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木ノ下歌舞伎 京都×横浜プロジェクト2012『義経千本桜』 監修・補綴:木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰) 制作:本郷麻衣(木ノ下歌舞伎)

12.12/22

京都を拠点とする「木ノ下歌舞伎」は、公演ごとに異なる演出家を招き入れ、変幻自在に歌舞伎演目の現代劇化を試みる注目のプロデュースユニット。彼らが3年にわたり展開してきた「京都×横浜プロジェクト」が、7月に行われた『義経千本桜』でついに幕を閉じた。彼らにとって正にエポックメイキングな存在となったこのプロジェクトを、主宰・木ノ下裕一と制作・本郷麻衣に総括してもらった。

「京都」と「横浜」では、伝統の扱い方が違う

――今回の『義経千本桜』は、「京都×横浜プロジェクト」の第三弾ということでしたが、そもそもこのプロジェクトはどのような経緯で立ち上がったものなのでしょうか?
本郷:私が木ノ下歌舞伎に関わり始めた時にはすでに「京都×横浜プロジェクト」の1年目の企画が決まっていたので、そのあたりのことは企画者である木ノ下からお話します。


木ノ下歌舞伎 京都×横浜プロジェクト2010『勧進帳』 
撮影:東直子


木ノ下歌舞伎 京都×横浜プロジェクト2011『夏祭浪花鑑』
撮影:清水俊洋 Toshihiro Shimizu


木ノ下歌舞伎 京都×横浜プロジェクト2012『義経千本桜』
撮影:清水俊洋 Toshihiro Shimizu

木ノ下:2006年に旗揚げして以来、「木ノ下歌舞伎」は京都を拠点としながらも、年に一回くらいは関東公演も行なっていました。そもそも、演出家を固定しないことで、いろんな側面から古典のアップデートを考えていこうというのがこのカンパニーのスタイルだったので、京都だけに留まっていては広がりがないなという感じがしていたんです。そんな時に「滞在製作ができたらいいね」という話が持ち上がり、横浜と京都を結んで、交換留学制、つまり演出家を京都から派遣するパターンと、関東の演出家を京都に招くパターンを交互にやって、繋がりを広げながら作品をつくろうと考えたのが始まりです。1年目は、杉原邦生*1と僕が横浜に行って『勧進帳』*2を、2年目は白神ももこさん(モモンガ・コンプレックス)を京都に招いて『夏祭浪花鑑』*3を製作しました。それで「3年目はどうしようか?」という話になった時、順当なら僕らがもう一回横浜に行けばいいんですけど、もうちょっと集大成となるような何かをしたいなと思い、元々いろんな演出家と出会うことで、新しい歌舞伎の姿というか、現代性を出していきたいという団体自身の大きな目標があるので、ひとりではなく複数の演出家で共作することで、「一つの公演の中で現代と古典との繋げ方をいろいろ見せられる」といいかもということになったんです。元々3人の作家によって書かれた『義経千本桜』*4は、そういう意味で恰好の演目でした。オムニバスなんだけれど、それぞれが繋がっている物語。これまでこのプロジェクトに関わった、白神さんと邦生さん、それに東京デスロックの多田(淳之介)さんを加えた3人体勢で、プロジェクトの集大成として『義経~』の通し上演をしようっていうのが今回の企画趣旨です。以前から、多田さんと一緒にやりたいと思っていました。彼の作品は振り幅が広い。リアリズムに徹した芝居もあれば、『再生』*5のようなコンテンポラリーな作品もつくる。そうかと思えば、三好十郎やシェイクスピアというような古典にも手も伸ばしていて、とにかく演出の引き出しが豊富。「その引き出しと歌舞伎が出会うことで何か新しいことができるんじゃないか」と思っていたんですよね。
――“交換留学”の相手先に「東京」ではなく「横浜」を選んだのはなぜですか?
木ノ下:邦生さんがね、言ったんですよ。「どこかで滞在製作したいね、どこがいいかなあ」って話したら、「横浜は?」って。彼は本当に先見の明があるんですよね。
本郷:そういう時の邦生さんの読みは本当に見事ですよね。
木ノ下:そうなの。邦生さんに言わせると、「東京は公演数が多すぎて疲弊している」と。そんな中で「ちょっと離れた横浜には新しい流れが生まれつつある」って言うんですね。「急な坂スタジオ*6を中心に創作の基盤が出来てきたし、TPAM*7も東京から横浜に会場を移すらしい。だから間もなく横浜の時代が来るだろう」って予言者・邦生が主張したんです。
本郷:(笑)
――当時、杉原さんは「こまばアゴラ劇場」の演劇フェスティバル「サミット」*8のフェスティバルディレクターでしたよね。その際にさまざまな情報を収集されていたんでしょうね。


杉原邦生

木ノ下:そうかもしれないですね。まあ、そういう訳で「横浜だな」って話になったんですが、だけどもうひとつ別次元の話として、「京都」という土地と対比させた時の「横浜」の特性にも惹かれていたんです。伝統を発祥していく「京都」に対して、伝統をリミックスしていく「横浜」という土地に。横浜では歌舞伎をパロディ化した小芝居というジャンルが歴史的に盛んだったり、輸入されてくる食品や道具をうまくリミックスするとか、互いに伝統を重んじるんだけど、京都と横浜とではその「扱い方」が歴史的に全然違っていて、そこが面白いなと感じていました。

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