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当事者たちのQSC(1)[エントリー者の視点から]

18.12/21

「YouTubeで起きていることを無視できないと思った」

自分の劇団を10年近くやり、評価をもらっても延々と劇場に人を集めるって行為にマジで疲れ果て、「一体何のためにやっているのか分からないなぁ」と思いつめた頃、家で仕事をしながらYouTubeを観るようになりました。すると、撮影環境や編集が粗雑でも再生回数10万回とか行く動画が普通にあり、自分は劇場に観客を1000人集めてもペイできないのに、人気YouTuberが動画をアップした1時間後には1万人以上の人がそれを観て、しかもそこにはお金が流れている。自分がYouTuberになりたいとは思わないけれど、そこで何が起きているのか? ということを無視できないとも思った。ラファエルやカブキンというYouTuberは、仮面を被ったり歌舞伎のメイクをしたりするキャラで、街中でインタビューやコントをしてるんですけど、もうそれがエチュードっぽくて、ほぼ演劇と同じなんじゃないかって。そう考えた時に、これをQSCに活かそうと。

あらゆる手法を用いてモキュメンタリーを撮る

QSC6 エントリー作品『YoutuberのSaeComが~』より

で、QSCの締切は10月末日。この時期のYouTuberは、みんなハロウィンロケをしています。だからもう、これは撮るしかないと。渋谷でロケ中だからカメラを止められないという設定で「理由」もある。なおかつハロウィンの街並みを拝借して、それを美術にする。あれはあの時しかない立派な美術です。それでプロットを3人で話し合って、エチュードで3テイク撮りました。自分が出るという奥の手もつかい、ビデオカメラを持ち監督役をやり(笑)、そうすることで撮影中に口出しが自然にできるし、結果的に作品全体の進行やディレクションになってるんですよ。あらゆる手法を用いて、モキュメンタリー(※ドキュメンタリーを模したフィクション)を撮ろうとした。本物のYouTuberはこういう作品を撮らないだろうし、渋谷の真ん中でエチュードをやり、撮りながらディレクションもやり、スリリングで非常に楽しい撮影でした。
 

この作品は、かなり演劇的です

エチュードは、演出家が手を叩いて止めない限り、基本的に喋り続けなきゃいけないじゃないですか。ただのドキュメンタリー映像だと中だるみするから編集が必要だけれど、僕らはそこら辺の筋肉が異なり、喋り続けることができる。それはすごく大きかった。MUの稽古場はエチュードをすごくやるんですけど、漠然としたフリースタイルではなく、決まった設定のなかで僕が途中で指示や台詞を投げるのを乗り切ってもらう。延々と1時間くらい大作をやってるときもあって。井神沙恵ちゃんと岡山誠くんはMU常連だけあって、そこで何度も一緒に培ってきたからできたんですよね。それって、演技をしながらもう一方の頭で物語をどう続けるかを思考しなきゃいけない。ゴールのない発散のようなエチュードじゃなくて、ずっと物語を紡いでいくエチュードだし、この作品はかなり演劇的だと思います。受賞式のスピーチで「これは全部エチュードです」と言った時、「ええぇぇ」みたいな声が会場から生まれて、やっぱり驚くよなって。これくらいの物語だと台詞あるって思うし、同業者なら絶対驚く(笑)。

それとこれがエチュードかどうかは裏側の話で、映像的にナチュラルであるかどうかも大事で。僕はこの企画において、いわゆる「舞台」って感じの発声の映像には違和感があって。演劇を映像にすることってそういうことなのかなあって。自分みたく会話劇のような台詞の温度があってもいいし、そっちの方が映像として引いて見たときにもナチュラルなんですよね。

QSC6 エントリー作品『YoutuberのSaeComが~』より

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