Next舞台制作塾

【井神ゼミレポート】第一回「公演予算の作り方と予算管理」

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初めまして、Next舞台制作塾 第五期 井神拓也ゼミ「予算から考えるカンパニー戦略」に参加しております、新入社員の石井です。井神ゼミで行われた内容や風景をレポートしていきたいと思います。よろしくお願いします。

様々な地域から、幅広い経歴の人が集まりました!

今回のゼミでは、ヨーロッパ企画の制作である井神拓也さんから、公演を行うのに大事な予算についてのお話を聞いたり、グループワークを行って実際に予算書を作ったりします。とにかく『予算』というものに特化した、計4回のプログラムです。5月24日、その井神ゼミの第1回目が行われ、約25名の方が集まりました。

 

まずは、参加者の方々の自己紹介タイムから始まりました。現役大学生や、劇場の小屋付きさん、「長年自団体の制作をしているが、もう一度勉強し直したい」という方まで、幅広い経歴の方々が集まりました。今回は東京近郊だけでなく、仙台で活動している方、関西を中心に活動している方、長崎で活動している方など、各地から多くの方が参加していました。

 

来公演の目標、団体の目標

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次に、公演予算についてのお話。「赤字を出さないためには?」「どうやったら黒字になるか?」これは公演に携わる人間は誰もが考えることだと思いますが、それだけが全てではなく、公演ごとの目標や、カンパニーごとの目標を見極め、予算を「何に」、「どれだけ」使うのかを考えることが大事だと井神さんは仰っていました。今回のゼミでは、次のような具体例が挙がりました。

 

【公演ごとの目標を見極める】
作品の芸術性を取るのか、団体の利益を取るのか。
[例]たとえ赤字になってでも表現したいメッセージがある。
   今回の公演で黒字を出して、次回公演の規模を大きくしたい。

 

今公演の財源は何か。
[例]入場料で賄う。
   入場料+出演者の負担金で賄う。
   決められた上演料の範囲内で行う。

 

【団体の目標を見極める】
カンパニーメンバーを「満足」させるものは何なのか?
[例]能力や技術に見合ったギャランティが欲しい。
   ステップアップのために、お金を払ってでもフェスに参加したい。
   舞台上で表現できるだけで満足だ!

 

井神さん曰く、「収支を合わせるだけなら制作でなくてもできる。いかにお金以外の部分で公演に関わる人たちを満足させられるか。それを考えながら予算書を組むのが制作の仕事だ。」

 

ディスカッション&シミュレーション

最後に、架空の劇団の予算表を使ってのディスカッションタイムとなりました。ここでは、スタッフ費の相場や、お弁当代・打ち上げ代に関する取り決めの東西での違い、当日運営スタッフへのギャランティの支払い、などなど、様々な意見が出てきました。

 

思いのほか様々な意見が出たので、ここで急遽予定変更。実際に、関西のカンパニーが東京と関西で公演を行うことを想定して予算を組んでみることになりました。まずは参加者の方々の意見を取り入れながら、チケット代を決めて動員を予測し、収入を出します。そして、劇場代、スタッフ費、宣伝費を支出として算出していき……といったところで、講義終了の時間が。

 

出来上がった予算書では約45万円の赤字でした。本来なら、ここから「これほどの赤字を出してでも決行したいツアーかどうか」を考え直したり、支出を抑える方法・収入を増やす方法を模索したりと、細かく精査していくのでしょう。

 
 

井神さんのお話を聞いて、予算書に打ち込んである数字は単なる金額ではなく、団体や作品に対する想いのこもったものであることを実感しました。数字にこめられた想いや意図を知ると、予算書は赤字、黒字だけが見るべきポイントではないということがよく分かります。
なにより、参加者の方々と予算書を作っている時の井神さんの顔が、とても楽しそうだったのが印象的でした。

 

次回のゼミでは、このような公演予算のシミュレーションを参加者が実際に自分で行い、予算表を作っていきます。どんな話が聞けるのか、また、グループワークでどんな予算書ができあがるのか楽しみです。(石井)

2014年06月05日 講義・セミナーレポート