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【サロンレポート】学生座談会 —学内・学外での活動を考える—(14/04/30開催)

学生座談会(2014年)の様子
はじめまして。Next舞台制作塾オープンサロン「学生座談会 –学内・学外での活動を考える-」のレポートを担当させていただきます、座談会参加者の中村みなみです。どうぞよろしくお願いします!

 

4月30日、舞台制作塾の新年度オープニングプログラムの締めくくりとして、「学生座談会」が開催されました。これは昨年度の制作塾を受講した学生たちから提案を受けたもので、学校を超えてつながること、お互いの悩みをシェアすることを目的とした企画です。

 

今回の座談会には、現役の大学生・大学院生、若手制作者など計12名が集まりました。制作者・団体主宰者、これから制作職に就く方など運営面に携わる方が多く、自己紹介では「下の世代はどんな活動をしているのか」「他大学ではどのように公演を打っているのか」「ネットワーク構築について」…といったことが話したいトピックに挙げられました。

 

《マインドマップづくり》

学生座談会(2014年)の様子学生座談会(2014年)の様子
座談会の前半では、興味・関心事項や問題点を整理するために、3~4人のグループに分かれてマインドマップを作成しました。中心テーマに「わたしたちの活動」を据え、学外→インターン→フェスティバルのスタッフ…というように図を書き出していきます。20分ほど話し合った後、各班が発表を行いました。

 

1班からは、おなじ演劇制作活動でも学内と学外とのあいだには大きな壁がある、という点が指摘されました。そこで浮かび上がったキーワードは「循環」。学内/学外が分断されている状況に対して、それぞれの経験や手法をフィードバックすることで壁をこわす必要性が提示されました。

 

2班の話題は卒業後の活動方法について。理想の現場を探す過程や拠点を運営する際の問題点等が話される中で特にユニークだったのは、現代美術の活動をされている岡田真太郎さんの「いろいろな拠点に布団を送る」! 新しいネットワークを身近なものからつくりだす視点は、ヒントとなるのではないでしょうか。

 

3班からは、現在の学生演劇は大学・サークル単位での特色が薄く、やりたい人がそれぞれで活動しているために作品が乱立してしまっているという俯瞰的な分析が挙げられました。社会との接続の弱さや他のコンテンツと比較しての若者の求心力不足は、学生演劇のみに限らない重要な問題提起のように感じられます。

 

4班では、演劇の扱われ方が異なる大学同士の情報交換が行われたようです。その中で共通したのは演劇と生活のバランスについて。演劇活動と経済的な事情は切っても切り離せないものです。アルバイトをしながら演劇を続けるのか、続けられずにやめてしまうのか…在学中の学生にとっても、卒業した学生にとっても根深い問題となっています。

 

《各大学での演劇のしかた》

学生座談会(2014年)の様子
休憩を挟み、後半はマインドマップづくりから浮かび上がった問題点を踏まえての全体トークです。まずは情報共有として、参加者から各大学での演劇活動を紹介してもらいました。

 

◎桜美林大学 芸術文化学群演劇専修
一つ目は柿喰う客、マームとジプシー、範宙遊泳など近年注目の劇団を多く輩出している桜美林大学。その独特なシステムをお聞きしました。
桜美林大学は演劇専修の中でも演劇とダンスとに分かれているそうです。学内での公演活動には、演出家・振付家がプロデュース、学生がキャスト・スタッフを務める「OPAP(桜美林大学パフォーミングアーツプログラム)」、学生主体の舞台芸術祭である「GALA Obirin」があります。また劇場施設の管理運営を学生が行う「劇場コミッティ」、芸術地域通貨「ARTS」(観劇や設備貸出に利用可能)なども特殊で、学生の自律に比重を置いた体制と感じられました。
さらに学外とつながる方法としては、昨年創設された「東京演劇大学連盟」(桜美林大学、玉川大学、多摩美術大学、桐朋学園芸術短期大学、日本大学の各演劇系学科)との共同制作や、児童館や福祉施設でのアウトリーチ活動があります。
平田オリザ氏が退任して以降はダンス人口が増えつつあるようですが、基本的には大学に「育ててもらう」のではなく、与えられたものの中から自分で選択していく力が必要だと、桜美林大学の卒業生・在学生は言っていました。

 

◎日本大学 藝術学部演劇学科
続いては「日藝」の呼び名でおなじみの日本大学藝術学部。長い歴史を持つ日藝ですが、先ほどの桜美林大学とはまったく逆だと言います。
日藝演劇学科は一年生から劇作・演出・演技・装置・照明・日舞・洋舞・企画制作、とコースが分かれているのが特徴です。学科全体での合宿などもあり、縦のつながりが強い学科と言えるでしょう。卒業後に演劇界でOB・OGと出会うことも多いようです。
専門性を身につける体制が大学側から用意されている一方で、伝統が強いために現代演劇シーンとの接続が難しいとの声が日藝の卒業生から挙がりました。近年は「応用演劇」の一環として医学部との共同事業(演劇学科生が模擬患者を演じる)が始まるといった変化も起きていますが、学生団体が学内の劇場設備を借りられないなど自主的な活動をしづらいこともあるそうです。

