制作ニュース

矢作勝義の「劇場オープンまでの長い道のり from 豊橋」Vol.9

13.01/10

今回は画像が盛りだくさん!普段なかなか見られないオープン前の状態を分かりやすくご紹介。劇場の様々な工夫も知ることが出来ます。 …明けましておめでとうございます。
昨年の5月から連載を始めましたこのコラムも、なんとか新年を迎えることができました。一緒に連載を始めたお二人が、年末で連載終了ということでちょっと淋しさを感じていましたが、 “劇場オープンまでの長い道のり”と私は銘打っていますので、劇場オープンまで連載を続けていいんですよね、編集長の郡山さん?
無事確認がとれましたので、巳年生まれの年男でもある矢作から新年第一弾をお届けしたいと思います。

建設現場もさすがに年末年始は休みで工事がストップするため、休み前には急ピッチで作業が行われていました。楽屋などの小部屋は、内装が仕上がると鍵が掛けられ、汚れないように立ち入り禁止になっていたり、数日の間で刻一刻と状況が変わっていきました。
劇場の正面であるメインエントランス側の写真と、裏側の搬入口・主催者駐車場側の写真です。

建物の外観としてはここまで出来上がりました。建物上部のグラデーションがかかっているというか縞模様になっている部分は、関係者にはオーロラと呼ばれていて、微妙な湾曲の感じを強調させるとともに、太陽光線の当り方で色や表情が変化するようにグラデーションがかかった塗装になっています。

次の写真は創造活動室Aという、稽古場であり、公演会場としても使用できるスペースです。壁面は、時間が経つと色が濃くなるような塗装になっていますが、木の質感を生かしたものになっています。ギャラリーより上の部分は濃いグレー(黒?)のグラスウール。床面は、木目のフローリング。天井には、照明機材などの仕込用にグリッドが設置されています。右写真の中央に見える明るい半円形の部分はガラス窓で、すぐ脇の道路が見えます。もちろん、外から中も見えます。
次の写真は、創造活動室Aの逆側の壁面を建物内部のアートガレリアと呼ばれる通路から見たものです。

写真では分かりにくいかもしれませんが、写真左側のレンガ壁にある縦長のちょっと色が変わっている部分に窓があり、ここから創造活動室Aの中が見えるようになっています。
そして次の写真は、アートスペース(小劇場)の内部の下手側壁面です。

ここにも同じように窓があり、開けていれば外から中が見えるようになっています。また、この壁面は建物の外側壁面と同じようにレンガの積上げ構造になっています。
このように主ホール以外の各室に外部から部屋の中を見ることができるような窓が設けられています。もちろん、必要に応じて窓を閉じることができるような、扉やカーテンなどが設けられています。しかし、この窓がある構造を上手く活用して、中で行われているパフォーマンスを窓からお客さんが覗くように観て貰える企画ができないかと考えています。

さて、次は劇場としては一番メインの主ホールの状況もお知らせします。劇場の建設段階の一瞬しか確認できない瞬間の写真です。座席が設置される直前の客席です。この状態での音響測定のために、急ピッチで床面が仕上げられたそうです。まだ、座席や幕類などの吸音特性のあるものが設置されていない状態で音響特性を測定し、次に座席を設置し、幕類などを吊った状態で測定する予定になっています。

1階客席部分の写真です。奥側の階段状になっているところに客席が設置されることになります。中央の奥に光っているのが音響調整室になります。
階段の手前で少し広くなっているところが中通路で、その先端というか写真では手前の部分がG列、階段状の一段上がったところがH列で、音響調整室の前が最後列のR列になります。なお、客席最前列はA列です。
舞台面(つら)から音響調整室までが約20メートルになります。ちなみに、写真の音響調整室の右側に見える明るい場所は多目的室(親子室)です。

2階客席まで見るとこうなります。

2階席の上部の明るいところはピンスポットルームで、その上に見えるのがシーリング室です。既に照明機材は吊られていますが、埃除けのために袋が掛けられています。

11月のVol.7の近接写真で紹介した主ホールの壁面ですが、このようになりました。

この日は、客席照明が全体を明るく照らすことを目的にしたセッティングになっていたので、壁面が非常に明るく、そして赤く見えていますが、最終的には、客席照明のあたりを調整し、壁面は床面に設置された専用の照明で照らされるようになり、このような派手な印象から落ち着いた印象までと、見え方を調整できるようになる予定です。
この壁面は、豊橋名物の手筒花火の火花とか、流れ星のようなイメージでもあり、歌舞伎小屋や寄席などの古い芝居小屋のような猥雑な感じなどをイメージさせるような物で、劇場建築としても古典的なものと現代的なものを融合させるような狙いになっています。

そして、年末年始に客席が設置されました。客席も埃除けのため、袋が掛けられています。一部設置されていない場所がありますが、仮設本花道のため設置を待っており、その椅子はまだ段ボールに入っている状態でした。(中央に積み上げられたものがそれです)

建物自体の工事は、1月末の検査をもってほぼ終了の予定で、2月に修正作業と外構工事となる予定です。私が通常勤務している開設準備事務所も2月1日には劇場の建物に移転予定です。そして、そこから先日面接した新規採用のスタッフがようやく合流になります。
新年の1月4日(金)の中日新聞愛知県版の夕刊にオープニングラインナップと劇場を紹介する広告を掲出しました。ここで、7月までの公演のチケット発売日などの告知も開始し、チラシ作製なども順次スタートです。チケット発売の準備や、リリースの作製、宣伝計画などと、建物の事だけでなく、初年度事業の準備もより具体的に進めなければならない時期になってきました。


■矢作 勝義(やはぎ・まさよし)■
1965年生まれ。東京都出身。公益財団法人豊橋文化振興財団『穂の国とよはし芸術劇場PLAT』事業制作チーフ。東京都立大学(現・首都大学東京)演劇部「劇団時計」から演劇に本格的に関わる。卒業後は、レコーディング・エンジニアを目指しレコーディングスタジオで働き始めるが、演劇部時代の仲間と劇団を旗揚げするため退職。劇団では主宰、演出、音響、制作、俳優を担当。ある忘年会で、当時世田谷パブリックシアター制作課長だった高萩宏氏(現東京芸術劇場副館長)に声を掛けられ、開館2年目にあたる1998年4月から広報担当として勤務。その後、貸館・提携公演などのカンパニー受入れや劇場・施設スケジュール管理を担当するとともに、いくつかの主催事業の制作を担当した。主な担当事業は、『シアタートラム・ネクストジェネレーション』、『リア王の悲劇』、『日本語を読む』、『往転-オウテン』など。また、技術部技術運営課に在籍したり、教育開発課の課長補佐を務めるなど、世田谷時代は劇場の何でも屋的な存在としても知られた。2012年3月末をもって世田谷を退職し、2013年5月オープン予定の“穂の国とよはし芸術劇場PLAT”の開館準備事務所にて事業制作チーフとして勤務中。


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