制作ニュース

柿喰う客 女体シェイクスピア001「悩殺ハムレット」制作・斎藤努(有限会社ゴーチ・ブラザーズ)

12.04/01

男優社会の演劇シーンに一石を投じる企画、“女体シェイクスピア”


(c)引地信彦

――プロモーションと言えば、今回はいろいろなソーシャルメディアを使ったり、たくさんのチャレンジをしていましたよね?ああいったアイデアはどこから生まれたんでしょうか?

制作って、あまりクリエイティブになり過ぎてもダメなんですけど、基本的には、照明や音響と同様にクリエイティブな仕事だと思うんですよね。だから、「公演を作るための雑用」だとか、「縁の下の力持ちで役者のために働いてます」とかじゃなく、「この作品ではどんなクリエイティブなことができるか」を考えていくことの方が楽しいと思う。その思いから、各公演では必ず何か一つ、制作的なアイデアで実行できる企画を仕込もうと思ってるんです。今回でいうと、一番分かりやすいのは乱痴気公演*6のキャスティングをTwitter投票で決めるっていうものですね。あれは僕と大阪制作チームの間屋口君とで乱痴気公演のキャスティングどうやって決めようかって話していた時に、ちょうどAKBの総選挙が話題になっていたので、それを真似てファン投票にしたらいいんじゃないかってことになったんです。で、中屋敷に提案したら乗ってくれて、中屋敷としては全員に投票だと実際の上演が難しいので、という理由で3パターンの配役を考えてもらい、それぞれにチーム名をつけてどのチームを見たいか投票してもらった。これがかなり話題にもなったし、投票した人からすると自分がアクティブに関与したんだから観に行かなきゃ、みたいな思いも生まれるのでとてもよかったですね。しかも、途中からは役者がTwitterで「実は私もハムレットやってみたかったんです!」ってファンを煽りだしちゃったから、かなり盛り上がりました。最終的には4,000票ぐらい集まりました。よく分かんないのは、ノルウェーとか、アメリカから投票している人もいたんですよ。「こいつら何見て投票しようと思ったんだ?!」って(笑)。

――(笑)『ハムレット』っていうキーワードに引っかかったのかな?

多分そうだと思います。

――これも『ハムレット』っていうスタンダードなテキストだからこそ出来たことの一つですよね。誰もが役柄を知っているから、キャストもお客さんも巻き込める面白い企画になった。

それまでの公演で実施してきた「乱痴気公演」とは違うやり方だったので、既存のファンからは、「最初に配役が分かっちゃうと興味が薄れる」というような意見もちょこちょこいただいたんですけど、それも含めて新しいことをやってみないと分からないことがあるので、まずはチャレンジしてみることが大事だなと思いますね。

――何かに捉われない、「せっかくだから今回できることをやろうよ」っていう姿勢こそ「柿喰う客」の真骨頂な気がしますね。Ustreamで全編を中継してしまうというのもかなりのチャレンジですよね?

もともとは「乱痴気」公演は配信せずに、通常の公演だけを配信して各地域での公演につなげていこうと計画していたんですけど、東京の「乱痴気」公演がちょうど台風が直撃した日で、本番を観られなかったお客さんが相当数いたので、「それじゃあどっちも配信しましょうか」っていう流れになって、2日間、夜10時から中継をしました。全編を流してしまうということについては、相当スタッフ内で議論になりましたね。大阪制作チームから、「全編観れちゃうと大阪のお客さんが減ってしまうんじゃないか」という意見も出ました。「確かにそれはあるな」と思って相当悩んだんですけど、最終的には「映像で全編観て満足してしまう人は、元々劇場に来ないから気にしなくていいんじゃないか」という思いが強かったので、公演期間中にもかかわらず、全編を配信しましたね。

――それは勇気ある決断だったと思いますよ。大阪制作チームの危惧は当然だと思うし。ただ、確かキャラメルボックスが舞台映像のビデオ販売を始めた時も、周囲は半信半疑だったそうですよね。「ビデオを観たら劇場に来なくなっちゃうだろ」って。でも、結果的にキャラメルボックスはそれでお客さんを増やしたんですよね。舞台だけだと届かない人に知ってもらえるきっかけになるし、「生で観たい」っていう気持ちを沸き立たせることにもなる。

そうそう。やっぱり僕は生の強さを信じてるし、基本的には演劇ファンってみんなそうなんじゃないかな?と思ってます。実際、UST配信をしたことで柿のことを全く知らなかったお客さんが劇場に来てくれたり、予想もしなかった効果もあったので、そういう意味ではもっともっと開いていっていいんじゃないかと思いますね。既存のお客さんを守るために何もしないよりは、たとえその人たちを手放すことになったとしても新しいお客さんと出会うことを選びたいです。これからも可能ならUST配信はやりたいですね。技術的な課題も多いので簡単ではないですけど、2~3年後には商業公演とかでも、初日の公演をすべてUSTで配信するようなことがスタンダードになっていく可能性もあるんじゃないかと思います。

――間違いなく追随するところが出ますよね。双方向でやり取りできるのが面白い。

キャストやスタッフも映像を見ながら裏話をコメントしたりするのは面白いですよね。

固定ページ: 1 2 3 4


【関連記事】

ピックアップ記事

公募
急な坂スタジオ「サポートアーティスト」募集

Next News for Smartphone

ネビュラエンタープライズのメールマガジン
登録はこちらから!

制作ニュース

ニュースをさがす
トップページ
特集を読む
特集ページ
アフタートーク 
レポートTALK 
制作者のスパイス
連載コラム
地域のシテン
公募を探す
公募情報
情報を掲載したい・問合せ
制作ニュースへの問合せ


チラシ宅配サービス「おちらしさん」お申し込み受付中