Next舞台制作塾

舞台制作者の職能とは何か?社会と芸術をつなぐ現場の実践型アーツマネジメント

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こんにちは。Next舞台制作塾事務局の斉木です。
舞台制作塾では11月5日(水)より、武田知也ゼミ「制作者たちが考える実践型アーツマネジメント―舞台芸術の可能性を拡げる基礎スキル」が開講します。今回実施するゼミは、「舞台芸術の可能性を拡げる」ことをキーワードに、舞台公演を行うことだけにとどまらず、作品やアーティストと社会の様々な要素をつなげる役割を意識して、制作の仕事を現場の視点から考察し、力を養っていく「実践型アーツマネジメント」講座です。

 

武田知也さんは、2011年~2013年に「フェスティバル/トーキョー」で制作統括を務めた制作者です。今年4月のオープンセミナー「舞台制作者の職能、徹底分析!」にもご登壇いただきました。今回のゼミのタイトルに「実践型アーツマネジメント」という言葉が入っていますが、武田さんは4月のセミナーでも「アーツマネジメント」という言葉を使っていました。「社会」と「芸術活動」を対置して俯瞰し、その両者をつなぐためにはいろいろな仕事があり、それらすべてが制作者の仕事といえるというのです。そこで、11月のゼミ開講に先駆けて、このオープンセミナーでお話しした内容を、かいつまんでご紹介したいと思います。

総合的な学び「アーツマネジメント」、さまざまな専門性が求められる仕事「舞台制作」

さて、いま「『社会』と『芸術活動』を俯瞰」するとざっくり書きましたが、ここでいう「社会」とは何でしょうか?武田さんは、「異なるミッションを持った主体」というふうに説明しています。例えば、行政、企業、NPO、市民などの主体が、文化、教育、まちづくり、観光、福祉、国際交流、科学、エンターテイメント、生活などなど、じつにさまざまなミッションを持っています。主体やミッションはさまざまですので、それらとどのような形で「芸術活動」をつなげ、成立させたらよいかを考えるのが「アーツマネジメント」です。

 

この20年ほどで、アーツマネジメントを学べる大学の数が増えましたが、それまで制作者の教育を担っていたのは、主に新劇などを中心とした劇団でした。しかし、劇団での教育は、劇団のあり方や、劇団で作られる作品の芸術的価値、劇団内で求められる技量を教育するものですから、アーツマネジメントを総合的に学べるわけではありません。

(表)仕事の分類と主な仕事・例

「社会」と「芸術活動」をつなげる仕事は、舞台公演の企画・運営や、アーティストのマネジメントだけではありません。さまざまな表現がアートと呼ばれるようになっていったのと同じように、「アーツマネジメントの概念、役割も時代や場所によって、変化、拡張し続ける」のだと武田さんは言います。

 

この表は、舞台制作に関係のある仕事の例を挙げたものですが、こうして挙げていくと実に多岐にわたることが分かります。この多岐にわたる仕事の役割や専門性を理解しないまま、いま実際に取り組んでいる仕事のみが制作の仕事だと思い続けることと、いろいろな仕事があることを理解したうえで自分にとって「これだ!」と思える業務を認識し、なおかつそれが「芸術と社会にとって重要な仕事になる」とイメージしながら仕事に取り組んでいくことは、仕事の質や周りに与える影響が全く違うと武田さんは言います。

舞台制作者とリーダーシップ

この日、武田さんはアメリカン・エキスプレスのリーダーシップ論をご紹介いただきました。アメリカン・エキスプレスでは、「リーダーシップはリーダーだけのものではなく、一人一人にあるものだ」という考えのもと、リーダーシップを人事評価の基準に据えています。

リーダーシップに求める行動(リーダーシップ・コンピテンシー)
・Creat Our Future [戦略性、創造力]
・Inspire Our People [関係構築能力、コミュニケーション能力、人材育成能力]
・Excite Our Customers [顧客尊重]
・Deliver on the Promise [実行力、誠実さ・成熟度]

これらは、一般的な仕事の現場においてもおおむね該当する内容だと思いますが、これらを徹底することは非常に高度なビジネススキルであると思います。制作者も、「社会」と「芸術活動」を結ぶためのさまざまな局面で、リーダーシップを必要とされる仕事です。

 

武田さんは、「社会で働く一流のビジネスマンたちはこうしたことを徹底している。全部できる必要はないが、こういう人たちの中で言葉を交わしていくことを意識するのもすごく大事」だと話しています。

【参考】アメックス副社長 菊池氏「時代が求めるリーダー像を、4つの類型と8つの要素に大別した」(ビジネスIT) ※閲覧には無料の会員登録が必要です。ご興味のある方は登録してお読みください。

これまで舞台制作塾では、企画、予算、広報、運営などの基礎的な実務スキルを取り扱ってきました。けれど、今回の講座でフォーカスする「基礎スキル」は、そういった実務の基礎というよりも、制作者として、自分の10年後、20年後のビジョンを描くための地盤固めとしての基礎です。舞台制作者として仕事を続けていきたい方、制作の仕事を始める前にキャリアプランニングをしたい方に、ぜひ受講していただきたい講座です。

 

10月6日には、受講に関する質問・相談にお答えする受講説明会を開催予定です。また、質問や相談は随時受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

Next舞台制作塾 武田知也ゼミ
「制作者たちが考える実践型アーツマネジメント―舞台芸術の可能性を拡げる基礎スキル」

期 間 2014年11月5日(水)~2015年1月28日(水) 全9日間・10回
受講料 一括21,600円(税込)
会 場 Nextミーティングルーム(東京都江東区亀戸7-43-5 小林ビル 2F)
 
★ 説明会開催 ★
10月6日(月)19:30~20:30、Nextミーティングルームにて。
Next舞台制作塾について、ゼミの内容について、質疑応答、個別相談などなど。(終了しました)

2014年10月06日 講義・セミナーレポート