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「今あるモノを花ひらかせよう」鹿児島県大隅半島に移住したダンサーJOUの芸術地域おこし活動レポート Vol.10

14.02/26

「劇場」という枠をはみ出して、「地域」の中で活動されているダンサー・JOUさんによる連載コラム!

第2回踊る地域案内所レポート+一口メモ講座「ビジョンを実現する過程のためのメモ」


こんにちは!
新年が明け、バレンタインも過ぎ、年度末に終えなければならない事業や、年度末に伴う様々な書類作業に追われている方も多いのではないでしょうか?

今回は、12月1月に開催した「踊る地域案内所」のレポートをしたいと思います。
【第2回踊る地域案内所とは】
昨年12月から新年の1月、今年2回目となる「踊る地域案内所」を開設しました。
休校中の川上中学校の体育館を2ヶ月間借りて、多目的自由交流空間をプロデュースする企画です。
12/2(日)オープニングの唄と踊りのパフォーマンスから始まって、実にいろいろな人々が行き交い、いろいろなコトをしました。


【2年目の進展】今年は、招聘ゲストアーティストの滞在だけでなく、念願の地元参加型事業ができました。

地元の伝統芸能である「鎌踊り」講習会や、「ワラ草履を作ろう!」ワークショップなど、地元の皆さんにも「先生」になって頂き、ゲストのワークショップやパフォーマンスだけでなく、ゲストにも地元の技術を学んで頂くという、情報や技術の相互交流ができてうれしかったです。12月2日から1月26日、毎週木・土・日曜日週3日間のしかも午後14:00-18:00だけ、というゆるいプログラムにしてありますが、結局、なんだかんだと見えない時間にも沢山の仕事があります。
今年の開催では、沢山のうれしい進展がありました。地元、特に会場があるご近所さんの子ども達が、冬休み中は、まるで学童のように寄ってくれて、これまた念願の子どもワークショップができたのでした。
遠隔地の田舎のお正月は、子や孫が帰省して、元旦から2日は皆さん、自宅で宴会です。関西や関東で暮らしている人がほとんどなので、帰省の日程も本当にわずか数日。大晦日に帰って来て、2日にはまた都会に戻るとか、そんな話しも聞きます。自分達もかつてはそのようにして年末年始の帰省をしていた側から、迎える側の地域に住んでみると、当時は見えなかったことも、いろいろと見えてきます。「踊る地域案内所」をわざわざ年末年始にかけて開催するのにも意図が合って「帰省してくる家族の皆さんとも知り合いたい」「帰って来た孫達と遊びに来て、アート的なものに触れられる場所になりたい」「地域間交流を増やしたい」という目標があります。今回は少しずつですが、それらに近づいて来たような実感がありました。


【田舎の年末年始に大挑戦?!】クレイジーな忙しさを見せる田舎の暮れにも関わらず「12月29日、特別ダンス学校」を開催したところ、鹿児島市(会場から車で2時間)から来てくれたりもしました。1月2日の「新年ダンス祈願」という発表イベントは、29日のダンス学校の受講生の皆さんに参加して頂きました。「とはいえ、集客は、お正月だし、難しいだろうな~…受講生発表だけでも内々にできればまずは大成功かな」と欲のない目標でいたのですが、鹿児島のテレビ局の取材が入ることになり、「折角テレビ局が来るのに、会場が空っぽだったらマズい!!」と、青くなって、急遽、宣伝活動。役場の職員で、ソーシャルネットワーキングに強い若手世代がいて、相談に乗ってくれたのですが、「いくらfacebookで発信したところで、ネットそのものにアクセスしない世代が多い地域では人は呼べないだろう」ということになり、作戦会議の結果が、「直接頼みに行く!」という、極めてアナログな解決方法に落ち着いたことは、なかなか面白かったです。

