制作ニュース
- チラシ折り込みに関する公聴会
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10.10/16
去る2010年9月22日(水)、Next地下作業場にて「チラシ折り込みに関する公聴会」を開催しました。
開会前の時間を利用して行なった「丁合機による折り込み作業デモンストレーション」を含めた延べ3時間半、多くの舞台制作者にとって非常に身近で、なのに看過されがちな「チラシ折り込み」について再検証する貴重な機会となりました。当日の参加者は約30名。それ以外にもメールやTwitter等で事前にたくさんのご意見が寄せられました。
公聴会は二部構成で、前半はこまばアゴラ劇場より野村政之氏をゲストに迎えたトークセッション、後半は主に「主催者セレクト方式によるチラシ折り込み」テストラン実施の経緯説明とその是非についての意見交換をさせていただきました。
ここでは、まずは前編として公聴会当日の内容を、後編として公聴会を受けて行われたNext内での全体会議の要旨をレポートいたします。
※当日はネット中継を予定していましたが、Ustream側のネットワーク不良によりやむを得ず中止させていただきました。あらためてお詫び申し上げます。当日の内容をすべてご覧になりたい方は、下記より動画ファイルを右クリックなどでDLしてください。
【動画】チラシ折り込みに関する公聴会(前半)
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【動画】チラシ折り込みに関する公聴会(後半)
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■野村政之氏(こまばアゴラ劇場)×郡山幹生(Next代表)トークセッション
(郡山より野村氏を迎えた経緯の説明)
・2月にこまばアゴラ劇場さんが主催した「演劇宣伝に関するラウンドテーブル」に向けて野村さんと打ち合わせをした際、Nextが直面しているものと同様の課題をアゴラのスタッフさんたちの中でも議論されていることを知った。
・それは、どちらも「すべての演劇団体にチラシ折り込み(宣伝)の機会を公平に提供したいと考えている」こと。そして、「最終的に大量のチラシが不要チラシとして回収されている現状を目の当たりにしている」こと。
・アゴラ劇場・Next双方が感じている「チラシ折り込みの現状」をみなさんに知ってもらうべきだと考えた。
(野村氏)
・小劇場カンパニー間のバーターから始まったのがチラシ折り込み。だから、アゴラ劇場では公平にオープンにどの団体も物理的に時間的に職員の労力的に可能であれば折り込みを無制限に受け付けたいと考えている。
・チラシ束が厚くなり受け取ってくれないお客様も多くなった。主催者としては受け取ってもらえるようにするにはどうすればいいか。その工夫が必要になった。そのひとつが折り込みの団体数を制限する方法。
(郡山)
・劇場に来る人をターゲットにするなら観劇層に確実に演劇情報を届ける最も有効な手段がチラシ折り込み。
(野村氏)
・束が厚いとそれだけで見ないで置いてかえるお客さんが多い。
・Nextの場合は有料だけどそれを支払える人にはオープンに折りこめる。
・小規模団体の広報手段としての折り込み。そのことよりも大事な制限があるかどうかを考えろとオリザさんに言われた。
・折り込みの機会を公平に確保する。それをNextもアゴラも守ろうとしている。
・一方でお客様にどういう利益を届けるか。
(郡山より世田谷パブリックシアター矢作勝義さんから事前に寄せられたコメントを紹介)
・チラシ折り込みは観客へのサービスとして捉えている。それが第一であるべき。
(野村氏)
・たくさんの情報を得たいと思うお客さんと、情報量が多いだけで嫌だと思うお客さんの両方が同じ空間にいる。その両方にとって適切な量はどこか?
(郡山)
・折り込む側が明確な目的を持っていて、その結果に対して納得しているのであればNextとしては問題ないのだが、果たしてどうなのか?
(野村氏)
・同ターゲットに届く代替手段がなければ、チラシ折り込みはただ、折り込むか折り込まないかの選択肢しかない。
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王子小劇場・玉山さんのご意見
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王子は昔のアゴラ式、劇場に800枚の親があり、そこに自由に折り込んでください、というもの。それが2週間程度撒かれる。不要となったものは劇場でリサイクルに出している。
モットーは公平さ第一ということと、捨てないということ。チラシ束は演劇を見ない人にとってはカラフルな写真が載った意味のわからない分厚いカタログになってるだろうとは思う。
初めて観劇する人などそもそも読む気にならないだろう。でも、そのチラシを見なければ死ぬまで演劇を見ないという人にこそ芝居を見てもらいたいから、演劇祭に来る人も大事だし、演劇サイトにバナーを出すことの方が効果があるのかもしれないが、
それがどんなに目に見える効果となったとしても、こちらが主体的に情報を渡せる機能として、チラシは止めたくないと思う。
折り込みの機会が公平にあること、代行業者がいることは、折り込みたい団体にとっては便利かもしれないが、渡されるお客様に対しては便利ではないのかもしれない。
(郡山)
演劇を見てる人に確実にリーチできるのが折り込みチラシ束。
逆に言えば、それ以外の人にはほとんどリーチできないものでもある。
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イキウメ・吉田さんのご意見
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(※イキウメさんは主催公演時に無制限でチラシ折り込みを受け入れている)
昔、電話で折り込みのお願いをして断られた経験が数多くあり悔しい思いをしてきた。Nextが宣伝機会を公平に作っているというのを知ったときは嬉しかった。
なので制限を設けず自由に折りこめるスタイルでやってきた。でも、今日の話を聞いていてお客様の為という視点をあまり意識したことがなかったと気づいた。
明確な理由があればセレクトされたり、制限されたりするのも理解できるというのが今の認識。
ところで、折り込みのなかった時代はどうだったのか?一般の方の目に触れるものとして昔はポスターがあったと聞いた。代替の方法というところでポスターのことを思い出したが今は貼れる場所が少ない。
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リトルウイング・青山さんのご意見
