Next舞台制作塾

【宮永ゼミレポート】第3回『同じ夢を見ること』

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Next舞台制作塾宮永琢生ゼミアシスタントのつくにうららです。第二回のレポート「創造とビジネス」はご覧いただけましたでしょうか?今回で宮永ゼミも第三回、いよいよ折り返しです!

 

宿題発表

さて今回も、前回の講座で出された宿題の発表からスタートしました。今回のお題は『自分と接点の無い公演、美術館、お店などに足を運んだり、何かを買ったりした時、きっかけになった広報をプレゼンする』というもの。

 

受講生からは、

 

 ・ラジオで流れていたピアニストの曲を、ラジオのパーソナリティが「良いですよね」と言ったのがきっかけで、Amazonで探して買ってしまった。
 ・居酒屋のトイレで見た「コカ・コーラで割らなきゃ、コークハイじゃない。」という広告が気になり、元々コーラは好きではなかったけれど飲んでみたことがきっかけで、コークハイにハマってしまった。
 ・コートを探しに服屋に行ったところ、マネキンが着ているコートに「50%OFF」と「人気 No.1」のポップがついており、他のものも一緒に買うと更に20%OFFだったため、思わずそのコートと一緒にカーディガンまで買ってしまった。

 

など、様々なエピソードが発表されました。

 

有名人が勧めるもの、目を引くキャッチコピー、値引きや人気のアピール・・・当たり前になりすぎてつい無意識に受け入れがちですが、私たちの身の回りには「広報」が溢れています。気になったものに目を向けてみることで、自分はどんなものに魅力を感じるのか、魅力的な広報はどんなものかを見つける手がかりになるのではないかと思いました。

 

今回のゲスト 坂本ももさん(ロロ/範宙遊泳)について

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今回はゲストとして、宮永さんのプロデュースユニットZuQnZに所属し、範宙遊泳ロロで制作をされている坂本ももさんをお呼びしました!

 

現在20代の若手制作者として第一線で活躍されている坂本さんですが、意外にも最初は蜷川幸雄さんの作品を観て演出家になりたいと思っていたそうです。演出の勉強をするために日本大学芸術学部に入学した坂本さんは、在学中から知人の紹介で蜷川さんなどの商業演劇の現場を手伝うようになります。

 

一方、同じ大学で後にロロを主宰する三浦直之さんと出会い、2009年の旗揚げ公演で号泣。その後ロロに加入し、制作者として紹介された宮永さんの現場などを手伝いながら、今までやったことの無かった小さい規模の演劇制作を勉強し始めました。

 

そして2010年に範宙遊泳主宰の山本卓卓さんが演出する公演を観て、範宙遊泳と山本さんに出会います。作品のファンになり、ちょうど専任制作も不在だったため、制作として加入し現在に至ります。

 

友達の延長から劇団員になったロロと、途中から所属することになった範宙遊泳では制作者として作品に関わるスタンスも異なるそうですが、宮永さんと坂本さん曰く「作家のセンス全てを理解する必要は無いし、できない」といいます。それによって、作品や集団を別の視点から見つめることができるため、届けられる観客の層を広げられる可能性もあるということでした。

 

また、運営が上手くいっていない集団に途中から入ることは、責任を負うことに対するリスクもありますが、それ以上にこれまでの集団の体制を見直すチャンスにもなるのだと感じました。集団内だけで停滞してしまっている状況を改善しより良い活動に向かうために、制作者がより広い視野から作品創作に携わっていく必要があるのではないでしょうか。

 

グループワークで集団について考える①

後半は、実際に3人1組になって劇団を作ってみるというグループワークを行いました。

 

1 メンバーそれぞれが必ず一つやりたいことを実現できる集団であること
2 役職は何でもOK(制作だけ、役者だけのユニット等も可能)
3 集団内でのパワーバランスは全員が対等であること

 

この3つのルールの元、その劇団で公演を打つと仮定し公演概要を作成しました。

 

Aチームは、
「家の入居から退居までを作品にしたい主宰」
「人の心を揺さぶる芝居がつくりたい俳優」
「誰かがやりたいことを実現したい制作」
が集まって、3ヶ月間同じ家に滞在しながら作品を作り、その創作過程やそこでの生活も公開する公演を考えました。