わずか10日程の間に、ポスターとチラシをもって、商店街を1軒ずつ、飛び込み営業しました。1人だけではなく、隣りの市のお店に同様にポスターを配ってくれた方もいて、本当にうれしかったです。町内の商店街といっても、きゅっとした商店街だけでなく、何キロかある長い大通り沿いに点在しているお店やレストラン、ガソリンスタンドなど、回りました。私はこれまで、こうした飛び込みの営業の仕事はしたことなかったのですが、モノを売るのではなく、情報の共有をお願いする仕事なので、やや気が楽でした。直接、話しを聞いたり、語ったりする時間は、実に有意義な時間でした。どれだけネットでのコミュニケーションが発達したとしても、「顔を合わせて直接話す」という中から、本当に沢山の情報を得ることができます。「宣伝、誰も手伝ってくれないよお;」と絶望的な気持ちで始まった営業活動が、いつの間にか、情報収集や自己紹介の絶好の時間となりました。

2日のイベントには「スーパーに貼ってあったポスターを見て来た」という帰省中の親子連れのお客様もいて、まさに、「夢が叶いつつある!」という状態でした。
「お笑いダンス講座」というタイトルも効果的だった模様です。お笑いダンスの講師は、小笠原大輔さんにお願いしました。教え子が現在、鹿児島大学の学生だということで、チャーミングな大学生も呼んでくれました。案内所を開ける前の時間に、枯れ草を焼いて、焼き芋を作るなど、スタジオでのクリエーションだけでなく、滞在生活中に、地域を丸ごと楽しんでくれたのも、まさに狙い通り、本当に良かったです。ゲストが地域を楽しんでいると、地元の人も不思議と敏感に感じ取るのか、良い呼応反応が連鎖的に起こってきます。


【クリスチャン・ヴォーゲル in 肝付町】1月14日からは、ベルリンから、電子音楽の世界では多くのコアなファンを持つアーティストである、クリスチャン・ヴォーゲル氏が鹿児島県肝付町(きもつきちょう)滞在に来ました。
2週間、踊る地域案内所のある川上地区に滞在し、新曲のレコーディングをする、という前代未聞の独創的な(?)企画です。たまたま、ヴォーゲル氏自身も昨年からずっと「国際コラボレコーディング」プロジェクトを展開していて、LA、ベルリン、コペンハーゲン、と各地でレコーディングをしてきたと言います。それらの都市に混じって「鹿児島県肝付町」が名を連ねるというのは、考えてみると、なかなかあり得ないことです。「レコーディング」というからには、スタジオ的なスペースと設備を用意しなければ…、ということで、家人が直前まで連日DIYで、改修工事をしてくれました。「スタジオ・ヴォーゲル」が完成したのは、本当にギリギリ直前でした。レコーディングそのものからスタジオ作りに至るまで、考えてみれば無茶なアイディアだったわけですが、家人のお蔭で、実現することができました。

鹿児島は、島ともまた少し違う食文化で、アジアっぽい異国っぽい不思議なものが沢山あります。それらの食べ物を果敢に挑戦して堪能していたヴォーゲル氏、地域リサーチも五感をフルに使って、実にマメに行なっていました。「アーティストが地域にいてくれるだけでいい」と素敵な言葉を語ってくれた、鹿児島市でアートプロデュースの仕事をしている方の言葉を思い出しました。作品を作る、というだけでなく、地域を体験する時に見せてくれる反応のそばにいるだけでも、本当に豊かな空気が溢れます。案内所のピアノをつま弾いて遊んでいる時でも、その音は輝いていました。


【最終日イベント、大盛況!】最終日のイベントは、2日の新年ダンス祈願で集客宣伝をし尽くした感がありましたが、お蔭様で100名ほど集まり、大盛況でした。
イベントがなければ、1日に数人しか訪れない日もあるこの地域では、イベントで人を呼びすぎても疲れてしまうし、呼ばな過ぎても、運営に支障をきたすので、難しいところですが、本当にうまくいって良かったです。