 

大学の方針が大劇場や制作会社などへの就職志向のため「入ればなんとかなる」感はあるけれど、新しい活動の創出に工夫のいる日藝と、自ら選択するところからスタートして活動をつくっていく必要のある桜美林との環境の違いが話題になりました。

 

◎明治大学 文学部文学科演劇学専攻
3つ目は明治大学の演劇学専攻。上記の日藝、演劇サークルが盛んな早稲田と並んで演劇系の古豪三強では、と明大出身の丸山立さんは言います。こちらは文学部に属しているため、座学中心なのだそう。
2004年から毎年行われている「明治大学シェイクスピアプロジェクト」は翻訳から上演・企画運営に至るまでを専攻の学生が担っており、動員3000人を超えるほどの目玉イベントです。
ハイレグジーザス、エムキチビートなどサークル出身劇団も多い明治大学ですが、現在は専攻の学生によって結成されたユニットも存在し、専攻/サークル間の分化傾向がみられるそうです。
明大在学中に「実験劇場」を立ち上げた唐十郎氏が2012年度から客員教授に就任したことで、実技面でも新しい動きが生まれてくるかもしれません。

 

◎立教大学 現代心理学部映像身体学科
最後に立教大学映像身体学科、通称「映身」です。前3校と異なり演劇を専門的に学ぶのではなく、人文科学の一環として映像や演劇・ダンスを学ぶ少し変わった学科です。教員・学生共にどちらかと言えば映像方面が強く、学外で俳優として活動する学生もいますが、学内で演劇活動を行う学生は少ないようです。
立教大学には大規模な演劇研究会や劇団テアトルジュンヌ、劇団しどろもどろといった演劇サークルもありますが、池袋キャンパスのサークルが多いため、新座キャンパスに属している映像身体学科とは距離がみられます。
劇作家・マレビトの会代表の松田正隆氏が教授に就任して以降は発表公演の機会も増えており、新たにPortBの高山明氏が赴任したことからも、今後は学科の内容に根付いた演劇の出現が期待されます。

 

《ネットワークとしての学生芸術祭》

各大学の情報共有が一段落したところで、池袋の「シアターグリーン学生芸術祭(SAF)」を運営している今村圭祐さんに学生演劇の印象を伺いました。
SAFは「大学外へ若い才能を届けたい」という想いから、一劇団の力ではなかなかできない宣伝や交流イベントを盛んに行っています。昨年からは「SAF+(関東学生演劇人連絡機構)」が発足され、学生間のネットワークとしてますます重要な場となるように思われます。
学生劇団は卒業・代替わりがあるため積み重ねが難しい点や、学生たちの需要とマッチングした形で如何につながりをつくっていくか、などが運営面での課題として挙がりました。

 

《個人から学外へ》

最後に個人の事例として、在学時から制作者として活動されている横井貴子さんにこれまでの活動をお聞きしました。
鑑賞事業に留まらない芸術普及活動に関心をもって日芸の企画制作コースに進学した横井さんは、大学2年以降さまざまな公演・舞台芸術祭で制作の仕事を請け、自ら積極的にネットワークの渦に飛び込んできたそうです。座談会では特に、「Next Producers Camp(NPC)」での体験をお話し頂きました。
NPCは現在プロの制作として活躍されているナビゲーター陣と共に勉強会・グループワークを通してこれからの舞台芸術を考える、「本気で」 続けていきたい若手制作者のための合宿です。それぞれの現場で経験を積んできた先達および同世代の制作者と出会い、夢の実現のために自分がどうすればいいのかを本気で考える時間は、非常に刺激的だったそうです。
小さな世界のみに留まっているとどうしても行き詰まってしまいがち。NPC等の場で若いうちからプロの仕事に触れる経験は、まさに今後の人生を変えるような出来事となるのかもしれません。

 

《学生演劇の今後に向けて》

今回、実際にその大学に通っていた方々とお話することで、ぼんやりとしていた各大学のイメージを(自身の母校も含めて)より鮮明に捉えることができました。
さまざまなテーマが浮上した座談会でしたが、特に通底していた問題意識は、卒業以降も仕事として演劇を続けていく人口の少なさだったように思います。参加者間の話では、当初から学生のあいだだけと決めているケースや、演劇専門の学科では単位修得に追われて演劇を嫌いになってしまうケースがある。といった声がたびたび挙がっていました。
もちろん進路選択は個人の自由で、外野が口出しすることではありませんが、もしも「卒業後も続けていきたいけど辞める」という学生が多数いるならば非常にもったいないことです。
学校の壁を超え同世代の演劇人や上の世代に出会う場は、自分のやりたいことや、夢を実現する道筋を見つけるための絶好の機会かもしれません。今回の座談会やSAF、NPCなどの場がより活性化することで、多くの学生が社会に接続した仕事として演劇を続けられるような環境をつくっていければ、と強く感じました。

 

以上、立教映身卒の中村がお送りしました!
最後までお読み頂きありがとうございました。次回の制作塾イベントもどうぞご期待ください!

2014年06月07日 講義・セミナーレポート