ぽんプラザホール近くの川沿いに並ぶ屋台
今回の「さくてきネクステージ from 福岡」では、東京や地域の優れた若手劇団が他地域公演をする意義を、受け入れる地域の立場で考えてみたいと思います。相手側のメリットを知ることは、こちらがわの希望を伝えるにあたり無駄になることはないでしょう。

まず、どの地域でもそうだと思いますが、各地域は東京をはじめとする他地域から優れた若手劇団が公演してくれることを望んでいます。一例ですが、たとえば福岡では、福岡市文化芸術振興財団（FFAC）が、前年度から他地域の劇団が福岡公演をするための助成制度を用意しています。これなど、その証拠の一つとしてあげられるでしょう。

他地域の優れた若手劇団の公演機会は、優れた作品の鑑賞機会を地域の人々に提供することに加え、同世代の地域の演劇人にとってこのうえない良質の刺激となることが期待できます。同世代の劇団がここまでやっているということで、自分たちの活動を振り返ることができます。

これは、他地域の優れた若手劇団の公演とは違い、評価の定まった実績のある劇団の公演には期待しにくいことです。

もちろんこれは、その地域に今後の活躍を期待できる劇団がある場合だけです。そのためにはある程度の都市人口は必要となります。

先日、私が東京のいろいろな方に話を聞いたところから、東京圏で新たに劇団等として認識される団体は、年間に30～50団体と類推しています（福岡都市圏では年1,2団体）。カンパニーが生き残っていくことを考えると、たいへんな競争環境のなかにあるといえるでしょう。

地域における演劇活動は、よりよい作品作りに重点を置いた活動もあれば、サークルに近い活動もあり、それらが地続きに存在します。活動する側もそこへの自覚を明確にする機会がありません。

適切な例えかどうかはわかりませんが、日々様々な情報が入り毎週模試を受けているような進学校から進学を考えるのと、就職コースや進学コースが共存する普通高校から進学を考えるような違いがあるように思います。

もちろん地域においても優れた作品はうまれています。しかし、上記のような厳しい競争環境にはないため、ややのんびりしたような空気があることも事実です。それ自体は決してわるいことではありません。そしてそれを改める必要があるかどうかも、それぞれが考えればいいことです。ですが、そういう競争環境があることや、その環境に身を置くことからうまれてくるある種の緊張感の存在を知ることは、意欲・才能のあるカンパニーにとって、自分たちの進むべき方向を考える重要なきっかけとなります。

また十分な広報費用のない若手の劇団が、他地域公演するにあたっては、その地域で協力を得られる劇団がいることは、なによりも心強いことです。可能ならば、公演先の地域で協力できる団体を見つけておくことで、双方にとってメリットがあるように思います。

私どもの管理運営するぽんプラザホールでは、7月から他地域のカンパニーの受け入れ公演が続きます。次回の「さくてきネクステージ from 福岡」では、これらの公演を応援するFPAPリンクプロジェクト2012について触れることで、地域での公演受け入れ態勢について考えたいと思います。

FPAPリンクプロジェクト2012
http://www.fpap.jp/flp/2012/

■高崎 大志（たかさき・たいし）■

地域演劇プロデューサー　NPO法人FPAP事務局長　九州地域演劇協議会理事・事務局長
高校の時より演劇をはじめ大学演劇部をへて在学中に劇団旗あげ。役者・制作・照明・舞台監督を担当。

2003年NPO法人FPAP設立、事務局長。演劇公演企画やセミナー・ワークショップ等の地域演劇振興の自主事業の企画、地域演劇の劇評や、福岡・九州の演劇状況、国内の芸術環境格差に関するレポートなども手がける。
2008-10年（財）広島市文化財団　南区民文化センター主催「若手演劇制作者育成講座」講師。09年金沢市民芸術村「地域演劇制作者のための実践的制作講座」講師。2010年福岡・九州地域演劇祭の総合プロデューサー。

NPO法人FPAP:http://www.fpap.jp/

個人ブログ:http://sakuteki.exblog.jp/

twitter:@tahahahi