1年目は、自己紹介、2年目に少しだけ会話が始まって、というような実感がありました。地域に関わるイベントプロデュースは、子育てをするようなものです。その場その場でもある程度の成果を出しつつ、長い目で、少しずつしかし先を見ながら、疲れすぎないようにやっていくしかないですね。


【皆さんに助けられて作っていく】女子大生ダンサーの遥香ちゃんの前向きなエネルギー、東京からわざわざ受講に来てくれた受講生のガッツ、地元の村つくり推進委員会の皆さんが自主企画で「そば打ち体験教室」をしたこと、ワラ草履を作った後に残ったワラで地元のワラ草履世代との時間がワラつながりになったり、島津の現藩主様がリハーサルの見学に来て下さったり、イベントの時、ご近所さん有志が手伝ってくれたり、、、連日の滞在客とプロジェクトに、疲労困憊ではありましたが、沢山の宝物の時間が蓄積された第2回踊る地域案内所でした。来年度も、現在進行形で改良しながら皆さんと一緒に作って行きたいと思っています。

ボランティアスタッフも募集中です。興味のある方、ぜひご連絡ください。

第2回踊る地域案内所: http://osumiart.exblog.jp/21091111


◆一口メモ

◆夢をかなえる方法〜ヴィジョンの実現さて、ここから先は、実際の経験に基づいたミニ講座です。
自分なりの活動や人生設計、生活設計を、どのように実現していくのか?
アートなど本来はお金が回らないことを一生懸命やってしまう人達の多い分野で、自分なりの夢やヴィジョンをどう実現していくのか?
どれだけ年をとっても、常に社会的にも精神的にもチャレンジングなことをあえて選んでいるわけですから、「人生長いよね〜」のスタンスも常に忘れずに、まずは、日々の生活を維持しなければなりません。
とはいえ、生活のための稼ぎのほとんどは、自分のやりたいことから遠い。稼ぐための時間に追われるのは常なので、自分のヴィジョンについて考えたり実行したりする時間やエネルギーがいつの間にか日々の暮らしから消えてしまうケースも多いでしょう。雇用というのは、時間の切り売りをすることだと言う人もいます。自分のやりたいことがわからない人も多いと思います。
「いつか、、、」と思っているとそのいつかはいつまで経ってもやってきません。毎日の限られた時間の中で、少しでもいいから【何をするのか】~それが未来に繋がる唯一の道です。

今日という日に、仕事に時間を食われることなく、5分10分で良いから、自分で作る時間があれば、何をしたいでしょうか?
1日1楽1笑1学1善1考1話、、、。
私は、家族や友人と美味しいもの、食べたいです。美しい楽しい気持ちになりたいです。何か挑戦したり学習したいです。何か自分なりに良いこと~「未来への種まき」を自分と自分以外の沢山の誰か(例えば未来を担う子ども達とか)のために、したいです。人の話しを聞きたいです。自分にとって発見と出会いのあるクリエイティブなプロジェクトに関わっていたいです。文章を書きたいです。ダンスで何ができるのか、いろいろと試したいです。作品を作る現場や、コマーシャル的な現場、ありとあらゆる現場を体験したいです。

「5分で良いから、まずやってみる、持続できる方法でやっていく」というのがミソです。
細切れの小さな時間の積み重ねが、1日を変え、未来を変えるのです。
踊る地域案内所でのヴォーゲル氏のサウンドは「本物」でした。どんな場所でも、誰でも、引き込まれ、魅せられていました。アーティスト的にも、あれだけのキャリアを持ちながら、現在進行形でできないことできることのボーダーを決めず、常に作り続けているチャレンジ精神がありました。それが「辛いけど頑張ってる」ではなく、実に自然体でした。なかなか良いエネルギーと空気を、肝付町に運んでくれました。美術館や劇場という枠組みがなくても、本物は本物、輝きは変わりませんでした。その彼は、日常的に音を作り続けている、奏で続けている。自然体のまま、様々なことに挑戦し、学習し、そこから刺激を受けながら。
アート活動も、プロデュース活動も、同じことではないか、、、と思いますが、いかがでしょうか?

