Next舞台制作塾

【宮永ゼミレポート】第2回『創造とビジネス』

miyanaga02_01
Next 舞台制作塾宮永琢生ゼミアシスタントのつくにうららです。第一回のレポートはお楽しみいただけたでしょうか?では、さっそくですが第二回の講座のレポートをお送りいたします!

 

宿題発表

今回はまず、前回の講座で出された宿題の発表からスタートしました。宿題のテーマは『他の人はあまり気づいていない、自分が興味のあることをプレゼンする』というものでした。プレゼンの内容は好きな小説や、薬を包む「オブラート」の紹介、更には海外の通販サイトの紹介(しかもパワーポイントを使用してのプレゼン!)に至るまで様々でした。どなたも第一回目の講座でやったことを生かし、短時間の中で具体的かつ魅力的に伝えられるかチャレンジしていたように思います。

 

『創造とビジネス』について

さて、いよいよ講座も本題へ。第二回目のテーマは『創造とビジネス』。まず宮永さんより、集団で作品を創作していきながら、徐々に公演規模を拡大していく時の基本的な流れの解説がありました。

 

小劇場をベースに活動している団体が大きくなる場合、
【小劇場で作品が評価される】

【助成金・公共ホール・地方自治体等の予算を獲得する】

【活動の拡大(国内・国外・大劇場での公演・有名タレントの起用等)】

【新たな収入源探し(活動場所・新規顧客)】

 

このように公演の収入だけで活動の範囲を拡げるのに限界が来た時は、国や企業からの助成金や、地方自治体からの援助を受けて活動を拡大していきます。この手段は、小劇場だけで活動しているとなかなか縁がなさそうに思えてしまいますが、現在有名な劇団も昔はこういった制度を利用して大きくなっていきました。

 

また、「どんどん活動が大きくなっても、団体として常に新しいことを発信していかなければお客様は飽きてしまう」というお話が大変印象的でした。確かに、どんなに有名で定番のファミリーレストランも、常に季節限定や新しいメニューを提供し続けていますね。演劇も同じように、いかにお客様が見たいと思う新しいものを作り出していけるかを考え続ける必要があると思いました。

 

自分たちの顧客を把握する

miyanaga02_02
続いて、各個人で自分たち(個人/所属劇団)の顧客について把握してみる作業を行いました。

 

① どんな顧客が多いか?
② どんな人にどんな宣伝をしていくか?
③ 今後、どんな顧客をどのように増やすか?

 

この3項目をリストアップし、発表しました。

 

①は、やはり同業者、関係者の友人が多いようでした。劇団で制作をやっていらっしゃる方の中には「30代以上の男性」や「教育関係者」など、より細分化して把握されている方もいらっしゃいました。多くの劇団が導入している観劇後のアンケート等を利用し、自分の団体がどういう層に受け入れられているかより明確に把握すると、今後の活動に役立ちそうですね。

 

②では、演劇の宣伝で定番のチラシ、というのが多くあがりました。私もチラシはお客様と最初に出会う公演の顔だと思って、相当力を入れて作ります。その他、個人からメールを送る、TwitterやFacebookを使用する等はもはや定番のようで、個人/劇団問わず皆さん利用されているようでした。

 

③で最も多かったのは「普段演劇を観ない人」に観てもらいたいという意見でした。公演に新しいお客様を呼び込み団体の認知度を上げるためには、日頃観劇をしない層からの認知も必要不可欠であると思います。その為の宣伝方法として、「演劇公演っぽくないチラシを作る」「新聞や雑誌などで取材してもらう」「公演のない期間に映像を作ってYouTubeにアップし、観てもらう」「学校や養護施設等に出向いて公演を行う」等の案があがりました。やはりどの受講生も、集客に関しては似たような状況を抱えているようです。

 

新しいお客様に出会いたくても、どこにいるのかわからない、どうしたら出会えるのかわからない・・・。集客や広報で悩んでいる方は、皆さんこんな状況を抱えているのではないでしょうか?
宮永さんは作品を売っていく時に「自分が『観たい』と思う感覚を大切にする」ことが大事だとおっしゃっていました。自分は何が観たいのか、どういう宣伝をされたら行きたいと思うのか、を客観的に考えてみることで、自分たちの公演に必要な宣伝方法が自ずと見えてくるかもしれませんね。

 

具体的な症例の検証

miyanaga02_03
後半は、前半あがった意見の中から2つの事例を取りあげ、有効な広報や活動の拡げ方についてディスカッションを通して考えていきました。

 

まず1つ目はKさんの事例。Kさんは現在とある劇団で演出をされています。活動を続ける中で、通常の劇場公演ではなく客席にソファーや布団を持ち込んだ公演や、ご飯を提供するカフェ公演などを展開するようになり、次第に食や生活と演劇を結びつけて考えるようになったそうです。

 

そんなKさんに対する提案は、
・オーガニック食材やスローフード等を取り上げる雑誌に宣伝を出す
・ドキュメンタリー映画の監督とコラボし、創作過程から映像として公開する
・WEB のレシピサイトとコラボし、公演内容に沿ったメニューのコンテストを行う。
といった案が出ました。
 

Kさんの団体は食や生活に通じる演劇をしているということで、団体のカラーがはっきりしています。その為、どういった雑誌、どういったWEBサイトにアプローチしていけば有効なのかといった具体的な提案が出たのではないでしょうか。

 

確かに、雑誌や WEB サイトといっても世の中にはたくさんあります。自分たちの活動と照らし合わせたときに、より有効利用が出来そうなジャンルを見極めていくことが必要だと思いました。

 

続いて2つ目はSさんの事例。Sさんが制作を務める団体は、都内での活動の他にも他県での演劇祭に参加しており大変意欲的です。また、舞台美術にはダンボール等のゴミを加工したものを使用しているのが特徴で、将来的には学校や養護施設等の施設ごとの公演を行いたいとのことでした。

 

そんなSさんに対する提案は、
・小学校で子供たちとダンボールの作品創作をし、それを学校公演の舞台で使用する
・その地域でゴミ拾いをし、材料を集める
といった案が出ました。

 

この、地域のゴミ拾い・ゴミからの作品創作・それを利用した学校公演の案を複合して、「お掃除演劇」というタイトルまであがり、団体の特徴であったゴミを再利用した舞台美術と、実現したい学校や養護施設での活動が結びつきました。

 

自分たちがやりたいと思っている活動への近道は、実は自分たちの団体の特徴を客観的に見直してみることなのではないかな、と思えた瞬間でした。

 
 

以上で第二回のレポートは終了です。今回はそれぞれの顧客の把握~新しい顧客の獲得のための広報について考えました。広報に関する悩みはどなたも意外と共通しており、その中でいかに自分たちにとって有効な広報の方法を見出すかが、今後の活動の拡大に繋がるのだと感じました。

 

しかし、自分たちのやりたい表現活動と、それをお客様のもとに届けるビジネス的な側面は、それぞれの公演や団体によってバランスが違うというのも認識しておかないといけないように思います。自分たちは今後どういったフィールドで活動していきたいか、どんなことができるようになりたいかを考えながら、新しいことに常に挑戦し続ける必要があるのだと改めて再認識できました。

 

第三回の講座では、ゲストに範宙遊泳ロロの制作をされている坂本ももさんをお呼びします!テーマは「同じ夢をみること」。集団で創作を行うことについて考えていきたいと思います。

 

ということで、宮永ゼミアシスタントのつくにうららでした。次回もどうぞお楽しみに!

2014年01月27日 講義・セミナーレポート