制作ニュース

小室明子の「北国の劇場から」Vol.9

13.10/01

北海道札幌市にある劇場「コンカリーニョ」の演劇プログラムディレクター、小室明子さんの連載コラム。第9回は「札幌の学生演劇」…そろそろ、来年度の公演計画を詰めていく時期でしょうか。来年度のコンカリーニョ、道外カンパニー限定の劇場費無料プラン札幌の学生演劇


そろそろ、来年度の公演計画を詰めていく時期でしょうか。来年度のコンカリーニョ、道外カンパニー限定の劇場費無料プラン、10月15日(火)まで応募受付しております。札幌公演をお考えの皆様、どうぞよろしくお願いします。
詳細はこちらを→http://www.concarino.or.jp/2013/09/zerobargen/

今月は、札幌の学生たちにより開催されている二つの演劇祭についてです。私一人の知識では足りないので、若い2人に協力をいただきました。一人は北海学園大学演劇研究会出身で、学生対校演劇祭の初代実行委員長でもあった弊社2年目の米澤春花、もう一人は北海道教育大学札幌校演劇サークル・演劇集団空の魚出身で卒業後は働きながら学生演劇祭のサポートをしている加納絵里香さんです。水面下で(?)動きつつある「全国学生演劇祭」の札幌の窓口にもなっている2人です。


米澤春花(写真左)と加納絵里香さん
 
一昔前は、旗揚げ劇団と言えば大学演劇サークルを出発としたものが多かったですが、札幌では数年前から専門学校卒の劇団が増えてきました。現在はその波も落ち着いたようで、学生が集まって旗揚げ、という団体が再び目につきます。以前と違うのは、学校の垣根を越えてという集団が多いこと。その理由が、年に1回行われている学生演劇祭にあるようです。
2007年、学生たちの発案で、サンピアザ劇場のバックアップを得て始まった「さっぽろ学生演劇祭」。通称「合同祭」。札幌市内とその近郊から10〜15程度の大学、専門学校の学生が集まり、一緒に作品作りをするというものです。2人から話を聞くまで知りませんでしたが、脚本を採用された学生は、各大学へ出向き、出演を希望する演劇部員達の前でプレゼンを行い出演者を募る、ということもしていたそうです。ちゃんと考えてやってるんだなと感心してしまいました。「交流が図れるのはいいこと。他の大学の稽古を見せてもらったり、手伝いに行き来しています」と加納さん。演劇をやる学生たちの交流の場、視野を広げる出会いの場として機能している模様です。自身も舞台美術を学ぶ米澤は「スタッフワークを学べる場にもなれば。これからは違う視点からサポートしていきたいです」と話します。


今年11月に上演されるさっぽろ学生演劇祭
「超時空概論FRUITS BASKET」の仮チラシ

その合同祭と対を為す形で始まったのが、毎年6月に開催されている「学生対校演劇祭」。通称「対校祭」です。
「まずはお互いにそれぞれの特色を知って合同祭に臨むのがいいのではないか」(米澤)。合同祭ではそれぞれのやり方を押し付けがちになる学生たちに、他校の作品や作り方を観て特徴を掴んでもらい、そこから一緒に作品作りを、という流れを作るために始めたとのこと。こちらもサンピアザ劇場のバックアップで始まり、今年で4年目になりました。短編作品を連続上演する企画で、審査員の審査により最優秀作品賞、俳優賞などが決まります。私も初年度と2年目に、審査員を勤めさせていただきましたが、正直、これが面白いと思ってやっているんだったら札幌の演劇には若い才能が集まっていないということではないか!?と目の前が暗くなるような瞬間もありました。そんな中でも、キラリと光るものを見せてくれる作家、演出家、俳優はいるものです。プロとしてであれ、別な仕事を持ちながらであれ、卒業後も続けていく方法があることを学生時代にきちんと伝えられる場を作れるとよいのかもしれません。加納さんは「毎年、審査員にもっとやれと言われているので闘志を燃やしてほしい。でもまずは続けることが一番」と今後を語ります。負けたくない、という思いで努力し、それが作品に反映されてきてもいるようです。また、演劇をやっていながら演劇を見ることをしない学生たちに、無理矢理にでも観劇させるというのも対校祭を始めた理由の一つだそう。たしかに、多いところでは70名を越える部員を有する大学演劇部もあると聞きますが、なかなか演劇の観客にはなりません。コンカリーニョにも来たことない人が大半じゃないかと思います。観たから面白いものが創れる訳ではないと思いますが、札幌の若者たちの「演劇」のイメージが古すぎることはやはり気にかかります。ここから繋がって、札幌の劇団や札幌に来る道外の劇団の芝居も観に来てくれるようになるといいんですが…。

最近は、リーダーシップのある学生がなかなかおらず、両演劇祭とも開催が危ぶまれることもあるようですが、せっかくいい流れができているので切磋琢磨してどんどん新たな才能が生まれてくれたらと願います。今回話を聞かせてくれた2人の今後の活躍に期待しつつ、次の土壌を整えておくのも我々上の世代の仕事だ、と身の引き締まる思いです。


■小室 明子(こむろ・あきこ)■
1974年生まれ。札幌市出身。コンカリーニョ演劇プログラムディレクター。大学在学中に演劇と出会う。大学卒業後、タウン誌の編集者などを経て2001年に上京。東京ではフリーライター・エディターとして生計を立てつつ演劇の世界もうろうろ。2006年、fringe主催の「PmP2006」に参加したのをきっかけに、2007年4月に札幌へ戻り、以来、NPO法人コンカリーニョに勤務。札幌演劇の活性化、演劇人の実力の向上を願い、他地域の劇団などとの交流企画や演劇祭、在札劇団の道外公演のプロデュースなどを行っている。


ピックアップ記事

第2回関西えんげき大賞、最優秀作品賞決定

Next News for Smartphone

ネビュラエンタープライズのメールマガジン
登録はこちらから!

制作ニュース

ニュースをさがす
トップページ
特集を読む
特集ページ
アフタートーク 
レポートTALK 
制作者のスパイス
連載コラム
地域のシテン
公募を探す
公募情報
情報を掲載したい・問合せ
制作ニュースへの問合せ


チラシ宅配サービス「おちらしさん」お申し込み受付中