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【井神ゼミレポート】第三回「カンパニーの成熟を誘い出すために」


こんにちは、井神ゼミに参加しております、Next新入社員の石井です。6月14日、前回から約2週間空いて、井神ゼミの第3回講義が行われました。今回は、事前に「予算シミュレーションの“自由研究”」として受講生に提出してもらった予算書を見て、井神さんがコメントしていくという形式になりました。

 

クラシックコンサートや小劇団、海外でツアーをやる場合など、様々なシチュエーションの予算書が十種類ほど提出されました。この中から、受講生がどのようなテーマで予算書を作り、どのような工夫が生まれや、どんな課題が残ったのかを、三つほど紹介したいと思います。

 

大学生だけで公演を打ちたいAさんの場合(学生劇団の公演)

[テーマ]
・学生劇団が初めて学外の劇場で公演を打つ。
・資金がないので、なるべくお金をかけず、且つ赤字の出ない公演にしたい。

 

[そのために]
・なるべく劇場費の安い劇場を探す。
・台本はデータで送り、各自で印刷してもらうので、台本印刷費を予算に計上しない。
・衣装、小道具をなるべく持ち寄りにして、予算を必要最小限に抑える。

 

[課題]
・学生劇団の場合、チケット販売は役者が友人に手売りするのがほとんどなので、チケット料金を高く設定できない。(チケット収入が少ない)
・電気代も別途かかるのだが、公演でいくらの電気料金がかかるか分からない。

 

[井神さんからのアドバイス]
・劇場は想像以上に電気代がかかるので(特に舞台照明)、きちんと調べておかないと計算以上の出費が出てしまう。
・劇場は値段の安さだけに注目せず、その劇場にその公演に必要な設備・機材があるかも視野に入れて選ぶ。そうしないと、劇場費を節約しても、かえって機材費がかかる場合がある。

 

長崎に劇場を持つBさんの劇団が都市に進出する場合(長崎―大阪公演)

[テーマ]
・劇団の認知度を上げるために、長崎以外でも公演を打ちたい。

 

[そのために]
・長崎の公演は持ち小屋で行い、劇場代・稽古場代をかけない。なるべく黒字になる予算計画を立て、大阪公演の費用に充てる。
・「大阪公演応援」と銘打ったTシャツを物販用に作る。
・大阪公演の集客を増やすために、大阪の役者をキャスティングする。
・長崎~大阪間の交通費は、劇団員に一部負担してもらう。

 

[課題]
・大阪公演では広報などの制作業務を外部に委託したいが、どの程度予算を割けばいいのか分からない。

 

[井神さんからのアドバイス]
・物販としてのTシャツは、売れ残って在庫を抱えたときにかさばり管理が大変なので、発注数や価格は慎重に検討したほうが良い。
・初めて公演する土地では、その土地の事情に詳しい人(地元のイベンター、制作者など)を探し、業務を委託したほうが宣伝・広報、チケット販売などがスムーズに進む場合が多い。その際、事前に予算や委託内容を綿密に打ち合わせして支払う金額をはっきりさせておくと良い。

 

東京を拠点とするCさんの所属劇団が、10年後に地元で凱旋公演を行う場合(東京―秋田公演)

[テーマ]
・所属劇団が10年間で活動規模を拡げたと想定。
・活動拠点の東京と、地元の秋田でツアーを行いたい。

 

[そのために]
・地元で活動を始めた頃と同じように、できるだけ大道具を減らして輸送コストを削減。大道具の費用は衣装や小道具に回す。
・秋田公演では、地元の助成団体から助成金を得る。
・劇団員の実家に宿泊して費用を削減する。
・Tシャツや台本などで物販収入を得る。

 

[課題]
・制作委託費(当日運営)が交通費のみ
・物販用グッズの製作費と販売価格を同じにしてしまった。

 

[井神さんからのアドバイス]
・10年後、今よりも大きな劇場で上演するなら、チケット代は劇場の規模に応じて値上げして収入を増やしていくことになるだろう。
・物販の価格や発注数は検討が必要だが、台本は公演資料として広報や営業に使うことができるので、多めに印刷しておくと後々役に立つことがある。

 

提出された予算書は、私にはどれもきちんとしたものに見えたのですが、予算書を作った本人達は、まだまだ課題が残っていると感じているようでした。井神さんは各人の課題に対してとても丁寧にアドバイスしていました。

 
 

地域によって公演を行う環境が違う


今回の井神ゼミでは、仙台や長崎、関西圏など、東京以外で主に活動している制作者が多く受講しているのですが、地域によって公演を行う環境が違うのが印象的でした。

 

例えば、「京都の劇団は無料で使える公共施設で稽古をするので稽古場代がかからない」、「公共ホールによっては、公演のチケット代によって劇場費が変動する」など、その地域の特色が予算書にも表れていると感じました。また、その地域の特色をうまく利用するのもテクニックの一つなのだなと思いました。

 
 

さて、井神ゼミも次回で最終回です。次回は、プレイガイドの話と、資金繰りに関しての話をみっちりしてくれるようです。最後はどのようなお話を聞かせてくれるのでしょうか。楽しみです。(石井)

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