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演劇センターF「海外活動報告会」

14.09/19

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横浜市・黄金町に拠点に展開しているプロジェクト「演劇センターF(芸術監督:市原幹也さん)」で8月下旬、ふたつの「海外活動報告会」が開催された。ひとつは、同プロジェクトメンバーで編集者・批評家の藤原ちからさんによる「ドイツ・マンハイム」での演劇祭について、もうひとつは劇団「範宙遊泳」の主宰・山本卓卓さんと制作・坂本ももさんによるマレーシアでの創作活動について。演劇センターFがいま、海外での活動に目を向けるその意義とは。(編集部:大澤歩・芳山徹)

【演劇センターF 海外活動報告会】
vol.2「藤原ちから:ドイツ・マンハイム」
□日時:8月22日(金)19:30~21:30
□会場:演劇センターF
□話し手:藤原ちから(BricolaQ、批評家、編集者)
□聞き手:落雅季子(BricolaQ)

vol.3「範宙遊泳:マレーシア」
□日時:8月29日(金)19:30~21:30
□会場:黄金町高架下スタジオSite-D
□話し手:山本卓卓、坂本もも(範宙遊泳)
□聞き手:藤原ちから(演劇センターF、BricolaQ)、落雅季子(BricolaQ)

「このままではダメだ」という危機感〜マンハイムの演劇祭へ

今年の5月~6月、ドイツの都市・マンハイムで世界各国からアーティストが集まる演劇祭「テアター・デア・ヴェルト(Theater der Welt=世界の演劇)2014」が開催された。演劇祭開催中の3週間、藤原ちからさんはマンハイムに滞在した。

その8ヶ月前の2013年秋、藤原さんは演劇ジャーナリストの徳永京子さんとともに『演劇最強論』(飛鳥新社)を上梓した。背景には「20代の作り手たちの作品は、人気はあるものの『批評』というシーンにおいては認められていない」と感じ、「比較的若い人たちの演劇を文脈化し、議論の土台を作りたい。それによって世代や国を超えて、話し合いができるような状態を作りたい」という思いがあったという。

しかし、昨年の「フェスティバル/トーキョー13『公募プログラム(※)』」における「F/Tアワード」の選評で、「日本の作家たちの作品は、海外のアーティストも参加するアワードという場で『批評言語』としてのせられない」といった主旨のことが論じられ、藤原さんは「ショックを受けた」。『演劇最強論』の出版など、ここ数年「批評」という観点から時間と労力をかけて取り組んできたことがまったくかたちになっていないとしたら──。「このままではダメだ」。危機感を募らせた。

さらに「誤解を恐れず言うと」と前置きしながら、「若いアーティストの関心が彼ら自身に向きすぎている。世の中のことを勉強してそこから何かを吸収しようというよりも、自分の演劇作品をより洗練させるという方向へと力を注ぎすぎる傾向にある。そして僕もそれを擁護してきた手前、責任を感じる──というとおこがましいけれど、僕自身がバージョンアップをはからなければならないし、別の批評言語を獲得する必要がある」と考えていた。

藤原さんがこうした問題意識を抱いていた頃、東京文化発信プロジェクトの山口真樹子さんから「ドイツのマンハイムに行かないか」と声をかけられた。「行きます! と勢いで言ってしまった」。

(※)「フェスティバル/トーキョー(F/T)」は、東京・池袋を中心に開催される日本最大の国際舞台芸術祭。同演劇祭では2013年まで、アジア全域の若手アーティスト・カンパニーの自主公演をサポートする「公募プログラム」を実施、昨年のF/T13では日本国内から74件、アジア地域から63件、計137件の応募があった。また公募プログラムの全作品を対象に、新しい価値を創造する作品を顕彰する「F/Tアワード」が設けられ、選出されたアーティスト・カンパニーは次年度の「F/T主催プログラム」に招聘された。
「作品はパブリックなもの」という感覚

「テアター・デア・ヴェルト2014」では、チェルフィッチュや庭劇団ペニノの作品も上演されたが、藤原さんには「日本人作家の作品を観るだけでなく、演劇祭全体を観ることで、未知のものを浴びる」という意識もあった。そして3週間の滞在で、演劇祭で上演されたほぼすべての演目、三十数作品を鑑賞したという。

写真提供:藤原ちから

(アーティストトークの様子。写真提供:藤原ちから)
 
藤原さんは、マンハイムで出会った作品について具体的に説明しながら「基本的にどの作品も『問い』が投げかけられている感じがした。アーティストが作品を『私有』している感覚があまり感じられなかった」と語る。

アーティストは「これが僕の作品です、観てください!」とアピールするのではなく、劇場に作品をのせたらそれをどう受け取るかは観客に委ねる。アーティストトークでは作家と他の登壇者とで意見が異なることは当たり前。しかしその違いが「出発点」となりうる。「『作品はパブリックなもの』という感覚がある」と藤原さん。一方、日本ではどうだろうか。

「例えば東京など、作品が作られては消費されていくというモードでは、アーティストは『自分の作品を作り、認められたら“上”に行ける』という環境におかれている。そんな中で日本のアーティストの方が、作品に対して『俺が』『私が』ということ(=私有)が出やすいと思うんです。マンハイムではそういうことが無い、とは言わないけれど、マンハイムと日本では普段から作品を作っている時の意識や土壌がだいぶ違うのかなと思いました」。

また、「日本の若手アーティストは『呼ばれるの待ち』ではないか」と指摘する。「海外にいけば『経験』は積むことはできると思う。でも、どんなまちに行ってもアグレッシブな気持ちがなければ得られないものがある。そういう気持ちが欠けているような気がする」。そして「岡田利規さんなど海外でも積極的に活躍しているアーティストもいるが、もっと下の世代のアーティストでそういう意識の人が出てくるといいと思う。『範宙遊泳』などはそんな意識を持ち始めたように感じる。作品を見ていてもそれを思う」と期待を込めた。

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