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小室明子の「北国の劇場から」Vol.7

13.08/01

北海道札幌市にある劇場「コンカリーニョ」の演劇プログラムディレクター、小室明子さんの連載コラム。第7回は「札幌の劇団が東京で公演すること」…先日終了した、札幌の劇団、intro「わたしーTHE CASSETTE TAPE GIRLS DIARYー」東京公演を終えて、札幌の劇団が東京で公演すること


「私はこんなアンケートが読みたかった!」
先日終了した、札幌の劇団、intro「わたしーTHE CASSETTE TAPE GIRLS DIARYー」東京公演、マチネ終わりでアンケートを読んでいた客演の俳優が放った一言です。なるほど確かに、とそこにいた一同が大きく頷きました。


(c)藍田麻央

地域を拠点に活動する劇団が、東京で公演する最も大きな理由が、「批評されたい」ということじゃないかと思います。札幌ではまだまだ“シアターゴア”というようなお客様は多くありません(上演されている数や種類が少ないので当り前ですが)。アンケートでは「面白かったです」「おつかれさまでした」の文字が大半を占めますが、東京・王子小劇場のお客様で、しかも札幌から来たどこの馬の骨ともつかない劇団を観ようという方々はさすがに観劇慣れをしていらっしゃって、様々に感想をくださいました。アンケートの質問で、観劇頻度について聞いたのですが、「月に1回程度、3ヶ月に1回程度、1年に1回程度、初めて、その他」の項目があり、「その他」に○をする人が多く、かつ、週に2〜3回という回答が目立ちました。改めて、毎週すごい数の公演が行われていることを思い知り、その競争の激しさに遠い目をしつつ、数ある中からintroを選んでいただいたことに感謝しました。
他にも、終演後のトークに参加していただいた皆様から、作品についての様々な感想をいただきました。札幌でも、作品についていろいろ言って下さる方はいます。けれど、それはあくまでも作品について、または、これまでのintro作品と比較して、だったりします。現在の日本の演劇の状況も加味した上での感想、意見というのはやっぱり札幌では聞けないものなのです。

コンカリーニョのレジデントカンパニーであるintroが東京公演を行ったのは、今回が2回目です。私がintroに東京公演を勧めたのは2010年のことだったと思います(当時はまだレジデントカンパニーではありませんでしたが、コンカリーニョの企画の演劇祭で旗揚げした劇団でもあり、何かと口を出していました)。その頃の演劇界の流れ、札幌でのintroの作品の評価のされ方から考えて、そろそろ外に出た方がいいだろうし、2年後あたりなら当時行われていたアゴラ劇場のサマーフェスティバル「汎-PAN-」に出れるんじゃないかな、と根拠はないけど確信がありました。幸運にも思い描いた通り、2012年に「汎-PAN-」に参加し、初の東京公演と相成りました。
この初めての東京公演で良かったのは、春の札幌公演で「CoRich舞台芸術まつり!」に応募したことでした。無論、9月の東京公演に向けて、運良く一次を通れば宣伝になる、という気持ちでの応募でしたが、最終10作品に残ることができ、審査員の方々に札幌で作品を観てもらうことができました。おかげさまで、まったく無名な地方の劇団、が、なんか名前聞いたことある札幌の劇団、くらいにまではなれたんじゃないかと思います。「CoRich舞台芸術まつり!」での評判に興味を持って来場されたお客様も少なくありませんでした。批評をされたい、という意味でいえば、「CoRich舞台芸術まつり!」は最終審査に残れば東京に公演に行かなくても批評を得られるチャンスがある、地域の劇団にとっては大変にありがたい場であります。
今回は、昨年「汎-PAN-」からの流れが上手く繋がったように思えて、次回への期待が持てるいい公演になりました。王子小劇場の皆様にも感謝しております。introは来年以降も東京公演を継続していく予定です。このいい流れをきらさずに、この先は“評価の逆輸入”といったところまで持っていきたいのです。これがもう一つの理由。札幌を拠点に活動していても良い作品、高い評価を受けられる作品を創ることが出来る、なんならそこそこの賞だって穫れる、ということを示してくれる劇団がいくつか現れたら、これからの札幌の演劇人たちの力になるのだけど…と夢のようなことを考えています。


王子小劇場前にて。出演者19名、スタッフ6名の総勢25名で
乗り込みました。LCCさまさまです。。


■小室 明子(こむろ・あきこ)■
1974年生まれ。札幌市出身。コンカリーニョ演劇プログラムディレクター。大学在学中に演劇と出会う。大学卒業後、タウン誌の編集者などを経て2001年に上京。東京ではフリーライター・エディターとして生計を立てつつ演劇の世界もうろうろ。2006年、fringe主催の「PmP2006」に参加したのをきっかけに、2007年4月に札幌へ戻り、以来、NPO法人コンカリーニョに勤務。札幌演劇の活性化、演劇人の実力の向上を願い、他地域の劇団などとの交流企画や演劇祭、在札劇団の道外公演のプロデュースなどを行っている。


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