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廃校活用による「文化芸術活動拠点」〜「たなか舞台芸術スタジオ」「ココキタ」編〜

15.05/25

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台東区・北区・立川市で誕生、廃校活用による「文化芸術活動拠点」〜台東区「たなか舞台芸術スタジオ」、北区「ココキタ」編〜

廃校を活用した文化芸術活動拠点が東京都内に相次いで誕生した。4月にオープンした台東区の「たなか舞台芸術スタジオ」と北区の「ココキタ」。そして10月に立川市に開設される「たちかわ創造舎」。今回「廃校利用」という共通点から取材を行ったところ、三者三様の設立背景や施策の違いなどが見えてきた。
(取材:編集部、構成・文:永滝陽子)

■「東京都台東区立たなか舞台芸術スタジオ
所在地:台東区日本堤2-25-4
開館時間:午前9時~午後10時
アクセス:三ノ輪駅より徒歩約10分、南千住駅より徒歩10分
■「東京都北区文化芸術活動拠点 ココキタ
所在地:北区豊島5-3-13
開館時間:午前9時~午後9時
アクセス:王子駅よりバス「豊島五丁目団地」下車、徒歩3分

 

“公演”のための稽古場施設、「たなか舞台芸術スタジオ」

台東区の文化振興課が運営する「たなか舞台芸術スタジオ」(以下、たなかスタジオ)は、台東区初の「舞台芸術活動を支援する施設」。地下鉄三ノ輪駅から徒歩10分の場所にある旧田中小学校の2階部分を稽古場スペースとしてリニューアルした。

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教室2つをぶち抜いたサイズの大稽古場。窓の外は旧校庭で、廃校であることを実感。

開設にあたっては、『したまち演劇祭』(平成22年度より実施)に参加する団体からの「区内で長期的に使える稽古場が少ない、という声がきっかけ」(文化振興課・阿部良則さん)。貸出スペースとして整備された「大稽古(128平米)」「小稽古場1・2(64平米)」の利用対象者は、演劇・芸能・舞踊等の制作・発表を目的に活動する団体・個人で、同区内での公演にむけた稽古等の場合に「使用料が5割引」となる点が大きな特徴だ。「他の施設と違う点として、私たちは区内で行われる公演に対して減額制度を取り入れました。台東区に文化を根付かせることで、区民に還元できると考えるからです」(同課・内誠さん)。区民に対して芸術文化を提供するというスタンスが「たなかスタジオ」の設立背景にはある。

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制作室は教室1/3サイズで、無線LANが使える。奥には窓もあり閉塞感は少ない。

上演目的の稽古スペースとして、設備にも劇団の声を反映した。当初は更衣室やシャワーを設置する予定だったスペースを「道具や衣装を作ったり、脚本の手直しや打ち合わせをしたりできる部屋が欲しい」という声を聞き、急遽無線LANを備えた「制作室」に変更したというエピソードも。劇団からヒアリングして新規購入したという備品を含め、稽古場を利用する団体はすべて無料で使うことができる。「稽古場の利用申請を登録制にしたことで、ここを使っていただく団体さんと長くお付き合いしていきながら、お互い情報交換して施設を育てていきたい」(内さん)。

こうした姿勢が口コミでも広がったのか、9月までの半年間の予約状況は徐々に伸びてきているという。「千葉や横浜からの登録もいただき、『稽古場を探していた』という声も」(阿部さん)。同区が主催する演劇祭や、区内で芸術文化に関わる企画に助成する「台東区芸術文化支援制度」、実演家やアートマネジメントの専門家からなる「アートアドバイザー」の存在など、台東区から文化を発信していこうとする様々な取り組みと「たなかスタジオ」との相乗効果が、今後多いに期待される。
 

充実の設備、低価格の料金設定が嬉しい「ココキタ」

運営を担当する北区文化振興財団のココキタ事務局・小林隆夫さんに開設の経緯を尋ねたところ、若手アーティストの活動支援と地域住民の交流の場を目的に、閉校になった旧豊島北中学校の校舎を活用することが決定。2011年の東日本大震災の折は校舎が一時避難所になるなどしたが、2012年から北区と北区文化振興財団が協同でプロジェクトチームを立ち上げ、今年4月に「ココキタ」誕生となった。

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通路や階段の白い壁には、アートにまつわる様々なステッカーが貼られている。

建物1階に入ると、正面には交流スペースとして設けられたカフェがあり、2階~4階にオープンギャラリー、稽古場、レジデンススペース、音楽スタジオ、多目的室などのレンタルスペースが整備されている。公演も可能なほどの広さで音響機材等が備わる「スタジオ1(126平米)」や、完璧な防音設備でグランドピアノもある「スタジオ4(94平米)」、5.1chサラウンドと上映用スクリーンを完備する「多目的室1(94平米)」など、それぞれ用途に適した設備が充実し、廊下からトイレにいたるまで建物の内装もすべてリニューアル済み。貸出については、北区民への還元を目的に、利用料割引や先行予約など「区民優遇措置」をとっている。

また大きな特徴に、アーティストのための「レジデンススペース」として、大小5部屋が設置されている点も挙げたい。利用は年単位での契約で、最長3年間使用が可能。去年の7月から募集を開始したところ、現在は劇団や舞台美術家、ピアニスト、芸術家などが利用、すべての部屋が埋まっているという。利用料金は30平米2万円(1ヶ月)で貸し出しており、一番大きな部屋は94平米と30平米の倉庫込みで7万円(1ヶ月)。「安い料金設定ですが、そのぶん施設への貢献を期待しています」(小林さん)というとおり、施設内でのイベントやWSの開催、館内オープンギャラリーでのレジデンスアーティストの作品展示など、区民や利用者への文化芸術提供に一役買っている(現在募集終了)。

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公演を行うこともできるスタジオ1。壁は黒で覆われており、暗転も可能。

北区は演劇祭などを通じて重点的に演劇に対して活動を行う姿勢を持つ。「『ココキタ』も、とくに若い劇団やアーティストに利用してもらいやすいよう、利用料金をできるだけ下げました」(小林さん)。舞台演劇関係では、スタジオ1、2、3がおすすめで、床面が舞台仕様の部屋や、壁面鏡ばりで音響セットも備えた部屋など、活動内容に合わせて選ぶことができる。区からは「若手アーティストの育成を」というオーダーもあったといい、区内在住・在学の高校生以下の利用は無料。今後は中高生にもっと活用してもらえるよう、「ココキタ」で公演をするためのノウハウをレクチャーするWSなども検討しているという。


区内に公演団体を誘致したい「たなかスタジオ」と、芸術文化を通じて地域の若い世代へアプローチしていきたい「ココキタ」。今後、単なるレンタルスペースにとどまらない「芸術拠点」としての存在価値をどのように示していけるのかも、発展の大きな鍵となるはずだ。

また両者とも施設の運営を考える際に「にしすがも創造舎」「水天宮ピット」「アーツ千代田 3331」など、既存施設を研究・参考にしたという点にも触れておく。とくにどちらの担当者からも名前が出たのが東京・巣鴨にある「にしすがも創造舎」だった。

後編では、開設11年目を迎える「にしすがも創造舎」を運営するNPO法人アートネットワーク・ジャパンと、彼らが次に選んだ廃校活用地、立川市の「たちかわ創造舎」について取り上げる。



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