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新長田で考える、ダンスをめぐる現場から(身体ごと投げだすかのように)/横堀ふみ vol.9

14.05/10

神戸の新長田に拠点(小劇場ArtTheater dB神戸とstudio dB KOBE)を構え、おもにコンテンポラリーダンスのプログラムを企画制作する「NPO法人DANCE BOX」の
横堀ふみさんの連載コラム!

私たちにとって、“劇場ロビー”という場は、ダンスボックスの全ての活動を鋭く前進させ、且つ柔らかに支える大切な場所です。

劇場ロビーには、これまでのダンスボックス主催公演の「写真パネル」を壁一面に貼り、ダンスや舞台芸術にまつわる「本棚」を設置しています。そして、公演時のみオープンする小さな「バーコーナー」も。そして、何よりも欠かせないのは、大きな木製の「ダイニング・テーブル」です。このテーブルは、2012年の「KOBE-Asia Contemporary Dance Festival #2」でマレーシアのコンテンポラリーダンス界のゴッドマザー、マリオン・ドゥ・クルーズの公演の際に特注で作ってもらったものです。公演ではマリオンとほぼ同世代のダンサーのアンの二人のアンティ(auntie/おばさま)がテーブルの上に座るシーンがあり、これに対応しうるしっかりした作りのテーブルになっています。自然と人が集まり、ほっとひと息つける場所になっているのは、このテーブルがあるからこそ。

通常の劇場ロビーは、生活空間と劇場空間を往還するための狭間を演出する場所です。そのような場所で、鍋や焼き肉パーティーを行い、ベトナムからの作家が来た時には生春巻きパーティー、「国内ダンス留学@神戸」の座学の授業、地域の男性陣が集っての座談会が仕舞には飲み会になることも、そして数多くの打ち合わせ、野菜の栽培、チラシやポスターの発送作業、皆でお弁当を食べたり、泣き笑いの言い合いも、打ち上げに疲れて寝込んでしまう人も、劇場ロビーには似つかわしくないような様々なことが日常的に行われています。さて、この次にはどのような新たな使い方が発明されるのでしょうか。(アイデアは常に募集中です。)

現在、少しずつ考え始めているのが、「劇場ロビー拡張計画」。新長田のまちのいろんな場所を劇場ロビーとしても機能させることはできないかと。これは、ロビーの「本棚」の全ての本の目録を作ってくれた“国内ダンス留学@神戸”一期生の田添君が出してくれたアイデアです。新長田の複数箇所に劇場ロビーのような場所があると考えてみると、劇場への一歩二歩の踏み出し方が変わるのではないかと想像します。具体的にどのような場所ができるとよいのか、まだまだアイデアはこれからの段階ですが、狭間であるが故に、より匿名性を帯びながら、誰に向けて・何のためにといったような使途からゆるやかに解かれた場所を作れるのではないか、その可能性を探ってみたいと考えています。

繰り返しになるかもしれませんが、この劇場“ArtTheater dB 神戸”は、ダンスボックスが運営していますが、ダンスボックスの為の場所でないことは確かで、誰かの場所でもあり、誰の場所でもないところ、根無し草のようでありながら、しかし新長田のまちや関西のコンテンポラリーダンス・シーンといった土壌を耕すことで生成されてくるようなことが様々に起こる場所になればと考えています。混沌さが混沌さのままであることができること、適当さや曖昧さをはらむこと、同時に風通しよくあるような場所を思い描いた時に、劇場ロビーの果たす役割は、軽く重いのです。 



写真:倉科直弘

■横堀 ふみ(よこぼり・ふみ)■
NPO法人 DANCE BOX プログラム・ディレクター/制作
平成18年度文化庁新進芸術家国内研修制度研修員。平成20年度ACC(Asia Cultural Council)のグラントを得て、約6ヶ月間にわたり、アジア6カ国とNYにおいて舞台芸術の実態調査を実施。おもにアジア間におけるネットワークの構築を目指し、レジデンス・スペースや劇場、フェスティバルのディレクターらとの交流促進を行っている。


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