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新長田で考える、ダンスをめぐる現場から(身体ごと投げだすかのように)/横堀ふみ vol.11

14.11/11

神戸の新長田に拠点(小劇場ArtTheater dB神戸とstudio dB KOBE)を構え、おもにコンテンポラリーダンスのプログラムを企画制作する「NPO法人DANCE BOX」の
横堀ふみさんの連載コラム!

現在は、昨年度にも実施した<みんなのフェスティバル>の準備に日々走り回っています。このフェスティバルは、「まちを“遊び場に”!新長田から“楽しい”を発見!」をキーワードに、全10プログラムを実施。ファッションショー、映像、唄、トークイベント、ダンス、フラッシュモブ、カラオケショーと様々なアプローチから取り組みます。より“生活に近くあるもの”を入り口にして、劇場が拠点とする地域の方々やアーティスト等とより具体的に協働しながら、“表現”や“表現すること”について考える/実践する機会を目指しています。昨年の「みんなのフェスティバル」で出会った方々は、少しずつ今回のフェスティバルの主軸メンバーとなりつつ、そして、また新たに様々な人と出会っています。

現時点で、おもに帆走しているプログラムが「フラッシュモブ」と「カラオケ・ボックス 長田のベトナムver.」などなど。フラッシュモブは、長田区と協働しながら新たなエクササイズを制作し、そのエクササイズをベースにモブを行うというもの。dBより徒歩数分のところにある「神戸市立地域人材支援センター」で行われている<まちの文化祭>に出没します。(11月16日)そのフラッシュモブの出演者を募るべく、dBスタッフは西へ東へと出張ダンスWSを実施。ママさんネットワークをベースに運営されているコミュニテイ・カフェ「Winaの森」、真陽地区のお年寄りが大集合する「真陽福祉会館」、長田区長も参加「長田区役所」、可愛い新長田ブランドの小物やガラス製品が並ぶ「本町筋ものつくり工房」前、踊りが心底好きな高校生の集まり「神戸野田高等学校創作ダンス部」、そしてdBのスタジオ「Studio dB Kobe」。出張WSから垣間見えるエピソードは、ツッコミどころ満載、また意外な発見も多いのです。11月16日の本番での混沌ぶりを既に大きく予感させています。

「カラオケ・ボックス 長田のベトナムver.」は、新長田で大きなコミュニテイを形成する在日ベトナム人の方々と一緒に演劇が作れたら面白いのでは、とのふとしたアイデアから始まりました。街のなかでよく耳にするベトナム語は、柔らかくて丸い響きで印象深い。しかし、新長田にある唯一のベトナム・レストラン「ハーロン」に行った時に出会うおじちゃん達の個性の強烈さ。そのギャップに惹かれて始めてみたものの、演劇となるとハードルが一気に飛び上がることを、プロセスの中で痛感。

そこで、ベトナム・レストラン「ハーロン」では毎週末にカラオケ大会が行われていて、皆さんカラオケがかなり大好きなようだと知り、カラオケでショーをつくるプランへと変更して進めてきました。それでもまだまだハードルは高く、在日ベトナム人の方々が集まる鷹取教会、仏教のお寺、日本語教室、神戸在住のベトナム人の留学生の集まり、ベトナム食材店、夜間中学などにお邪魔しながら、少しずついろんな方に出会ってきました。はてさて幕は無事に開くのか!?未知数100%状態ですが、この街で生活する様々な人々の姿をかいま見る中で、「カラオケ・ボックス 長田のベトナムver.」がどのような場であるといいのか突きつけられます。

私はよくよく「コミュニテイ」という言葉を使いますが、少しずつ出会っていくと、生活する上でなくてはならない集まりや、この場所で生きるために深呼吸できるような所など、多様なレイヤーで人々が集まる・出会う場が存在していることが見えて来ます。それらがより細やかに見えてくるに従って、さて、この劇場の役割は何だろうか、必要とされていること、必要とされていないかもしれないが私たちがやりたいことは何だろうかと、はっきり見えてくるように思いきや、迷路に入り込んだように佇み進み出せない時間があります。いよいよ次回が最終回。ゆらゆらと行き先をあまり決めずに、日々ダンスボックスで起こっていること・感じていることを書かせていただきました。<みんなのフェスティバル>のご報告をさせて頂きつつ、身体ごと投げだしながらの日々で考えたことを書けたらと思います。



写真:倉科直弘

■横堀 ふみ(よこぼり・ふみ)■
NPO法人 DANCE BOX プログラム・ディレクター/制作
平成18年度文化庁新進芸術家国内研修制度研修員。平成20年度ACC(Asia Cultural Council)のグラントを得て、約6ヶ月間にわたり、アジア6カ国とNYにおいて舞台芸術の実態調査を実施。おもにアジア間におけるネットワークの構築を目指し、レジデンス・スペースや劇場、フェスティバルのディレクターらとの交流促進を行っている。


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