 

Bチームは、
「リーディング公演でツアーがしたい俳優」
「演劇の仕組みについて考えたい演出家」
「一般の人も出演できる公演にしたい空間デザイナー」
による、新しいリーディング公演の提案でした。ツアーで巡る各地の映像や声を作品に取り入れ、ツアーを重ねるごとに変化していく作品を目指します。

 

Cチームは、脚本家・演出家・プロデューサーを擁する団体として立ち上がりました。
シェイクスピアの「ヘンリー六世」3部作を、階の違う2つのギャラリーを行き来しながら一挙上演することを目指します。総予算は200万円、チケット代は3500円など、公演に関する具体的な数字があがったのが特徴的でした。

 

Dチームは、
「町ぐるみのパフォーマンスがしたいテクニカルディレクター」
「エンターテイメント性のある作品を作りたいプロデューサー」
そして「団体のマスコットキャラのモデル」
という、マスコットキャラを擁する異色のチーム。演劇を通して地域の問題について考え、地域活性化を目指して活動します。

 

どの団体も、まず受講生自身が興味のあることを提示し、それを団体内で照らし合わせて可能性を探っていました。各々のやりたいことをベースにして活動の方向性を決めることで、メンバーそれぞれがその団体に属する必要性が生まれることを実感できたように思います。

 

グループワークで集団について考える②

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さてここで、宮永さんより各チームへ次の課題が出されました。「紙に書かれた幾つかのお題の中から一つを選び、自分たちの団体に依頼が来たと仮定してどのようにその依頼を実現するか考える」というものです。

 

ちなみに、各チームから選ばれなかったお題を簡単にご紹介すると、「ドイツの演劇祭から、劇団の代表作が招聘された」「劇場が無く観客もいない小豆島で滞在制作を行う」といったものでした。

 

Aチームは、
・世田谷区の公共ホールからの公演依頼
・某有名俳優を起用し、ツアーを行う
・スタッフは 50人、予算は5000万円
というお題を選び、団体所属の俳優を起用して公演に挑むという案を考えました。なお予算は5000万円では足りないため、助成金を利用するとのことです。

 

Bチームは、
・青森県の廃屋を利用して滞在制作を行う
・その廃屋に住めるようにするためには、修理に一ヶ月かかる
・廃屋はどのように利用しても良い
というお題を選びました。まず予算が足りないため、その地域でのスポンサー探し、助成金利用、さらにリーディングのWS を開き、その参加料を利用するということでした。このプロジェクトを通し、この土地にかつて住んでいた人達の声を集めた作品作りや、各地の過疎地のネットワーク化を目指します。

 

Cチームもお題は同じく青森の廃屋利用プロジェクトでした。このチームは、青森が生んだ文豪太宰治の作品を上演し、公演の最後にはその廃屋ごと燃やしてしまうというアートプロジェクトを考えました。

 

Dチームもなんと同じく青森の廃屋利用プロジェクトを選択。企業や行政からの援助を受けながら、廃屋を宿泊可能な施設にして収入を得ます。また、既に土地を離れてしまった人達の話を題材に作品を作り、旅行会社と提携して青森行きのツアー行程に組み込んでもらうことで観客を増やします。

 

以上で今回の講座は終了となりました。後半の2つの発表を通して、いかに自分でその集団にいる意味を見出せるかがとても重要だと感じました。

 

前半の坂本さんのお話からもわかりますが、集団に属するきっかけや理由は様々です。しかし活動を共にする中で、自分は何がしたかったのか、自分がここにいる意味は何なのかが分からなくなってしまう瞬間が訪れることもあります。そして、それが続くと、集団での活動に疲弊したり、作品創作のための作業がルーティーンワークになってしまったりすることに繋がります。もしもそういう状況に直面してしまったら、改めて自分がこの集団でやりたいことを見つめ直してみることで、現状を改善できるヒントに出会えるのかもしれませんね。

 

ということで、第三回のレポートは終了です。第四回では「ネットワークの構築」というテーマで、自分たちの活動を広げるためのネットワークづくりについて考えます。

 

ということで、宮永ゼミアシスタントのつくにうららでした。次回もどうぞお楽しみに!

2014年02月19日 講義・セミナーレポート