制作ニュース

第3回ゲスト:木元太郎(こまばアゴラ劇場・青年団制作部/アトリエ春風舎支配人)

12.09/01

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自分のキャパシティを把握することが大事

――「制作」という仕事を行なっていく上で、大切にしていること、あるいはこだわっていることは何でしょうか?

僕の中でも日によって答えが変わる質問だとは思うんですけど、今2ヶ月間のフェスティバルを担当していて一番心がけているのは、「自分のキャパシティを把握する」ということですね。自分が抱えられる仕事の量だったり、自分の体力や精神力だったり、「ここまではいける」というのを正確に把握しておかないとどこかでいっぺんに崩れてしまうので。「これ以上は無理だな」と感じたら、誰かにお願いするとか、別のやり方を考えるとか、臨機応変に対応できる状態でありたいと思います。

――これまでに「壁」を感じたことはありますか?

「壁」と言うのとは少し違いますけど、最近は自分の中での意識が劇団より劇場の方にシフトしていて、それはフェスティバルに対するモチベーションからだったりしていたんですけど、そのフェスティバルが来年で休止になることになったので、今、これからの目標をどこに置くべきなのかを悩んでいるところですね。思いとして一つあるのは、劇場や劇団の仕事を通して積んだ実績がこの先の何かに繋がっていくような仕事がしたいなという思いがあって、それは、例えば制作部の野村が実績を積み上げながら外部での仕事の幅を広げているところを身近に見ているからかもしれません。

――何か具体的にやってみたい仕事のイメージはありますか?

フェスティバルをやっていたことも関係しているんですけど、自分の中に地域との繋がりや連携に興味を持っているところがあって、具体的にそこで働きたいという意味ではないんですけど、例えば四国学院大学での動きはとても興味を持っていますね。それこそ、今桜美林大学出身の劇団が小劇場界の中で一定の評価を得ているように、新たに始まった動きとして四国での取り組みが西日本の勢力図を変えていくんじゃないかと期待しています。

――自分の手でそういう新しい動きを作ってみたいということですか?

自分で新たに作ってみたいというよりは、今あるものに自分が関わったり繋がったりすることでもっといろんなことが出来るんじゃないか、とかそういう感じですかね。なので、それこそ東京にいて他の地域のカンパニーを迎えるのと近い感覚で、東京にいることで、各地の公共ホールや民間の劇場・アトリエなどの動きやシーンを広げたりできれば面白いと思っています。

今のうちにどうしても下の世代に青年団を触れさせたい

――ナビゲーターを務める舞台制作塾ではテーマに「新しい地図」という言葉を挙げられましたが、そこにはどんな思いがあるんですか?

僕自身も次の一歩をどうするか考えているタイミングだということもあるんですけど、制作という仕事を続けていくための参考となるような様々な道を舞台制作塾で紹介したいと思っています。僕自身も何もないところを闇雲に歩いていたら多分こうして活動を続けてこれなかったと思うんです。そこにはこれまで「青年団」や「アゴラ劇場」が歩いてきた道というのがあって、そこに参加して、その道を伸ばしていく仕事をこの5年間やってきたからここにいるんだと思うんです。その道の存在を知っているのと知らないのとでは多分できることが大きく変わってくると思うので、それを知った上で、「自分はこれを目指そう」って思える、指針となるような道を紹介できればなあと思っています。

――劇団、劇場、フェスティバル、という3つの仕事に携わってきた木元さんだからこその、視点の広さというか、角度ができる講座になると期待します。最後に、木元さんがこの仕事を続けているための原動力となっているものがあれば教えてください。

何かと何かを繋げたり、何かを広げたりすることで何か新しいことが始まる感覚が、この仕事の面白さなんじゃないかと思います。それから、ここ一年くらいは青年団の制作として青年団の作品を若い人、特に若い演劇人に見せなきゃいけない、という感覚が今とても強くなっています。それは別に青年団を好きになってもらいたいというわけじゃなくて、「あと5年で劇団を縮小させる」と平田は宣言しているので、青年団として活動している今のうちにどうしても下の世代に体感してもらいたいんです。この先5年、10年経った時、青年団を観たことがある人とない人とでは何かどこかで差のようなものが出てくるんじゃないかと思うので。作品もそうですけど、アゴラ劇場も含めた青年団のシステムそのものに触れられるうちに多くの人に触れてもらいたいなと思います。

取材・文/郡山幹生


■木元太郎(きもと・たろう)■
1984年生まれ、福岡県出身。多摩美術大学映像演劇学科を卒業後、こまばアゴラ劇場・青年団の制作部へ。 舞台芸術フェスティバル〈サミット〉の実行委員、サマーフェスティバル〈汎-PAN-〉の立ち上げを担当。またプログラムオフィサーとして、年間のラインナップにも関わっている。2010年12月、青年団が所有する「新しい表現を求めて実験を試みる空間」アトリエ春風舎の支配人に就任。10/11(木)開講の「Next舞台制作塾」第2期でナビゲーターを務める。

「Next舞台制作塾」:http://www.next-nevula.co.jp/school/

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