◆ポジティブ・スパイラルを引き寄せる「アーティスト・イン・レジデンス」で感じている不均衡感を自分達なりに改良して思索実験試行中の「踊る地域案内所」、まだまだ「アート?よくわからんが、、、」的な視点はありますが、積み重ねが自然と道を拓いてくれます。足りないことや不満に思考や意識をフォーカスすることをやめて、うれしいことや感謝にフォーカスするようにしてみましょう。自分が考えること、感じることは、自分にしか変えられません。そして、その結果は、吐く息と吸う息のようなバランスで、必ず自分の周りの出来事として、帰ってきます。

◆まず、やってみる夢見るだけでもダメ。ダメ元でいいから、実行しないとダメです。何かをやれば、次が見えてきます。失敗しながら、やる時にどういう保険の掛け方をすればいいのか、わかってきます。失敗は最大の特効薬なのです。やったことをやりッパなしにしないで、必ず、振り返り、そこからの情報を、自分の中に収集する。批判的過ぎてもダメ、楽観的過ぎてもダメ。その加減も、人それぞれです。自分が考えて、自分がやることの答えは、自分だけのモノです。常に必要だな〜と思うのは、「ダメ元でやるチャレンジ精神」「失敗は成功の最良の薬」「自分と自分の未来に投資する」「人間関係を大切にする」「自分なりの割り切り方、判断基準を持ち、自分の身体や心を守る」「自分の価値観や基準を常にチェックして、時代や状況に合わせて、修正していく」
ですね。

◆迷った時、混乱した時の目安大きな現場では、組織系統がハッキリしていて自分の仕事が明確ですが、立ち上げの現場、命令系統がハッキリしなかったり、恊働者の実力に差があるような小さな現場、キャリアの初期では、曖昧で混沌としたカオスでいつの間にか「こんなハズじゃなかった」と、苦しい思いをしてしまうこともあると思います。そういう時の判断の目安には、「お金の流れ」を見極めると、冷静に状況を判断する目安になります。
まず、「誰のアイディア(起案)で始まったのか?」です。「言い出しっぺ」は、常に最初の青写真の創始者です。その部分を大切にしないと、創作の現場は、過程の中で様々に揺れてしまい、どれだけ上手に書類上や過程上の行程をこなしたとしても、生み出されるものは「借り物」です。結果的に、つじつま合わせの産物になるケースが多い。
次に、「誰が誰にお金を払っているか?」です。お金を払う人は、資本主義の中では常にボスです。実力があってもなくても、アイディアがあってもなくても、活動の支えをくれるからです。ところが、「アイディアの草案者」と「お金の工面者」が異なる時は、一番難しいかもしれません。お金を払う人は、アイディアが自分のものでない場合、「自分のものでない」ということを常に自覚していることでしょう。人はごまかせても、自分はごまかせないですし、当事者同士はもちろんのことです。その二人三脚の関係が、車輪のようにお互い尊重し合い、分をわきまえたスタンスで助け合って進んでいる現場は、幸せです。そんなパートナーやチームに出会った人達は、必ず成功しています。


鹿児島はもう、梅の花がほころび、春の気配にうきうきします。
今年は大雪に見まわれ、皆さん大変だったことと思いますが、春は必ずやってきます。
また、3月にお会いしましょう!!


■JOU(じょう)■
23才で踊り始める。ダンスで人やモノや場をつなぐ作品作りをする。2008年ソウル国際振付祭にて外国人振付家特別賞を受賞。2013年、肝付町踊る地域おこし協力隊として鹿児島県に移住し、劇場舞台の枠を越え、地域おこしとつながったダンス活動を創作中。おおすみ夏の芸術祭(OAF)2012発起人。おおすみ踊る地域案内所所長。

JOU日記: http://odorujou.net
大隅文化生活http://osumiart.exblog.jp/


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