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廃校活用による「文化芸術活動拠点」〜立川市「たちかわ創造舎」編〜

15.06/26

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台東区・北区・立川市で誕生、廃校活用による「文化芸術活動拠点」〜立川市「たちかわ創造舎」編〜

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廃校を活用した文化芸術活動拠点が東京都内に相次いで誕生した。4月にオープンした台東区の「たなか舞台芸術スタジオ」と北区の「ココキタ」。そして10月に立川市に開設される「たちかわ創造舎」。この後編では、NPO法人アートネットワーク・ジャパンが運営する「たちかわ創造舎」について取り上げる。
(取材:編集部、構成・文:永滝陽子)

⇒【前編】廃校活用による「文化芸術活動拠点」〜「たなか舞台芸術スタジオ」「ココキタ」編〜

■「たちかわ創造舎」
所在地:東京都立川市富士見町6-46-1
企画・運営:NPO法人アートネットワーク・ジャパン、NPO法人日本自転車環境整備機構
アクセス:JR中央線・南武線・青梅線「立川駅」南口、多摩都市モノレール「立川南駅」よりバス「団地西」下車徒歩3分(乗車時間約7分)

■NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)
2000年に設立。「フェスティバル/トーキョー」の実行委員会事務局、「にしすがも創造舎」の企画・運営、「としまアート夏まつり」など豊島区と連携した様々なアートプロジェクトを立ち上げる。

■たちかわ創造舎チーフ・ディレクター:倉迫康史
舞台演出家、放送作家。2007年よりTheatre Ort主宰・演出を務める。10年~14年3月までにしすがも創造舎アソシエイト・アーティスト。

 

「にしすがも創造舎」OPENから10年、ANJが乗り出す新たな廃校事業

2015年10月に本格始動するのは、東京都立川市に位置する文化創造拠点「たちかわ創造舎」(立川市旧多摩川小学校有効活用事業)。同市から事業者に選ばれたのは、同じく廃校利用による稽古場・創造スペース「にしすがも創造舎」を手がける、NPO法人アートネットワーク・ジャパン(以下、ANJ)だ。豊島区の文化芸術創造支援事業である「にしすがも創造舎」がオープン10年を機に「あらたな拠点を運営するべき時期がきた」(たちかわ創造舎チーフ・マネージャー・陽茂弥さん)と語る。

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チーフ・マネージャー 陽茂弥さん
 

「インキュベーション」事業と、シェア・オフィス

「たちかわ創造舎」の最大の特徴は、「インキュベーション・センター」「フィルムコミッション」「サイクル・ステーション」の3つの異なる事業を柱にする点だ。ANJにとっては廃校のスペース運用や校舎等を使った撮影需要へのノウハウは生かしつつも、新たな“廃校利用のモデル作り”への挑戦が始まる。

特に注目したいのは、「インキュベーション・センター事業」。文化活動をビジネスにしたい団体・アーティストにむけて、空き教室を利用したシェア・オフィスとレンタルスペースの運営に乗り出す。教室を分割したシェア・オフィス(1万5千円/1ヶ月)を利用すると、同階にあるフリー・スペースやシェア倉庫を無料で利用できるほか、「たちかわ創造舎」の文化事業に参加しての地域交流やネットワークを生かした発信事業も行なえるという。

このシェア・オフィスについて、たちかわ創造舎チーフ・ディレクターの倉迫康史さんは、「稽古場事業のみでは、部屋にこもって作業をするばかりで、どうしても横の繫がりは生まれにくい。その点、シェア・オフィスなら空間を共有することでお互いの結びつきが生まれ、人と人が出会う場所として機能できる」と語る。芸術活動に加え、それをどうビジネスにしていくのかという視点、その両輪がこの施設におけるインキュベーション(創業)であり、新しい「文化創造拠点」の可能性でもある。

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チーフ・ディレクター 倉迫康史さん

シェア・オフィス利用者の募集は近々開始予定で、現在建物が工事中のため、夏以降に下見希望者への対応も行われる。オフィスへは4団体が入居可能で、倉迫さんは「シェア・オフィスに限らず、ここに興味を持って連絡をくださった方々には、直接お会いして、どうやって一緒にやっていけるか有機的な繫がりを築きたい。例えば自治体からWSのニーズが来た時に、ここを通じて繋がった団体を紹介できるようなマッチングもできるのではないか」とこれからの可能性に期待している。
 

文化的な開拓の可能性を持つ、立川市と多摩エリア

都心からの距離など不便さも目立つ立川だが、駅には南北に鉄道路線が繫がり、近隣には芸術系の大学も多数存在することから、ANJは「若者が集い、子育て世代も多く住む多摩エリアは、都心と比べて文化的な開拓の余地があるはず」(倉迫さん)と、立川一帯へ強い期待を寄せている。

文化芸術を地域住民にどうコミットしていくかを重視する動きは、「旧多摩川小学校」で2006年以降、すでに同校舎を拠点に活動を続ける団体「たまがわ・みらいパーク」(立川市5町会の市民有志で組織)と校舎を二分して共に活動していくことからも伺える。

「地域に根付くためには、まず立川という場所に入っていくことが重要。行政や財団とも対等なパートナーとして事業提案をしながら、一緒に進めていく体制づくりを目指したい。一方で、多摩エリアという物差しで考える時には、立川市だけではない客観性も同時に必要になる。専門性の高い文化団体を支援できる施設として、多摩エリア全体にも仕掛けていきたい」(倉迫さん)。

「にしすがも創造舎」で得た10年の経験値を武器に、新天地でどのような文化を根付かせるのか。今まさにその第一歩が始まろうとしている。


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