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新長田で考える、ダンスをめぐる現場から(身体ごと投げだすかのように)/横堀ふみ vol.4

13.09/13

神戸の新長田に拠点(小劇場ArtTheater dB神戸とstudio dB KOBE)を構え、おもにコンテンポラリーダンスのプログラムを企画制作する「NPO法人DANCE BOX」の
横堀ふみさんの連載コラム!

藤田幸子舞踊教室神戸ハッピー会筒井潤さんと リサーチの過程で。
デイ・サービスでのエクササイズを拝見。
西岡樹里さんが、藤田幸子先生に
新舞踊を習う初日に。

前号の最後にご紹介した、新長田で踊る人に会いにいく…「新長田のダンス事情(仮称)」。現在は、9月21日・22日に「新長田のダンス事情(仮称)」<5年目のイベント>開催にむけて奔走中です。「新長田のダンス事情(仮称)」では、急がず、あせらず、注意深く進めることを大事にしていたら、三歩進んでは二歩下がるようなまったりとした進み具合。そしていつもの如く、直前に大慌てで進めることになり、日々自転車に乗り西へ東へ、出演交渉に、道具を揃えに、稽古の立ち会いにと走っています。
 
これまでは、おもに稽古場を訪問し、お話を聴かせて頂くことをベースに進めてきました。稽古場の場所、またその稽古場は他に誰が使えるのか、稽古の時間帯、グループには誰がどのように参加してきたのか、稽古の後には?のような事を見聞きします。ここから地域のもつ様々な事情や歴史が立ち現れてきます。また、稽古場での踊りの伝え方やダメだし等を目の当たりにすることで、踊ることにおいて、大切にしていることがよく見えてきます。しみじみと「踊りっていいなぁ」と思える瞬間に立ち会えることも多くあるのも事実。
 
劇場で見せることを前提としたダンスに取り組んできた私たちにとって、今ここで踊ることに生き生きしている方々の<踊り>が肌にダイレクトに触れてくるように感じたとき、「踊り」や「ダンス」の根っこにあること、「踊ること」と「見せること」との連関、そして劇場という制度について思考をめぐらせることに。そして、「コミュニティ」と「ダンス」がどのように接続しあい、「コミュニティ」と「劇場」が呼応する可能性を育むことができるのかへと問いかけは拡がります。「新長田で踊る人に会いにいく」ことから立ち上がって来た様々な問いかけに、応答することの試みが、現在のダンスボックスの数々のプロジェクトをつくってきたと言っても過言ではないかもしれません。

ここで、私たちがこの5年の間に出会い、ゆるやかに関係が継続しているグループや教室を紹介します。(ここに記載したすべての稽古場は、ダンスボックスからは徒歩か自転車で通える所にあります。)


新舞踊竹邑流幸咲会(藤田幸子教室)
新長田駅より徒歩5分程のところにある「神戸奄美会館」で週に二日、新舞踊のお稽古を展開しています。月に一度は、奄美民謡で踊る会も。(「神戸奄美会館」は、阪神淡路大震災後に建設された建物で、奄美諸島の移住者コミュニティの方々が集い、唄や踊りの教室を日々展開されている公民館です。先月は神戸奄美会館の「20周年記念文化芸能発表会」が行われましたが、新舞踊、前結び着付けショー、奄美のフォークダンス、島唄ありと、見応えのある4時間でした。)メンバーの皆さんは、ご本人か旦那さんが徳之島のご出身の方々で構成されています。稽古では、メンバーの皆さんは「徳之島時間」と言われていますが、ゆったりとした時間が流れ、時には豪快な笑い声が響きます。稽古の後は、メンバーの方のひとりが経営されているスナックで打ち上げされていたりと、よく皆さんでお酒を楽しまれている模様。

神戸ハッピー会
新長田の地域でも南側、海の近くにある私立の「ちかだ幼稚園」の講堂がお稽古場に。おもに駒ケ林地区の子供達とその親や祖母が集まりながら、週に一度、ヨサコイのお稽古を展開。ヨサコイを上手に踊ることや、間違えずに踊ることよりも、みんなで楽しく踊ることを大切にされています。子供達の成長が著しく、彼らの踊りもどんどん変容していく様を見るのは、非常に楽しい時間です。

北野マサァウィン
丸五市場内にあるタイ・ミャンマー料理屋「シュイガンゴー」を経営されている北野マサァウィンさんはミャンマーから来日。ミャンマーのお正月に踊るダンスを中心に、関西でのイベントに出演されています。リズミカルでポップな歌で踊るダンスは、ほのぼのとした気持ちにさせてくれます。

遊合芸能チングドゥル(趙恵美さん)
音楽家のパクウォンさんと共に活動を拡げ、日々日本全国津々浦々でパフォーマンスを繰り広げています。趙恵美さんは、南北のコリアン・ダンスの古典的要素と現代的要素を取り入れたクラスをStudio dB KOBE等で展開。趙恵美さん達と踊りや芸能の話を始めたら、2、3時間は止まりません。

神戸野田高等学校 創作ダンス部
1989年の創部以来、「感じて踊る心」を大切にテーマの発見からイメージを膨らませ、作品創りを行っています。「全国高校大学ダンス選手権」にて、2012年文部科学大臣賞受賞、2013年NHK賞受賞など、強豪校です。ダンスボックス企画の「照明研究会」に参加するなど、「新長田のダンス事情(仮称)」以外に様々なプログラムで協働しています。

他にもまだご紹介したいグループがありますが、今回はこのあたりで。


そして、5年目にしてようやく、と言ってもいいでしょう。
「新長田で踊る人々」と、これまでダンスボックスとお付き合いのある振付家の<西岡樹里さん>や演出家の<筒井潤さん>、5年間の協働パートナーとして稽古場を一緒に廻って来た現代美術作家の<宮本博史さん>が、一緒になにかを始めてみる試みを始動させました。

新長田で踊る人に会いにいく…「新長田のダンス事情(仮称)」
5年目のイベント(9月21日・22日)の詳細はこちら
http://www.db-dancebox.org/04_sc/1309_dance/

現在は、双方が出会って、それぞれの試みや発想を交換するプロセスの真っ只中。9月22日のイベント時もそのプロセスの渦中のものをお見せすることになるでしょう。
 
9月10日現在、西岡樹里さんは22日にご一緒する藤田幸子先生の故郷である徳之島へ2泊3日の旅にでました。先生の思い出の場所、大切な場所を訪れる予定です。西岡さん、筒井さん、宮本さんの三者のアプローチは三様です。それぞれが全く異なるアプローチで「新長田で踊る人々」と出会っているのですが、その出会い方に新たな方法を開拓しないと、協働するための一つの場をつくれないように感じています。その開拓していくプロセスそのものが思考となり、そのプロセスを経て立ち上がりつつある「新たな出会い方の方法」が表現となる、そのような現場になればと試行錯誤の日々です。 



写真:倉科直弘

■横堀 ふみ(よこぼり・ふみ)■
NPO法人 DANCE BOX プログラム・ディレクター/制作
平成18年度文化庁新進芸術家国内研修制度研修員。平成20年度ACC(Asia Cultural Council)のグラントを得て、約6ヶ月間にわたり、アジア6カ国とNYにおいて舞台芸術の実態調査を実施。おもにアジア間におけるネットワークの構築を目指し、レジデンス・スペースや劇場、フェスティバルのディレクターらとの交流促進を行っている。


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