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『せんだいメディアテーク 考えるテーブル「あるくと100人会議」 〜まちの再生、アートの再生~』第二部「まちの再生、アートの再生」

13.03/18

2、人が集まる場所のデザイン=石巻の雄勝(オガツ)法印神楽の再生の事例

続いて、「劇場」とは「人が集まる場所のデザイン」ということで、被災後の石巻の雄勝(オガツ)法印神楽の再生の事例から人々が何を必要としたのかの報告がありました。

■坂口大洋さん(仙台高等専門学校建築デザイン学科准教授)
石巻市の雄勝で、東京都による被災した芸術文化の支援事業で、雄勝法印神楽の再生に関わった。津波で、雄勝の15の浜すべてにあった舞台がほぼ流された。単に舞台を再生するだけでなく、舞台の再生を通して雄勝の人たちの気持ちが動くことを目指した。また劇場というのは人が集まる場所のデザインなので、再生を通じて人が集まるきっかけを作るというミッションでもあった。

15の浜の神楽すべてを再生することはできないので、2tのトラックで運搬、設営してバラして移動させることができるものを作った。建設会社がいい木を持っていて、神楽舞台はちゃんと作ろうという声があり出来て雄勝に持っていくと、プロの神楽師からやってみようという声があがり、急遽、演じることになった。その後、鎌倉に公演に行くことにもなった。神楽を再生することが、人を繋ぐひとつの作業になった。

劇場の問題もそうだが、劇場という建物だけを再生しても意味はなく今回の震災を受けて、どういう場所が必要なのか、どうやって場所を作っていくことができるのか、場所と人がどういう関係を作れているかを、見ていくことが大事だと感じる。

3、「劇場」の歴史

また、日本の公共劇場がどういう経緯で建設されてきたかについて説明がありました。

■坂口大洋さん(仙台高等専門学校建築デザイン学科准教授)
「日本の劇場は80年代くらいまでは、いや、今も大部分は、基本的に「貸館」だった。つまりアーティストがそこにはいない。アーティストは他の場所で活動をしていて、上演を行うのだけの場所が劇場だった。欧米は劇場の中にアーティストがいて、そこで作品が作られる。日本はそれを目指してきた。14、5年前から創作スペースの充実した劇場もいくつか作られてきて、ディレクターが劇場に滞在する状況もできてきた。ところが、それが出来た時点で目標を見失った。首都圏や大都市ではなくて、どちらかというと都市の郊外や地方都市に設備の整った近代的劇場を建設してきた。この10年間は作ってしまった公共ホールをどう活用するかがテーマであった。従って最初から地域と関係を結ぼうと建設されたわけではなく、結果的にそういった場所に施設を作ってしまい、作ってしまったところから何らかの関係を地域と作らなくてはいけないという強迫観念的なものが生じ、そこからいろいろな活動が生まれてきた。

目標を定めて着実にその目標に向かって進んできたわけではなく、ある意味、場当たり的であった。これからはホールを作る時代ではなくホールを使う時代に突入した。では、どういう風にすると場所をうまく使っていけるのか?逆に使えないとなると、そこはどういう使い道が余地としてあるのか?

4、「劇場」は必要か?

ここで、劇場とはどういう場所なのかについての議論が行われました。

■白鳥英一さん(OtoOpresents 俳優/演出/劇作家)
先ほどの鈴木拓さんの話にあったが、震災があった際に劇場が使えなかったが、困らなかったというのが重要な論点で、では何が必要だったのかを定義した方がいい。僕は「場所」ではなく「場」だと思っている。「場」が成長するために、劇場や稽古場が必要だと思っている。その「場」が震災の中では、劇場とは違う場所にあったので、劇場が必要だと感じなかったのではないか。「劇場」は、その「場」が育ちやすい状況にするために必要だと思う。

■伊藤み弥さん(ARC>T事務局(当時))
その「場」というのは、人間同士の関係が結ばれる場所ということでしょうか?

■白鳥英一さん(OtoOpresents 俳優/演出/劇作家)
そうです。

■伊藤み弥さん(ARC>T事務局(当時))
劇場だけではなく、街づくりにも関わっている坂口さんは「街」とは何だと思いますか?

■坂口大洋さん(仙台高等専門学校建築デザイン学科准教授)
難しい質問だが、そのことを考える上で、確認しておきたいのは、震災前、劇場は市なり県なりあるいは企業だったり劇団であったり、誰かを迎え入れる「誰かの場所」であったということ。でも震災直後は「誰かの場所」でなくなった時期があった。それが震災から時間が経つにつれ、また「誰かの場所」になっていく。公共だったり民間だったり。

そこを、もう一度、「誰のものでもない場所」として捉えなおす、「みなが共有できる場所」にするための「考え方の技術」。あるいは「話せる関係」があるといい。ARC>Tの活動がそういった関係を生み出すことができているならば、その延長線上に、今まで「場所でなかったところ」が「場所」に転換できるのではないか、そんな風に思っている。

■白鳥英一さん(OtoOpresents 俳優/演出/劇作家)
「場」が新しくできたという事で言えば、仮設住宅の集会所に「場」ができたと言える。その中で何かを発表したり、迎え入れたりができた。これを劇場ということに置き換えたときに問題は、劇場は使い道が混在していることがひとつの問題。プロもアマチュアも同じ条件で1週間交代などで使わなければならないという機会均等の問題がある。プロとして表現活動を行っている人には、「劇場」が必要。

■坂口大洋さん(仙台高等専門学校建築デザイン学科准教授)
「人の集まり方」というのが震災後、重要な論点。「劇場」というのは「人の集まり方のデザイン」。震災時、もう少し有効な使い方があったのではないかと思っている。ARC>Tの活動が機能したのは、人の集め方が有効だったのではないか。

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