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【宮永ゼミレポート】第五回『演劇に求められているもの』

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Next舞台制作塾宮永琢生ゼミアシスタントのつくにうららです。
第四回はこれまでの三回とは少々趣向を変え、「ネットワークの構築」と題し活動が社会や地域と繋がっていくことについて考えました。いよいよ宮永ゼミも最後の回、第五回のレポートをお届けいたします!

 

宿題発表

今回の宿題は、前回のテーマを踏まえて「自分が影響を受けている人/自分自身が影響を与えている人」を発表しました。

 

まず自分が影響を受けている人は、周りの友人、先輩や後輩、家族などから、これから仲良くなりたいと思っている人、興味があり注目している人などが挙がりました。確かに、Twitterなどで有名人などのツイートを見たり、Blogを読んだりすることによって、自然と影響を受けたり、イベントや公演を知ることも多くありますね。また、仲良くなりたいと思っている人が今注目しているもの知ることによって、自分が興味を持っていることとの共通点を探ったり、どうすれば繋がることができるかを知る糸口にもなるかもしれません。

 

続いて、自分自身が影響を与えている人は、同じく友人、後輩、さらに自分の団体のメンバーや、自分の働いている劇場に訪れる人などが挙がりました。中には、地元の商工会議所と交流があり、そこで様々な情報のやり取りを行うことによって自分の影響力の及ぶ範囲が広がってきているという面白いケースも。

 

自分から情報の発信源となることで、活動に興味を持ってもらったり、一緒に活動する人が見つかる近道になるということがこのケースから改めてわかりました。

 

「演劇に求められているもの」

さて、最終回のテーマは「演劇に求められているもの」。自分たちが日頃行っている演劇という活動でいかに社会や地域と繋がりをもつか、また社会や地域から私たちの活動は必要とされているのか、といった事柄について考える回となりました。

 

アーティストがより幅広い活動をしていくためには、活動資金の確保(助成金)、活動場所の拡大など、より多くの人に理解を得て、作品や活動を必要としてもらわなくてはなりません。まずは、自分たちのしていきたい活動と、地域でいま必要とされていることを織り交ぜながら活動の場を広げていったいくつかの事例を宮永さんとNext舞台制作塾の藤原さんより紹介してもらいました。

 

全国には様々な事例がありますが、近年、使われなくなっていた施設などを活動の場として改築・転用する事例が多く見られるようになりました。アートに関わる人々の「活動場所がほしい」という欲求と、地域社会の「コミュニティ再生の場がほしい」という欲求がマッチしたとき、こうした施設はうまく機能するようになります。

 

さらにその地域のキーパーソンとなる人や高齢者をリーダーとして起用するなど、地元の人々が積極的にアーティストと協働してくれるような仕掛けや環境を作ることによって、活動に理解を得ながらより深く地域に根ざした活動を行うことができます。

 

アーティスト自身の創作の場、そして地域の人々や子供たちが集う場、活動の場としての機能をバランスよく両立させながら、社会に必要とされる活動を探し続けていくことが重要であると思いました。

 

私の田舎/住んでいる所から求められているものは何か?

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ということで、本日の課題は「私の田舎、もしくは現在住んでいる所から求められているものは何かを考える」というもの。まずはこれまで生活していた中から感じた「この土地の抱えている問題」を考え、「この土地にはいま何が必要なのか、芸術やアーティストが出来ることは何なのか」をディスカッションし、発表しました。

 

受講生の発表をいくつか抜粋して紹介します。

 

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【Hさんの故郷が抱えている問題】
・焼き物が有名
・過疎化が進行している
・大きなお店のせいで商店街がシャッター街になってしまった
・町おこしのためにやった伝統芸能のお祭で死者が出てしまい中止に

 

【Hさんの故郷に芸術やアーティストが出来ることは何なのか】
・お年寄りに市民劇をつくってもらい、若者がいないということをわかってもらう
→演劇祭へと発展させ、招聘したアーティストにシャッター街の空き店舗などを利用して公演を行ってもらう
・町の伝統の太鼓を復活させる
・ネットでの宣伝方法を広める
これらのことを通して、町の人たちに外から人を呼ぶことや、芸術の魅力をわかってもらう

 

【Mさんの地元が抱えている問題】
・平地が多いため自転車の利用者が多い
・しかし自転車事故全国ワースト6
【Mさんの地元に芸術やアーティストが出来ることは何なのか】
・自転車に安全かつ楽しみながら乗れるようなイベントを開催する
→自転車の歴史紹介、マナー講座、曲乗り(大道芸)、自転車が出てくる作品の上演、LOGBOOKと自転車のコラボなど

※「LOGBOOK」……市原幹也さん(演出家)と野村政之さん(ドラマトゥルク/演劇作家)が共同開発した演劇プロジェクト。いつもと違う視点でまちを歩き、その「logbook;航海日誌」を交換することで、他者の記憶の追体験をする試み。

 

【Fさんの地元が抱えている問題】
・とにかく何もない
・町のお店が閉まるのが早いため、住んでいる若者たちと町の生活時間がずれている
・電車一本で都内へ行ける為、地元が発展しない
・他の町と合併したが生活は何一つ変わらない

 

【Fさんの地元に芸術やアーティストが出来ることは何なのか】
・若い人が町のお祭に参加していないので、若い人に企画をしてもらう
・星のきれいな夜にLOGBOOKを開催
→芸大生とコラボし行灯の制作をしてもらう
→ガイドを地元の人に依頼
・ショッピングモールの空き店舗を利用して催しを行う

 

以上のような案が発表されました。

 

その土地の地域性の活用、幅広い年齢層の人が協力して参加できることなどは、どの土地においても重要なポイントであるように感じます。また、行政の人たちもその問題に対する意識を共有できているか、アーティスト側からの一方的なアプローチだけでなく地域や社会から必要とされているかどうかということを考えながら活動していくことが大切だと思いました。
これで今回の講義は終了となります。

 

最後に全五回のまとめとして宮永さんより、「演劇をはじめとする表現活動は人生を豊かにしてくれる一つのツールです。だからこそ、あなた自身の生活が豊かになるように演劇を使ってください。なにも自分の人生すべてをかけてまで演劇をやる必要はありません。そんな何でもないことを少しだけ頭の片隅に置いておいてもらえれば、と思います。そして、せっかくやるなら重要なことがもう一つ。何事も好奇心に勝るものはありません。いい仕事(表現活動)とは、あなた自身が楽しんで取り組んでこそ、はじめて成り立つものだという事を忘れないでください。」とのお話がありました。

 

この宮永ゼミは、プロデュース、広報、集団性、ネットワーク、社会と地域というトピックを扱いながら自分の興味関心と向き合うことで、自分のやりたいことは何なのか、出来ることは何なのかについて考える場となりました。受講生の皆さんが今後に繋がる手がかりを見つける場になったのではないでしょうか。

 
 

ということで、全五回に渡りました宮永ゼミレポートも今回で終了です!アシスタントの視点からみた宮永ゼミレポート、少しでも読んでくださった方のお力になれれば幸いです。最後までお付き合いいただきありがとうございました、宮永ゼミアシスタントのつくにうららでした!!

2014年03月19日 講義・セミナーレポート