々だけでできることは多くない。まずはこの芸術公社の理念について一緒に考えていただき、何か恊働でできることがあれば一緒に事業を立ち上げていくこともぜひ検討いただきたい」と訴えた。


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