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(※リトルウイングさんはNYLON100℃などのチラシを手掛ける印刷会社)
チラシ印刷に携わる者としてではなく、ヘビーユーザーである観客の立場での意見ですが・・
誰に向けて作られているチラシなのかがわからないときがある。たくさん観劇してると自分が作った同じチラシが何枚も手に入る。
チラシだけ、ウェブだけでなく、多種多様な媒体をどう組み合わせて宣伝していくかを考えて欲しい。
デザイン面でもクローズドの世界にしてしまうのではなく、交流をしてデザインの質を上げていって欲しい。(郡山)
チラシもまたひとつの作品。こだわって作ってるものであるだけに無駄になっているような気がするという声もある。(野村氏)
チラシを考える場合、情報と作品の二つの考えがある。情報として捉えた場合、情報はウェブにあげてもいいのではないかということも考えている。
自分たちが公平性を保たないと他から排除されるのではないかという思いとの葛藤がある。
■主催者セレクト方式に関して
(郡山より野田地図公演にてテストランを2回行なったことの経緯説明)
・野田地図さんが「主催者セレクト方式」を望んだ一番の理由は、他カンパニーを排除したいとかではなく、「チラシ束が観客にとって本当に必要なものにしたい」という考えだった。
・だから、すべての制作者から賛同は得られないかもしれないが、試してみる価値があると思った。
・ただし、この方式は主催者側にセレクト作業という「オペレーション上の負担」や「他カンパニーから快く思われない可能性」などのリスクを生む。
・野田地図さんは、それらを了承した上でなお、強く「主催者セレクト方式」を要望した。なので実施してみることにした。
・今後この方式を折り込み先公演主催者の選択肢の一つとして採用してよいものかどうか、みなさんのご意見を伺いたい。
※MT後、主催者セレクトを正式に導入
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東京バビロン・吉村さんのご意見
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ありかなしかというと、「あり」だと話しを聞いていて思った。
自分は小劇団の制作だがはじめての観劇になる可能性があるお客さんからすると主催者がお薦めする公演というものは大事かもしれない。
バーター関係の維持は作り手にはいいのかもしれないが、お客さんに対して有益な情報を提供するという観点からは異なるのかもしれないとも思った。
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東京芸術劇場/劇団制作社・樺澤良さんのご意見
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賛成。公平性は重要だが、一方でクオリティを下げないということが観客増につながるならば競争と淘汰は必要。
その信頼性を届ける“目”としては主催者のそれが一番正しいだろう。ただNextは両面を持っていなければならないと思う。
それがNextの責任ではないか。セレクトがあり、無制限がありその両方を維持するということが必要。
無駄ということであれば、セレクトから漏れて配られない4万枚(野田地図の場合)のチラシの使い途。廃棄するチラシ以上に無駄になる。そこも考えるべき。
■チラシの費用対効果について
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ネビュラプロジェクト広報宣伝部 ・小森さんのご意見
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10年前よりチラシの量は増えてるなという印象。15年前はまだネットがなかった時代。
数字での算出は無理だが、確実にチラシを見て観劇に来てるなと思う実感はある。
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ネビュラプロジェクト・加藤さんのご意見(コメント紹介)
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費用対効果は考慮していない。でも年4回公演をやっているのでキャラメルボックスという劇団が年間常に公演をやっているということが伝えられ、
いつの時期に何をやっているのかということが演劇ファンに告知できれば目的を果たしていると考えている。
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世田谷パブリックシアター・矢作さんのご意見(コメント紹介)
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効果測定の基準はもってない。チラシだけで情宣する機会は10年前より減っている。(郡山)
むしろ効果が見えにくいのは今はいろいろな媒体があり複合的に宣伝しているからではないか。
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王子小劇場・玉山さんのご意見
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王子やアゴラのように、劇場がチラシ折り込みを管理しているところが少ない。
もう2~3箇所、劇場が管理するようになれば、小規模カンパニーの宣伝機会確保はできるのではないか?(郡山)
チラシを使わずとも、うまくウェブを使えれば小劇場ではキャパを埋められるようになったのではないか。
むしろ商業系公演では不況の影響からか、マスで宣伝を打つということにシビアになっている印象。
既存の観劇層を直接ターゲットにできるチラシ折り込みにむしろ傾倒しているというプロデューサーの話を聞いた。
置きチラシに消極的になったのは映画に比べて演劇のそれが効果的に機能していないと感じたから。
それは、劇場でのお客さんの動線と時間の使い方の問題。
映画はフリーでロビーにいられる時間が長いが、演劇の場合はそうはいかない。
また、劇場側が外部チラシをどこまで管理できるのか、ということも課題だと思う。
置きチラシの管理について尋ねると、「負担に感じている」と答える劇場さんは多い。
本当に効果的にロビー置きチラシを機能させるためには、無償管理では限界があると思う。
(2010年10月30日 レポート:郡山幹生)
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